『さびしんぼう』 | 新・法水堂

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年間300本以上の演劇作品を観る観劇人です。ネタバレご容赦。

『さびしんぼう』

 

 

1985年日本映画 1時間52分

脚本・監督・編集:大林宣彦

原作:山中恒『なんだかへんて子』偕成社刊より  脚本:剣持亘、内藤忠司
製作:小倉斉、出口孝臣  製作協力:根本敏雄、山本久

プロデューサー:森岡道夫、久里耕介、大林恭子
撮影監督:阪本善尚(J.S.C.)  美術デザイン:薩谷和夫  音響デザイン:林昌平
音楽監督:宮崎尚志  助監督:内藤忠司
照明:渡辺昭夫  録音:稲村和巳[稲村和已]  記録:黒岩美穂子

ヘア・メイク:岡野千江子  衣裳:山田実(第一衣裳)  和装監修:宮崎順二
特機:大島豊(NK特機)  スチール:中尾孝

ポジ編集:内田純子[EDでは編集助手]  ネガ編集:川岸喜美枝
コーディネーター:半田安弘、須賀務、宇根本忠信  製作担当:坂本至徳

主題歌:「さびしんぼう」 表題:大林宣彦、作詞:売野雅勇、作曲:Frédéric Chopin、

               編曲:瀬尾一三、唄:富田靖子

 

出演:富田靖子(さびしんぼう/橘百合子/ヒロキの娘)、尾美としのり(井上ヒロキ)、藤田弓子(ヒロキの母・井上タツ子)、小林稔侍(父・井上道了)、佐藤允(校長・岡本)、岸部一徳(理科教師・吉田徹)、秋川リサ(英語教師・大村カズコ)、入江若葉(PTA会長)、大山大介(ヒロキの友人・久保カズオ)、砂川真吾[JACブラザーズ](同・田川マコト)、林優枝(幼馴染・木鳥マスコ)、浦辺粂子(祖母・井上フキ)、樹木希林(タツ子の同級生・雨野テルエ)、小林聡美(その娘・雨野ユキミ)、加藤岳史(釣りの少年)、半田安弘(魚屋)、柿崎澄子(その娘)、明日香尚(カズオの母)、峰岸徹[友情出演](カズオの父)、根岸季衣[友情出演](マコトの母)、磯崎由里子(社会の先生)、福本豊(渡船の係員)、篠本香富(モデル)、山下亜美(声の出演)、【生徒たち】宇根本真、井上盛博、佃正和、佐原隆広、高垣勇、藤原敏浩、国近雄嗣、村上幸雄、白神義弘、寄井治、久川真史、須賀修身、川俣典子、野毛享昌、日浅寿美佳、大川直美、桃谷清美、国藤純子、栗尾典江、安藤知子、森本千佳子、青山正子、中本由美、平林真理、加藤豊美、斉藤康子、中尾有希、仲野功、山内篤、近藤友晴、槙孝彦、宮地章、沖野頼唯、前田登志、村井功、野坂建介、大塚邦弘、砂田高広、島谷一志、舞田雅彦、砂田章雄、香川徹、森山哲雄、森山明彦、掛一展、高橋努、佐藤光信、高崎昇、高橋精、野間貴之、金子浩之、才塚智雄、三浦寛英、高岡俊彦、池田敬、木根森基、三上敏正、村上佐奈江、横山純子、伴邦枝、木曽光香、毛利順子、田中美和、平田千秋、下見由佳、今中美佐、保田紅子、上田恵子、香川美恵、永富ゆかり、矢野美紀、山口知恵、土屋智子、富田栄子、徳山理恵、畠美享、鎰広純栄、安保千春、大橋律子、亀田和枝、藤岡真穂、石本美津子、住元登志子、北熊鈴子、山本愛子、高地里佳、円福寺美奈、下重広子、大本朋美、渕居満英、伊達香、坂口晴子、中本裕子、西早苗、砂田朋子、山田雅美、登由紀、平谷俊恵、松村しのぶ、藤原奈穂、広谷祥子、村田美佳、上河内由美、奥田文枝、竹田美佳、大前詠子、松本千恵、朝日五月、行広美穂子、高橋和子、横尾直美、佐藤恵子、上本潤子、二本松清美、本村洋子、法正祐希、児玉直美、船橋順子、半田美佳     

 

STORY

寺の住職の一人息子・井上ヒロキは、カメラの好きな高校二年生。母タツ子は、彼に勉強しろ、ピアノを練習しろといつも小言を言う。ヒロキのあこがれのマドンナは、放課後、隣の女子校で「別れの曲」をピアノで弾いている橘百合子である。彼は望遠レンズから、彼女を見つめ、さびしげな横顔から“さびしんぼう”と名付けていた。寺の本堂の大掃除の日、ヒロキは手伝いに来た友人の田川マコト、久保カズオと共にタツ子の少女時代の写真をばらまいてしまった。その日から、ヒロキの前に、ダブダブの服にピエロのような顔をした女の子が現われるようになる。彼女は“さびしんぼう”と名乗り、ヒロキと同じ高校二年生だという。ヒロキ、マコト、カズオの三人は、校長室のオウムに悪い言葉を教え停学処分を受けた。その際中、ヒロキは自転車に乗った百合子を追いかけ、彼女が船で尾道に通って来ていることを知る。冬休みになり、クラスメイトの木鳥マスコが訪ねて来た。そこに例のさびしんほうが現われ、タツ子に文句を言いだす。そして、タツ子が彼女を打つと何故かタツ子が痛がるのだった。お正月、タツ子の高校時代の友人・雨野テルエとその娘・ユキミが訪ねてきた時もさびしんぼうが現われ、高校時代のテルエの悪口を言いだし、タツ子も加わって大喧嘩となる。節分の日、ヒロキは自転車のチェーンをなおしている百合子を見かけ、彼女の住む町まで送って行った。自分のことを知っていたと言われ、ヒロキは幸福な気分で帰宅した。バレンタインデーの日、さびしんぼうが玄関に置いてあったとチョコレートを持って来た。それは百合子からで、「この間は嬉しかった。でもこれきりにして下さい」と手紙が添えてあった。さびしんぼうは、明日が自分の誕生日だからお別れだと告げる。そして、この恰好は恋して失恋した女の子の創作劇だと答えた。翌日、思いあまってヒロキは、百合子の住んでる町を訪ね、彼女に別れの曲のオルゴールをプレゼントした。雨の中、家にもどったヒロキをさびしんぼうが待っていた。彼は濡れた彼女を抱きよせる。気がつくとさびしんぼうは消えていた。翌朝、タツ子が道におちていた自分の16歳の時の写真を発見した。ヒロキがのぞくとそれはあのさびしんぼうだった。そして、数年後、寺を継いだヒロキの隣には百合子がいた。【「KINENOTE」より】


大林宣彦監督による《尾道三部作》完結篇。

 

尾美としのりさん演じるヒロキは大林監督自身。

医者の息子と僧侶の息子という違いはあるが、大林監督もピアノを弾いていた。

映画自体も自分の少年時代に捧げられているが、尾道の街並みとともに影の主役とも言えるショパンの「別れの曲」は少年時代との別れを象徴しているとも捉えることができる。

 

そんなヒロキの前に現れる“さびしんぼう”という白塗りの少女。

これがヒロキの母が16歳の時に演じた創作劇内の人物だと分かるわけだが、いわば“さびしんぼう”は道化であり、その白塗りの笑顔の下に悲しみを隠している。

だから、水に濡れると白塗りが落ちてしまい、“さびしんぼう”ではいられなくなってしまう。

終盤、雨の中でヒロキと“さびしんぼう”が抱き合うシーンは、よく考えればただのマザコンじゃないかと思いたくもなるが、それを非常に美しいものに昇華してみせるあたりは、さすが大林監督。

翌日、ヒロキにもう一人の“ヒロキ”について聞かれた母親が返す台詞もいいのよねぇ。

 

富田靖子さんは“さびしんぼう”の時は白塗りで弾けている一方、百合子の時は清楚な美少女と演じ分け。特に百合子の時のビジュアルは石田ひかりさんに似ていて、監督の好みはブレませんなー。笑

藤田弓子さんもとてもよかった。ヒロキの母親がおかしくなったと友人や先生たちがヒロキの家に来た際は、背中にゴキブリがいると言って服を脱ぎだす。ここのシーン、今だったらNGだな。教師が生徒の母親がおかしくなったと他の生徒の前で言っちゃうなんてのもありえないし。

樹木希林さんと小林聡美さんの母娘もそっくりで笑ってしまった。