『私をくいとめて』 | 新・法水堂

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年間300本以上の演劇作品を観る観劇人です。ネタバレご容赦。

『私をくいとめて』

 

 

2020年日本映画 133分

脚本・監督:大久明子

原作:綿矢りさ『私をくいとめて』(朝日文庫)

撮影:中村夏葉  照明:常谷良男  美術・装飾:作原文子  録音:小宮元
編集:米田博之  音響効果:岡部泰輝  CG/VFX:高橋良明
衣裳:宮本茉莉  ヘアメイク:清水美穂  助監督:成瀬朋一
制作担当:原田博志  宣伝プロデューサー:滝口彩香

 

出演:のん[能年玲奈](黒田みつ子)、林遣都(多田)、中村倫也(Aの声)、橋本愛(みつ子の親友・皐月)、臼田あさ美(みつ子の先輩ノゾミ)、若林拓也(カーター・片桐直貴)、前野朋哉(妄想のA)、山田真歩(カフェの客ミキ)、片桐はいり(みつ子の上司・澤田)、後藤ユウミ(ミキの友人・ワンピースの女)、岡野陽一(コロッケ屋)、吉住(本人)、海斗、山下徳久、川崎珠莉[川﨑珠莉](みつ子の後輩・中島)、征矢学、Alberto Pizzo[アルベルト・ピッツォ](皐月の夫マルコ)、小林公子、川上凛子(姉)、有香(妹)、夏目大一朗、タッカーノ(本人)、へんてこぼういず(本人)、凛凛パーカー(本人)、ハンサム金魚(本人)、トゥルットゥー(本人)、かわえなつき(本人)、ふぁのシャープ(本人)、羽田慎之介、熊手萌(洋服屋店員)、竹下亘、小林辰巳、佐藤大介(芸人に絡む若者)、福井成明、鈴木恵理、田中隆志(CA)、Edita P、Plyestova Natalya、Riccardo Balzarini、Marta Moretto、Manu、Claudio Mstroiannni、ILD、ちびの助、松岡達矢、川名佐知子、川名ヒロ子、山口充子、川名芳貴、野中清次、宮本琥太郎、下地一永、下地夏海、亀谷知菜乃(美容師)、古澤恵子、佐藤香央里、服部もも(美容師)、奥村太一、小山由江、若松豪人、藤崎英一郎、大川雅子、山﨑奈々子、大口善介、ノッポン、仲條リチャード聖也[電撃ネットワーク]、テーブルマーク社員の皆様

 

STORY

30歳を越え、“おひとりさま”がすっかり板についた黒田みつ子。彼女が一人でも楽しい生活が送れているのには、訳があった。脳内に相談役“A”がいるのだ。人間関係や身の振り方に迷ったときは、もう一人の自分“A”がいつも正しい答えをくれる。“A”と一緒の平和なおひとりさまライフ。それがこのまま続くと思っていたある日、みつ子は年下の営業マン、多田くんに恋してしまう。1人の生活に慣れきってしまったみつ子は、20代の頃のように勇敢になれない自分に戸惑いながらも、きっと多田くんと自分は両思いだと信じ、一歩前へ踏み出そうとするが……。【「KINENOTE」より】


『勝手にふるえてろ』に続いて大久明子監督が綿矢りささんの同名小説を映画化。

第33回東京国際映画祭観客賞受賞作。

 

これはもうのんさんに尽きる。

のんさんが31歳で林遣都さんより2歳年上の役というのは若干無理があるが(あと、派手な下着を愛用しているというのもイメージに合わない)、それでもなお本作はのんさん主演で映画化されてよかったと思える作品となっていた。

のんさん演じるみつ子は週末はかっぱ橋に天ぷらの食品サンプルを作りに行ったり、公園で親子連れを尻目にテーブルを占拠したり、“おひとりさま”生活を満喫。何をするにしても脳内の相談役“A”と話をしながらなので、端から見ればちょっとヤバい人。笑

そのため、のんさんは一人芝居が多くなるが、これがなかなかいい感じ。

 

中盤、みつ子は年末年始の休暇を親友・皐月が暮らすローマで過ごすべく苦手な飛行機に乗る。そこでの何でもない機内アナウンスを聞くと、旅行好きな私としてはこうやって再び気兼ねなく海外に行けるようになるのはいつのことやら……とちょうど劇中と同じ時期なだけに勝手にしんみりしてしまった。

それはともかく、のんさん、いや能年玲奈さんと皐月役の橋本愛さんの共演はやはり胸が熱くなる。しかも、皐月が結婚してローマに移り住んだのに対し、仲間だと思っていたみつ子は大学時代から住んでいる街を出られないまま。つまり、『あまちゃん』におけるアキとユイの関係の裏返し。原作を読むとそこまで親友感はなく、これはやはり意図的な脚色、キャスティングだろうな。

 

「女芸人No.1決定戦 THE W 2020」優勝者の吉住さんは本人役で出演。

営業先で酔っ払った若者たちに絡まれ、みつ子が「いい加減にしろ!」と止める……妄想をするシーンも実にいい。

全篇にわたって使われる大瀧詠一さんの「君は天然色」もよかったけど、この曲も女芸人のくだりも原作をうまく膨らませている(女芸人は原作では女子中学生)。やりよるなぁ、大久明子監督。これで上映時間が120分ぐらいだったら言うことなしだったんだけど(ちょっと終盤ダレた)。