KAAT DANCE SERIES『NIPPON・CHA! CHA! CHA!』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

KAAT DANCE SERIES

『NIPPON・CHA! CHA! CHA!』
 
 
2020年1月10日(金)~19日(日)
KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
 
作:如月小春  構成・振付・演出:山田うん  音楽:ヲノサトル
 
空間構成:光嶋裕介  照明:櫛田晃代  音響:江澤千香子
衣裳:池田木綿子  ヘアメイク:谷口ユリエ
演出助手:齋藤亮介  舞台監督:原口佳子
プロダクション・マネージャー:山添賀容子  技術監督:堀内真人
 
出演:
〈演劇版〉
前田旺志郎(ヨシダカズオ)
松本涼花(姉ヨシダアキコ/テレビ局タケシタ)
菅沼岳(靴職人サトウ君)
村岡哲至(同イケダ君)
山口将太朗 (同タナカ君)
山根海音(オオヒラハナコ)
平川和宏(オオヒラ社長)
吉﨑裕哉(フクダコーチ)
鈴木陽丈(新聞記者ミキ)
長谷川暢(スズキ先生)
山田うん(「ラ・ムール」ママ・キシ)
 
街の人々(ウェイトレス・女子高生・ランナー他):
飯森沙百合、伊藤壮太郎、黒田勇
赤松怜音、池田紫陽、大條瑞希、亀井梨花、栗下莉佳、鈴木紫乃、鈴木里衣菜、竹内沙織、長谷川陽花、林麻子、村田小万里、三浦加利奈、宮部大駿
奏:BLACK VELVETS (ブラックベルベッツ)
    (saxophone:田中邦和、percussion:山口とも、organ:ヲノサトル、guitar:テラシィイ)
 
〈ダンス版〉
前田旺志郎、飯森沙百合、伊藤壮太郎、黒田勇、長谷川暢、山口将太朗、山根海音、吉﨑裕哉
 
STORY

飛行機事故により両親を亡くした高校生カズオは、姉アキコに大学進学をやめて働きに出ると申し出る。方々に断られた2人は経営の傾いた靴工場天下一靴店にやってくる。イケダくん、サトウくん、タナカくんら靴職人への給料の不払いが続いていて、金策もままならないオオヒラ社長はむげなく断ろうとするが、境遇を知った娘ハナコは履歴書だけでもと目を通す。カズオが町内マラソン大会の記録保持者であることを知ったハナコは、彼が自社製品を履いてマラソンで活躍すれば売り上げが伸びるともくろむ。ハナコは自分に想いを寄せるフクダとミキを喫茶「ラ・ムール」に呼び出し、フクダはコーチとして、「暁日報」記者のミキは広報係としてカズオの活動を盛り立てるよう依頼。「ラ・ムール」のママ・キシは応援団長を買って出て、小学校の音楽教師スズキ先生は応援歌を作る。マラソンデビューしたカズオは快進撃を続け、連戦連勝。天下一靴店の業績も飛躍的に伸びる中、カズオはオリンピック代表選考のための極東大マラソンに出場するが、足を捻挫してしまう。


ダンサー、振付家の山田うんさんが演劇の演出に初挑戦。
没後20年を迎える如月小春さんの戯曲を〈演劇版〉〈ダンス版〉として連続上演。
 
以前から一度ちゃんと観たいなと思っていた如月小春さんの戯曲と山田うんさんのダンス、両方を叶えてくれるまさに“一粒で二度おいしい”公演。
最初は演劇版、ダンス版と区切って上演するのかなと思っていたら、一幕が終わった時点で演劇版が終わりを迎えておらず、二幕はその続き。最後の30分ほどでダンス版に。
 
題材的には東京オリンピックを迎える2020年にふさわしい内容(秋に開催される東京芸術祭でも野外劇として上演される予定)。
昨年のNHK大河ドラマ『いだてん』ともオーバーラップする部分もあったけど、同作では水泳選手を演じていた前田旺志郎くんが今度はマラソン選手に。さすがに「すっすっはっはっ!」とは言ってなかったけど。笑
人々の熱狂と個人の葛藤、疑似イベントとしてのオリンピック等々、今日にも通じるテーマを軽快なテンポとともに描き出していた。役名もヨシダ、サトウ、イケダ、タナカ、オオヒラ、フクダ、ミキ、スズキ、タケシタとどこかで聞いたことがある名前ばかりというのも、政治とスポーツの関わりを根底に置いていて如月小春さんの意図を感じる(外国選手もニクソン、ウィルソン、ポンピドゥー、朴といった名前)。
 
前田旺史郎くんはすっかり大人になって……。笑
Co.山田うんのメンバーも演劇は今回が初めてという方も多かったようだけど、まったくそんなことを感じさせないクオリティ。公募で集められたエキストラもしっかり作品世界を作り上げていた。
ちなみにオオヒラ社長役の平川和宏さんは、1988年の初演ではカズオを演じていたそうな。
 
ダンス版は全員白い衣裳で疾走感と躍動感に溢れるものとなっていた。まさにダンサーというよりはアスリート。
演劇版には女子高生が数人登場していて、その中でもとりわけ動きや表情に目が行く前髪パッツンの女性がいたのだけど、ダンス版ではメインの一人として舞台を駆け抜けていた。
それがCo.山田うんの飯森沙百合さん。そりゃ目立つはずだわ(ちなみに他の女子高生はエキストラで、恐らく現役の高校生)。
 
もう一点、空間構成(光嶋裕介)としてクレジットされている舞台美術もよかった。
最初、舞台上に置かれていた三角形の物体が分解されて、テーブルやソファ、表彰台になったり電話が出てきたりと無駄を排除した面白い使われ方をしていてた。
 
上演時間約2時間43分(一幕約1時間、休憩約10分、二幕約1時間33分)。