オフィスコットーネプロデュース『さなぎの教室』 | 新・法水堂

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オフィスコットーネプロデュース

大竹野正典没後10年記念公演 第4弾

『さなぎの教室』

 

 

2019年8月29日(木)~9月9日(月)

駅前劇場

 

作・演出:松本哲也(小松台東)

プロデューサー:綿貫凛

 

美術:泉真  照明:鷲崎淳一郎(ライティングユニオン)

音響:佐藤こうじ(Sugar Sound)  衣裳:竹内陽子

舞台監督:西廣奏  演出助手:木内希

照明操作:森井雄一(ライティングユニオン)

音響操作:牧野宏美

宣伝美術:郡司龍彦  宣伝写真:宮本雅通

制作デスク:津吹由美子  制作:大友泉

方言指導:松本哲也

医療監修:天野貴之、戸部はな  殺陣指導:佐野功

 

出演:

松本哲也(看護婦ヨシダジュンコ)

佐藤みゆき(同イシイ)

吉本菜穂子(同ツツミ)

今藤洋子(同イケガミ)

朝倉伸二(ヨシダの夫コウジ)

古谷隆太[青年団](イケガミの夫エイジ)

小野健太郎[Studio Life](イシイの夫ゴウ)

新納敏正(マスター)

 

 

宮崎県。看護婦のイケガミは久し振りに夫エイジのために夕食を作るが、エイジはカレーライスの味に違和感を覚える。ウイスキーを飲み、眠りこんだエイジをヨシダの指示の下、ツツミとイシイが襲いかかる。彼女たちは医療知識を用い、イシイの夫に続いてエイジを殺害しようとしていたのだった。

                                        

大竹野正典さんの『夜、ナク、鳥』と同じく、2002年に福岡県久留米市で発生した看護婦4人による保険金連続殺人事件をモチーフにした新作公演(舞台は宮崎県に変えられ、台詞は宮崎弁)。

ちなみに『さなぎの教室』というタイトルは、生前、大竹野さんが西鉄バスハイジャック事件をモチーフに書こうとしていた戯曲につけられていたものだとか。

 

ヨシダ役は当初、森谷ふみさんが演じる予定だったが、諸般の事情により降板。そこで何と作・演出の松本哲也さん自ら演じることになったのだが、これがまさに怪我の功名。

4人の看護師の中で圧倒的な存在感を放ち、他の3人を思いのままにコントロールするヨシダ役を男性が演じることで異化効果をもたらしていた。森谷さんは森谷さんで見たかったけども…。

 

3人の中でも吉本菜穂子さん扮するツツミはもはや人間としての感情を失ったような表情を浮かべ、ヨシダと同性愛的関係を結ぶのも拒否するという考えすら浮かばなかったのではと思わせる。

その一方、看護学校時代のシーンは少しほっとできる。とりわけ、男性キャストが登場した後に続くエピローグは実に素晴らしく、この4人の余人には理解が及ばないような関係性の兆しを感じることができた。ヨシダも決して血も涙もない極悪人ではないんだよなぁ。どこでどう道を踏み外してしまったのか…。

 

この日は主演4人+プロデューサーの綿貫凛さんでアフタートーク。医療指導も入っていたそうで、注射器の使い方だけでなく、エイジの殺害シーンでは人間の体がどのような反応を示すかなどのレクチャーもあったそう。

今回の客席は向かい合わせで、どちら側に座るかで見え方も変わってくるが、生憎(?)殺害シーンはよく見えない方の席だったのが残念。

 

上演時間約2時間。