今回のテーマは「傷害致死」と「正当防衛」です。

逮捕された少年の容疑は、「傷害致死罪」。

つまり、「ケガさせてやろうとは思ったけど、殺すつもりは全然なかった。ちょっとコラシメテやろうと思っただけ。なのに想定外に相手が死んでしまった。まさか死ぬとは思ってなかったよドウシヨウ」という犯罪ですね。

「殺すつもりは全然なかった」という点で、殺人罪とは異なります。
殺人罪は、「相手を殺してやろうと思って襲いかかったら、実際に相手が死んでしまった」という犯罪ですね。

人が命を落とすという結果は一緒ですが、「うっかり人を殺してしまった」という場合は悪意がないので、罪は軽いのです。

【傷害致死】
懲役:3~20年

【殺人】
死刑
懲役:5年~無期



圧倒的に、殺人の方が罪は重いですね。


ここで、

「殺すつもりがあったかどうかなんて、分かんないじゃん?」
「そんなつもりなかったって、言ったもん勝ちなんじゃないの?」

という疑問が湧いてくるかもしれません。


答えは、「決してそんなことはありません」


「殺すつもりがあったかどうか」は、現場での状況を詳細に検討して決定します。

例えば、犯人が包丁を持って相手の心臓に突き刺したうえで、「まさか死んじゃうとは思わなかった」と言っても、誰も信じませんよね。


今回の事件は、「少年が酔っ払いにからまれて、酔っ払いの腕を振りほどいたら、酔っ払いが勝手に足をスベらせて、階段をゴロゴロ落ちていって死んでしまった」という状況です。

もし本当に手を振り払っただけであれば、相手が足を滑らせるかどうかは予測ができないことだし、あんなに緩やかな階段をゴロゴロ落ちてもよっぽど打ちどころが悪くないと命を落とすなんてことはないですね。


というわけで、「この少年は殺すつもりはなかったんだろう」ということになります。



しかしここで、木村拓哉扮する久利生検事の疑問。

「本当に手を振り払っただけなのか。」
「ってか向こうが最初にからんできたって、本当なのか?」


なぜこれが問題になるかというと、これは「正当防衛かどうか」に関わるからです。


正当防衛とは、「身の危険を感じたので、自分の身を守るために、仕方なく相手を攻撃した」というものです。


例えば、

電車でチカンに遭ったので、チカンの腕をひん曲げて捕まえた
信号無視してきた自転車とぶつかりそうになったので、咄嗟に自転車を押し倒した

などなど。


今回の事件でも、「相手が先にからんできた」場合は、自分の身に危険が生じているので、正当防衛が成立します。
他方、相手がからんできたわけでもないのに、こっちから殴りかかった場合は、およそ正当防衛は成立しません。

もし正当防衛が成立すると、法で罰せられることはありませんので、大きな違いですね。


今回のラストでは、屋台のオジサンの証言によって、「少年がからまれていたわけではない」「むしろ少年がいきなり殴りかかっていった」という事実が判明したので、正当防衛は成立しませんでした。



なお、ここでオマケのお話。


今回の話では、坂の上弁護士なる大物弁護士が登場します。

貫禄たっぷりの坂の上弁護士は、木村拓哉さんの上司である検察部長に面会して、

「早く少年を釈放しろ」
「正当防衛なんだから裁判なんてとんでもない」

などと圧力をかけてきます。


「弁護士っていつもこんな風に圧力かけてるの??」

って思うかもしれませんが、

答えは否(ただしできるもんならやってるけどね)です。


意外かもしれませんが、弁護士が検察官と連絡を取り合うことは、よくあります。

これは癒着でもなんでもなくて、

弁護士「さっき被害者に謝罪を済ませたので、明日には示談が成立します」
検察官「じゃあ明日の示談を見てから処分を決めますね」

など、非常に健全なやり取りです。


検察官と弁護士は、表面的には敵対的な関係ですが、ざっくり言ってしまえばどちらも目指すところは「妥当な処分」という所で一致しているので、情報交換は密に行うのです。

もちろん検察官と弁護士はどちらがエライというわけではないので、このようなやりとりは対等に行われます。
年齢は関係ありません。
私のようにペーペーの弁護士でも、ドキドキしながら検察官と対等に交渉します。


なお、「どちらがエライというわけでない」と言いましたが、とはいえ最終的な決定権限は検察官が持ってるわけなので、弁護士的に「この事件はちょっとヤバイな」と思えば、「そこをなんとか~」とか言いながら、下手に出て交渉することもあります。


というわけで、今回の坂の上弁護士のように、検察官に上から目線で圧力をかけるなんてことはめったにありません。

「めったに」とあえて留保したのは、例えば検察官が明らかに不当捜査を行っている場合や正当な理由なく勾留期限を延長している場合など、「明らかに検察官が悪い!」という場合は、弁護士が強気な姿勢で抗議を行うことがあるからです。



今回は、特に検察官が悪い点はありませんでしたね。

坂の上弁護士が「検察庁長官と同期で仲良し」というコネを使って圧力をかけてるわけですが、そもそもこんな強力なコネを持ってる弁護士なんてめったにいないし、そんなコネがあっても検察庁まで何度も押しかけるようなヒマな弁護士はいないだろう、ということです。


それでは。


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