レトロな動物フィグの昔と今 | LEGOット庄

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LEGOブロックの製品をレビューしたり、オリジナルの作品を紹介したりしています。

日々新しい表現を模索し、進化を続けているLEGO。今回はその中でも特に成長著しい動物フィグの表現について、一昔前のデザインを振。り返ってみたいと思います。

LEGOジュラシックワールド、CITY、ハリーポッター、ニンジャゴー、パイレーツ……LEGOが出してくる様々なテーマ、シリーズの殆どすべてに含まれていると思って良い動物たち。表現の仕方は2通りあり、1つはクリエイターに代表されるような、ブロックを使ってのクリエイト・タイプ。そしてもう1つが昔からある、いわゆる「特殊パーツ」「フィグ」として最初からできあがった(あるいは少ないパーツで構成された)タイプ。今回は後者、動物フィグとしての表現についてのお話です。

 

今、たとえばジュラシックワールドシリーズの恐竜は、非常にリアルかつ鮮やかな彩色が施され、とにかく完成度が高い。一方、一昔前のフィグは、そうしたデザイン・カラーリング的なものについては、限りなくシンプルなものになっている。

 

たとえば、ワニ。

 

初登場は、「南海の勇者」シリーズだと思います。

緑一色、目と鼻は穴。非常にシンプルなデザイン。しかし一目でワニだと分かり、背中のとげや四肢の表現など絶妙なバランスの上に立っている。LEGO「ブロック」らしさを意識したデザインなのかも知れない。このワニは、かなり長いこと使われていました。「世界の冒険シリーズ」や「LEGOムービー」のセットの中にも顔を出している。

 

CITYのフォレストポリスで再登場した時に、今風にデザインが一新され、それ以降は新しいタイプのワニが出回っている。この単色シンプルなワニは、すでに役目を後輩に預けている状態のようですね。

 

続いて、サメ。

 

これも南海の勇者――かな。とにかく海賊シリーズから始まったと思うのですが。

ワニ同様、目は穴でグレー一色。でも口のギザギザとか、穴だからこそ無機質に見える眼とか、見れば見るほど良くできている。こいつも、けっこう息が長かったフィグの一つですね。6年くらい前のCITYにも登場していた。それ以降、より配色に工夫を凝らしたサメが登場して、今回発売のサメなんかは、一新されたデザインのものになっている。

 

ワニとサメで分かるように、一昔前のフィグは単色のものが多かった。色彩に関しては、この上なくシンプル。かつ、目が穴であったり、牙と口の境界線が曖昧であるなど、極めて抽象的なデザインになっている。今のフィグばかりに慣れていると、この表現にはビックリするかもしれない。リアルさと言うより、LEGO化するにあたって、どうすれば「らしく」なるかという試行錯誤の結果なんでしょう。非常に興味深いデザインだと思います。

 

単色シンプルで言うと、タコもそうだよね。

 

真っ黒(笑)。クトゥルーの頭部みたいやな。

うねうねした足の表現とか、よくできていますよ。くるっと丸まった先端には、ちゃんと1ポッチがハマるようになっている。

 

ここまでは水辺の動物を紹介してきました。

続いて、恐らくもっともポピュラーな動物フィグの1つ、馬。

初期の馬。白と黒。

首以外に可動部はない。これも一昔前の動物フィグの特徴かね。基本的に動かない。『LEGOムービー』で馬をどうやって歩かせているか、ぜひ見てみてください。すっごくぎこちなくて笑えます。

ロードオブザリングシリーズ以降、後脚が動く新造タイプが登場。今は大かた、そっちになっていると思います。ただ、馬がよく登場するお城シリーズ的なシリーズが今のところあまりリリースされていないので、見る機会が減ったように思えるのは気のせいでしょうか。

 

中世で言うと、ファンタジーの王道・ドラゴンも外せない。

今は色んなドラゴンの表現があるし、個人的に最高なのは、ホビットの「スマウグ」なんですが、そのドラゴンも最初期はこんなにシンプルなものだった。

黒い身体にオレンジ色の翼。一般的に知られているのは緑の体なんですが、それを持ってないのよね……。

このドラゴン、子どものころ欲しくてたまらなかったフィグの1つでした。純粋にカッコ良かったんです。

 

面白いのは、動物フィグ間でのデザインの継承。このドラゴンの頭部は言うまでもなく――

 

ワニと一緒なんです。

どっちが先なんだろう? 

 

 

1999年くらいの「世界の冒険シリーズ」で、また新しい路線が開かれました。ダイノ・アドベンチャー――恐竜たちです。

今やジュラシックワールド・シリーズで様々な恐竜が手に入る幸せな時代なのですが、その全ての始まりはここにあったわけですね。当然、そのデザインはこれまでの動物フィグのデザインを受け継いだ、シンプルながらも味わいのあるものでした。

 

プテラノドン。完全に単色。赤とオレンジ。今やジュラシックワールドのアトラクションの看板とかに付いていそうなデザインとなっております。

 

人気恐竜、トリケラトプスとステゴサウルス。このあたりの動物フィグでは珍しく(?)2色構成。

口と尻尾以外は動かない、完全固定スタイルのフィグ。ステゴサウルスに至っては、口すら動きません。当時は、これで十分だったんだよね。

 

 

そして我らが恐竜の王、ティラノサウルス・レックス。

ドラゴンに似たスタイルながら、ちゃんと獣脚類恐竜のスタイルになっている。目の部分は窪んでいて、単純な穴ではない、少し複雑な構造。それでも瞳などは描かれていない、まだまだ抽象性の高いデザインだと思います。

このフィグがねー、子どもの頃は本当に欲しかった。「世界の冒険シリーズ」で登場して以降は、「LEGOスタジオ」にも登場しました。僕にとってはLEGOにハマるきっかけとなった非常に思い出深いシリーズなんです。なのでこのT-REXのフィグにも非常に思い入れが深い。

 

「世界の冒険シリーズ」はその後、東洋の神秘というテーマの中で、虎の神やらイエティやら中国の守り神やらを特殊フィグとして出して来た。

この辺から、動物フィグであってもブロックを加えてクリエイトするものが増えてきたような気がします。

 

ファンタジー路線でもう1つ、ハリポタシリーズ第一弾のフラッフィー。頭が3つある犬ですね。

こちらについては、1つの特殊フィグとして出されております。単色かつ表現も抽象的。ただ、ワニやサメと比べると、デザインとしての掘り込みが増え、リアルさが増している気がします。色自体はシンプルなので、チョコレートで作ってるように見える。このフィグもお気に入りでしたねー。

 

そんなハリポタシリーズも、第2弾のバジリスクなんかは、けっこう細かい表現がプリントされるようになって、今に通じるようなデザインになってくる。これについては、この秘密の部屋シリーズの1年前に登場した、LEGOダイナソーの存在が大きいと思う。

 

ざばーっ!

ぐえーっ!

ちなみにこのLEGOダイナソーが、今のジュラシックワールドの恐竜のデザインができあがる重要な「きっかけ」だと個人的には思っています。

 

 

ここで紹介した以外にも、いろいろな動物フィグがあります。それこそ、犬や猫、カエルや魚、クモなど、本当に昔から登場しているフィグたちもあり、それぞれのデザインの変遷とかも追っていきたいんですが――長くなるので、今回はここまでとしましょう。

 

 

今もなお、動物フィグは続々新登場し続けています。そして年々、そのデザインはリアルに近付いていると言って良い。

たとえばジャングルシリーズのクロヒョウ。身体こそ真っ黒一色ですが、ちゃんと瞳が描かれていたり、鼻と口の部分が色を変えてプリントされているなど、もはや以前の抽象的なデザインではない。

 

 

 

LEGOジュラシックワールドの恐竜たちなど、恐竜フィグの最終決定版として、非常に完成度が高いリアルな恐竜たちが手に入る今の幸せについては、以前記事にしました。今は動物フィグのクオリティが素晴らしく、それがセットの大きな要素の1つにもなっていると思います。その一方で、レトロな、一昔前の動物フィグたち――色は単色、抽象的デザイン、可動部に乏しいフィグたちの味わいも捨てがたい。動物「フィグ」というよりは、動物「ブロック」だった頃の動物フィグたち。改めて手に取って眺めてみると、こいつがまた良いんですよ。なので、世代交代で、今のセットでリリースされないものが多くて、それはちょっと寂しいですね。

 

 

「ジュラシックワールド」シリーズとかでさ、前にオリジナルアトラクションのセット出たじゃないですか。トリケラトプスの。あれのプテラノドン・タイプを作ってさ、その入り口の看板に、今回紹介したプテラノドンミニフィグをオブジェとしておくなんてどうでしょう? で、今現在のプテラノドンフィグを本物のプテラノドン、レトロタイプのプテラノドンをオブジェという風にしっかり線わけすれば、すごく良い対比になると思うんですけど。前に「プテラノドン観測所」ってのを作りました。それの入り口に置いときゃよかったかもしれないな。

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こんな感じで、レトロフィグたちも生かせるような土壌が、あっても良いかなあと思うんです。ノスタルジアというだけでなく、やっぱりフィグとして、デザインとして優れているものが多いんですよ。日々のデザインの進化に加えて、過去に登場した素晴らしいデザインのフィグも、手に入るような機会があっても良いのかなと思ったりするわけです。

 

 

ただ、LEGOがエライ――というか面白いなあと思うのは、一昔前のデザインを「過去の遺物」として捨て去らず、何かに拍子にそれを持ってくることなんです。たとえば蜘蛛なんかは、ずっと前からのデザインのまま今に到っている。個人的に笑ったのは、「LEGO バットマン・ザ・ムービー」に登場したキラー・クロック。とりあえず、デザインを見て。

この顔、完全に今回紹介したワニですよね。
 
でも、このフィグが登場したころのワニって、すでにデザインが一新されてたんですよ。
ね。瞳がプリントされ、よりリアルな顔付になっていた。でも、なぜだかバットマンのキラー・クロックのフィグはこっちを採用しなかったんです。
 

クロック「一緒だよねー」

ワ ニ 「ねー」

 

ここでわざわざ旧タイプのデザインを引っ張ってきた理由、それは僕には分かりません。でもLEGOはたにこうしたご乱心(笑)をしてくれる。

日々新しいものを目指しながらも、過去のことも忘れちゃいませんよという目配せなのか。レトロファンへのサービス精神なのか。何にしても、色んなセレクトの可能性を内包している、フィグの表現。昔から今まで、デザインがどのように変遷してきたのか探ってみると、LEGOが色んなところで凝らしている工夫や、ちょっとした遊び心に気付ける。長らくLEGOを追っておりますが、つくづく面白いおもちゃだなあと、そう思うわけなのであります。

 

 

次はどんな動物フィグが出てくるのか……ジュラシックワールド・シリーズでも新造形がたくさん出ました。頑張って集めないと!!