文学座公演
『五十四の瞳』
2020年11月6日(金)~15日(日)
紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
作:鄭義信 演出:松本祐子
美術:乘峯雅寛 照明:賀澤礼子
音楽:芳垣安洋、高良久美子
音響:丸田裕也 衣裳:宮本宣子
舞台監督:岡野浩之 演出補:的早孝起
アクション:渥美博
韓国語指導:李知映 方言指導:林田一高
制作:友谷達之、最首志麻子、白田聡
宣伝美術:伊波二郎(イラスト)、小田善久(デザイン)
出演:
松岡依都美(教師・康春花(カン・チュンファ))
神野崇(教師・柳仁哲(ユ・インチョル))
川合耀祐(洪昌洙(ホン・チャンス))
たかお鷹(昌洙の父・元洙(グァンス))
越塚学(吉田良平)
山本道子(良平の母・ミツコ)
杉宮匡紀(呉萬石(オー・マンソク))
頼経明子(金君子(キム・クムジャ))
STORY
舞台は戦後間もないころの瀬戸内海に浮かぶ小さな島・西島。採石業が唯一の産業であるこの島には学校がひとつしかなく、それは朝鮮人学校であった。柳仁哲(ユ・インチョル)と新しく赴任した何やら訳ありな女性教師、康春花(カン・チュンファ)の下、日本人も朝鮮人も分け隔てなく学んでいた。しかしある日、占領軍(GHQ)が全国の朝鮮人学校閉鎖を宣言する。これに対し大阪や神戸で大規模な抗議デモが巻き起こった。このままでは俺たちの学校もなくなってしまう! 少年たちは神戸の抗議デモに参加するため、親や先生に内緒で島を飛び出していくのだった…。【公式サイトより】
11月12日の公演をアーカイブ配信にて鑑賞。
舞台は西島朝鮮初級学校の職員室。
下手側に渡り廊下があり、教室へと続いている。板壁には年号と生徒たちが描いた絵が飾られ、時の移り変わりを表現(1948年~1968年)。
学校のある西島は、瀬戸内海に浮かぶ家島群島の一つで採石業が盛ん(というより他にない)。日本で唯一、朝鮮人と日本人が机を並べて勉強していたという西島朝鮮初級学校は、実在していた家島朝鮮初級学校をモデルとしているそうだが、このような学校があったとは初めて知った。
登場人物は教師2人に卒業生4人、そのうち2人の親の計8人。
鄭義信さんはその8人を通して、朝鮮戦争や北朝鮮による帰国事業といった歴史的背景を踏まえつつ、閉鎖を命じられた朝鮮学校、過酷な労働環境の下、歯をくいしばって働いた在日朝鮮・韓国人の姿を温かい眼差しで描き出す。
死んでなお登場人物が語り手を務めるというのも鄭さんの得意技やね。笑
タイトルはもちろん『二十四の瞳』のパロディだが、ここには昨今、無償化等の問題でたびたび話題となる朝鮮学校の生徒たちが、何一つ不自由なく学べるようにという願いをも感じることができた。
キャストは全員よかったが、中でも松岡依都美さん(最後の「アンニョンハセヨー!」が素晴らしい)と山本道子さんが印象に残った。
上演時間2時間45分(一幕1時間12分、休憩16分、二幕1時間17分)。