『悪名』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『悪名』

 
 
1961年日本映画 94分
監督:田中徳三
企画:鈴木炤成  脚本:今東光(「週刊朝日」連載)  脚本:依田義賢  
撮影:宮川一夫  録音:大谷巖  照明:岡本健一  美術:内藤昭  音楽:鏑木創
編集:菅沼完二  装置:梶谷和男  擬斗:宮内昌平  音響効果:倉島暢
衣裳考証:上野芳生  助監督:土井茂  製作主任:小沢宏  現像:東洋現像所
 
出演:勝新太郎(村上朝吉)、田宮二郎(モートルの貞)、中村玉緒(お絹)、水谷良重[水谷八重子〕(松島遊郭の女郎・琴糸)、中田康子(お千代)、千葉敏郎(シルクハットの子分)、永田靖(シルクハットの親分)、山茶花究(吉岡組の親分・吉岡)、阿井美千子(旅館の仲居・おしげ)、倉田マユミ(吉岡の妻・お辰)、浪花千栄子(麻生組の親分・麻生イト)、須賀不二男(松島の子分)、嵐三右ヱ門[嵐三右衛門](漁師(おしげのおじ))、荒木忍(朝吉の父・善兵衛)、藤原礼子(お絹の同僚・お照)、若杉曜子(松島遊郭の女郎・白糸)、金剛麗子(大和楼のやり手婆)、橘公子(筆職人の妻)、高橋とよ(漁師の老妻)、寺島貢(旅商人)、伊達三郎(壺振り・中盆)、天野一郎(大和楼の主人)、石原須磨男(番頭)、西川ヒノデ(おやじ)、浅尾奥山(筆職人の老人)、浜田雄史(土生の男)、丸凡太(朝吉の友人・辰吉)、春日清(遊び人)、小南明(モートルの貞の弟分・茂公)、福井隆次(他の男)、沖時男(モートルの貞の弟分・忠公)、堀北幸夫(胴元)、西岡弘善(お千代の兄)、種井信子(松島遊郭の女郎)、大谷鷹子(妓甲)、小林加奈枝(お絹の母)、有村淳[クレジットなし](シルクハットの子分)
 
STORY
河内の百姓の伜朝吉は無類の暴れ者で“肝っ玉に毛の生えた奴”と恐れられていたが、盆踊の晩、隣村の人妻お千代と知りあって有馬温泉へ駆落した。しかし働きに出るお千代を、ゴロゴロ待っている朝吉は次第に退屈し、彼女が酔客と戯れているのを見たのをシオに大阪に帰った。彼はそこで幼馴染の青年達にあい、そのまま松島遊廓にくりこんだ。琴糸という源氏名の女は朝吉にぞっこん惚れ込んだ。その晩連れの青年が酔った勢いで土地の暴れん坊、モートルの貞と悶着を起し、彼らと貞は翌朝対決する羽目になった。しかし機敏な朝吉の働きで貞は散々に打ちのめされた。この時現れた貞の親分吉岡の客分として一家に身を預けた朝吉は、喧嘩やバクチ場で無類の強さを示し、貞も次第に彼にひかれた。そんな時、朝吉と馴染を重ねていた琴糸が逃げて来た。松島一家を恐れて匿うことを渋った吉岡の薄情さを怒った貞は、杯を叩き返し朝吉を親分と立て、一家を去った。琴糸は吉岡の隣のお絹の家に匿われていたが、松島一家に捕えられて因島へ売られてしまった。朝吉と貞は対策を練るが、その夜かねてから朝吉を好いていたお絹は“妻にする”という証文をかかせて身を任せた。二、三日お絹と甘い生活を送っていた朝吉は、貞の仕入れたピストルと軍資金を得て因島にのりこんだ。そして、わざと別の宿をとった貞は、毎晩琴糸のいる大和楼に、素姓を隠した大尽遊びを続けて手筈をつけ、琴糸をうまく朝吉に渡した。船で沖へ出た朝吉は潮に流されてまた港へ戻されてしまった。万事休した彼は度胸をきめて琴糸と貞と三人、旅館の大広間に立籠った。その時、この島の王様シルクハットの親分が、子分大勢をひきつれて琴糸を渡せと迫って来た。さすがの朝吉も顔面蒼白となり、ピストルで親分の心臓を狙った。そこへこの旅館の主で、子分二千人を持つ島の女王麻生イトがでてきた。自分の持ち家に筋を通さずのりこんできたシルクハットの無礼をなじり、仲裁をかって出た。仲裁の儀も滞りなく成立し、自由になった琴糸を中に、朝吉と貞はイト等に見送られて港を離れた。【「KINENOTE」より】

直木賞作家・今東光さんの同名小説を原作にしたシリーズ第1作。

最近、『兵隊やくざ』シリーズも観ているけど、製作されたのはこちらが先。同じく男性2人のコンビものではあるが、本シリーズでは勝新の方が兄貴分。
勝新太郎さん演じる朝吉は、『兵隊やくざ』シリーズの貴三郎に比べると理知的で(なんせ字も読める。笑)男としての色気もある。ホント、この頃の勝新は男前だよなぁ。
本作の時点では田宮二郎さんとのコンビネーションのよさはあまり感じられなかった(田村高廣さんと比べてしまうせいもあるだろうけど)。

本作公開の翌年に結婚する中村玉緒さんは劇中でも勝新の妻に。琴糸と3人でのシーンでは若干勝ち誇った表情をしているような。笑
ちなみに貞と恋仲となるお照役の藤原礼子さんは実生活では勝新の兄・若山富三郎さんとご結婚(後に離婚)。つまり義理の姉妹で共演していたわけですな。

現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』のヒロインのモデルである浪花千栄子さんは、本作では女親分を貫禄たっぷりに演じていた。