『男はつらいよ』 | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『男はつらいよ』

 

 

1969年日本映画 91分

原作・脚本・監督:山田洋次  脚本:森崎東
製作:上村力  企画:高島幸夫、小林俊一
撮影:高羽哲夫  美術:梅田千代夫  音楽:山本直純
照明:内田喜夫  編集:石井巌  録音:小尾幸魚  調音:松本隆司
監督助手:大嶺俊順  装置:小野里良  進行:池田義徳  製作主任:峰順一

 

出演:渥美清(車寅次郎)、倍賞千恵子(車さくら)、光本幸子[新派](御前様の娘・坪内冬子)、笠智衆(御前様)、志村喬[特出](博の父・諏訪飈一郎)、森川信(車竜造)、前田吟(諏訪博)、津坂匡章[現・秋野太作](寅次郎の舎弟・川又登)、佐藤蛾次郎(源吉)、関敬六(司会者)、三崎千恵子(車つね)、太宰久雄(共栄印刷社長・小倉梅太郎)、近江俊輔(部長)、広川太一郎(鎌倉道男)、石島房太郎(道男の父)、志賀真津子(道男の母)、津路清子(道男の妹・鎌倉郁子)、村上記代(川甚の仲居)、石井愃一(工員)、市山達巳[市山達己](同)、北竜介(香具師)、川島照満(同)、水野皓作[みずの皓作](工員)、高木信夫(参道の旦那)、大久保敏男、水木涼子(梅太郎の妻)、米本善子(とらや従業員)、大塚君代(博の母・郁)、谷よしの(ご近所/結婚式の客)、後藤泰子(ご近所)、秩父晴子(同)、佐藤和子、山内静夫[クレジットなし](冬子の婚約者・大学教授)

 

STORY

車寅次郎は、“フーテンの寅”と呼ばれる香具師。父親と喧嘩してとびだした中学の時以来、ヒョッコリ故郷の葛飾柴又に帰って来た。というのも唯一人の妹・さくらを残して両親が死んだと風の便りに聞いたため。叔父の家へと向った寅次郎はそこで、美しく成長したさくらに会い、大感激。妹のためなら何でもしようと発奮、妹可愛さの一心で、さくらの見合の席へと出かけたものの、慣れぬ作法に大失敗。縁談をこわしてしまった。いたたまれずに、また旅にでた寅次郎は、奈良でお寺巡りをしている柴又帝釈天の御前様と娘の冬子に会い、冬子の美しさに魅せられ、故郷にと逆戻り。そんな寅次郎を待っていたのは、工場の職人・博の「さくらさんが好きです」という告白だった。博の真剣さにうたれ、何とかしてやろうとしたものの、寅次郎は、もち前の荒っぽさで、またまた失敗。が、かえってこれが、博、さくらを結びつけた。さくらの結婚の後の寂しさを、冬子の優しさに慰められていた寅次郎は、ある日、冬子が婚約者と一緒にいるところに出くわしショックを受ける。そしてそのことが周囲に知れたため寅は再び旅に出るのだった。【「KINENOTE」より】


シリーズ第1作を4Kデジタル修復版にて。

 
いやぁ、何度観てもいい映画ですなぁ。

よく言われることではあるけれど、シリーズの魅力がこの第1作に全部詰め込まれている。

倍賞千恵子さんも可愛いなぁ。

 

渡世人である寅さんにとって、家族は近くて遠い存在。

遊び人の父と芸者の母の元に生まれた寅さんが渡世人の道を選んだのは、ある意味、必然だったのかも知れないけれど、それでも故郷・柴又にはおいちゃん、おばちゃん、そして妹のさくらがいる。

そして毎回、マドンナと自分も新たな家族を作れるかと思いきや、お約束通り、うまくはいかない。今回で言えば、冬子の婚約者が大学教授(演じている山内静夫さんは小津作品を手がけた松竹のプロデューサー)というのも、学歴コンプレックスを抱える寅さんにとってはこれ以上にないカウンターパンチだったことであろう。

 

同じく大学教授である博の父・飈一郎(ひょういちろう。誰も読めないのが可笑しい)のスピーチは屈指の名場面。

8年間、息子に会っていなかった自分は親失格だと涙ながらに朴訥と語る。

それを聞いた寅さんがさくらに「よかったなぁ」と我がことのように喜ぶところもいい。

志村喬さんと笠智衆さんという黒澤明作品、小津安二郎作品の常連俳優が同じ画面にいるというのが何とも貴重。

 

最後の登との別れのシーンも切ない。

結局、想いを寄せていた冬子と結ばれることは叶わず、旅に出る寅さん。

登のことを思えばこそ、自分のようになってはいけないときつく当たる。

その後、泣きながらラーメンを食べる寅さんにもらい泣き。

こんな風に声を上げて泣くシーンって他にあったっけ?

(結局、エンディングではまた2人でバイをやってるんだけどね)