テンプル大学LL.M.とFCSL LL.M. | 日々、リーガルプラクティス。

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週末を中心に、不定期に更新。
現在、上場企業で法務を担当、
米国ロースクール(LL.M.)卒業し
CAL Bar Exam合格を目指しています。

先日、本ブログを御覧いただいている方から、「LL.M.取得にあたり、FCSLかテンプル大学のどちらにすべきか悩んでいます」というコメントをいただきました。

そういった想いで、何か情報がないかな、と思い本ブログを見つけていただいている方もいらっしゃるかと思いまして、今回はこの2つのLL.M.コースの違いについて、私の分かる範囲で検討してみようかな、と思って投稿しています。

もちろん、私はテンプル大学のLL.M.を受講した経験があるわけではないので、テンプル大学のLL.M.の良し悪しについてはまったく分かりませんし、述べる立場にもありません。ただ、現在FCSLのLL.M.に通学しているので(そして今学期で卒業予定)、両者の違いを多少俯瞰して見ることができるかもしれませんし、またそういった比較上の観点からFCSLのメリット・デメリットであれば、あくまで私見としてですが、多少述べることはできるかと。

なお、個別個別のポイントについての検討部分が必然的に多くなるかもしれませんが、逆に細かい個別個別だけに焦点を当てていくとますます迷うことになるかもしれません。その点にはご留意のうえ、御覧いただければ、と思います。

私の想いとしては、これから検討される方が、両校の内容を調べたり問い合わせたりするにあたって、どういった点に注意・注目すればいいのか、という点で本投稿が参考になれば嬉しい限りです。

(なお、AbitusのBar対策講座・FCSLについて私が以下で述べている点は、いずれも私が受講を開始した時、または現在受講している状況に基づいておりますので、直近における正確な情報については、直接Abitusにお問い合わせください。)


ちなみに、あくまで私見ですが、先に言い切ってしまうと、もし
・地理的に通学が可能
・スケジュールの調整がつく
・金銭的に余裕がある
・人と一緒に勉強するのが嫌いではない
ということであれば、テンプル大学のほうがいいんじゃないか、という気はします(苦笑)。


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それで、恐らくテンプル大学のLL.M.とFCSLのLL.M.において最大の違いとなるのは、次の4つではないでしょうか。ただ正直、これは私ではなくても皆さん、ご承知のことかもしれませんが。


1.スケジュール

これはコメント不要かもしれませんが、テンプル大学の場合は平日は19時からのコースが多く、土曜日のコースもやっているようですが、いずれにしても実際に通学が必要です。多分、録画による講義とかはないかと思いますが(もし実は録画された講義の聴講も可能でクラス出席にもカウントされるとすれば、なかなかいい制度ですね)、私みたいな業務上の都合があまりつかない人、子供がいて妻も仕事が忙しい人などは、正直この時点でテンプル大学への通学の検討の余地がありません。

ただ、ほぼ確実に定時であがれる、もしくは業務時間をフレキシブルにできて、講義が終わった後に仕事を職場または家ですることができる、というようなことであれば、いいかもしれませんね。

ちなみにFCSLに通学中の方の勉強時間はまちまちかと思いますが、ご参考までに、私の場合は、朝4時起床(っていつも起きれるとは限らず。。。今日は逆に3時半に目が覚めて今眠い。。。)、7時前まで勉強してその間に講義を聞き(2時間/回)、講義聴講以外の時間は復習したり、自分の興味がある部分を掘り下げたり、ちょっとブログしたり(笑)。あとは土曜日に9時~20時頃まで図書館で勉強し、日曜日は家族時間、みたいなパターンが多いです。ただ週末旅行に出かけたりする場合は、遅れた分を他の時間でフォローアップしたり、逆に週末は妻に子供と実家に帰ってもらって、その間土曜と日曜の双方を勉強に費やす、ということもあります。

ともかくも、FCSLの最大の魅力は、WEB上で録画した講義を受けられることによるスケジュール上のフレキシビリティです。テンプル大学も検討されている方は、受講できなかった講義を後で受講できる制度があるか、確認されるといいかもしれません。(ってかもしWEB上で録画講義を受けられるなら、テンプル大学が2歩も3歩もリード!?)


2.学費

ここはあえて正確な数字はチェックしていませんので、各オフィシャルホームページをご確認のうえ、または問い合わせをして、正確な学費をご確認ください。

ただ違いとして、各社のホームページベースでざっくり確認する限りにおいては、テンプル大学のLL.M.にかかる費用と、FCSL+AbitusのBar Exam対策講座セットコースとの費用がほとんど同じくらいかと思います。そのため、仮にテンプル大学のLL.M.コースだけではBar Exam対策としては不足していて別途対策講座を受講したい、となれば、若干テンプル大学の方が費用はかかる、と言えるのかもしれません。そういった意味で、テンプル大学の場合はコース費用にBar Exam対策の要素として何か含まれているのか、確認したほうがよいかと思います。

FCSLの場合、Bar対策講座にてBarbriのMini Reviewの範囲はカバーしていますし、BarBriの練習問題集もついていますので、きちんと本質的な勉強ができれば、別の問題集を解く必要はあるかもしれませんが、改めてBar Exam対策講座を受講する必要はないと考えています。(って合格しているわけではないので、エラそうなことは本当は言えません。。。あくまで私見です。。。)

なお、FCSLについては、これから円安になるにつれて学費がどう推移していくのか、ちょっと注意が必要な気がします。(とはいえ、テンプル大学も本校がアメリカなのであれば、円安の影響とか、アメリカにおける学費の毎年の上昇などが関係するのかもしれませんが)

あと、AbitusのBar対策講座にはBarBriの問題集が3冊とBarbriテキストが2冊ほど含まれ、FCSLではテキスト代も学費に含まれていますが、そのあたりも結構な費用がかかるので、学費に含まれているのかは要確認かと。(というか、FCSLの場合は2科目くらいは、担当教授のお勧めするテキストが高すぎるからかテキストが配布されず、あくまで推薦、とされましたが。。。ただAmazonとかで探せば中古でいいのが手に入ります。)


3.ターゲット/カリキュラム

各校がターゲットとする対象者、という意味ですが、これは大きなポイントかもしれませんね。FCSLは明らかにCalifornia Bar Examを意識してつくられています。OnlineでのLL.M.卒業をBar Examの受験資格として認めている州があまりない(少なくとも主要な州となるニューヨーク州やイリノイ州では認められていない、と認識しています)ために、これは至極当然の帰結であり、だからこそ、CAL Barを目指す人をターゲットとしています。

そのために、CAL Barの受験資格を満たすための科目だけを学ぶようになっていますし、授業内容もCal Barの内容をかなり強く意識しています。全科目の2割くらいは恐らく、FCSL外の教授でCalifornia州で教授をされている方が担当教授となっている感覚です。例えばProperty LawとかWill&TrustについてはCalifornia州がDomestic Partner制度を採用しているがためにかなり特異ですし、Civil ProcedureについてもFederal Rule of Civil ProcedureとCalifornia Civil Codeとの違いを講義にて取り扱います。(なおBar ExamのMBE(択一問題)では、将来的にCivil Procedureもその対象に取り込む、との話があるようです。当該科目の教授談。)Professional Responsibilityでも、California州の弁護士倫理の特徴も比較して学びます。

そういった意味で、California Barを目指す人にはメリットがあります。もしくは、オンラインで学ぶ人にとってはCAL Barくらいしか目指すところがありませんが、分かりやすい。


逆にテンプル大学の場合は、カリキュラムを見る限りは、CAL Barに限ったものではないので、例えばNY州のBarを受験する方なども含めてターゲットにしているかと思います。そういった意味で選択肢は広がりますが、1つ前の項目で述べた通り、Bar Examにおいて州ごとに特異な科目や内容についての対策をどのようにしているのかは、入学前に確認されてもよいかもしれません。もしかすると、NY Barの受験をターゲットにしている可能性もありますしね。

テンプル大学の場合はWritingとか、Legal Searchの講義など、FCSL生から見ると魅力的な科目もあって、今後の自分のキャリア設計と合わせた科目選択が可能かもしれないですし、そういった点から考えてみてもいいですよね。その科目の組み合わせ設計をして、各科目のスケジュールが重ならないか、という確認をされてはいかがでしょうか。(自分も上手くBar Examに合格できたら、単位ベースでテンプル大学の講義を受講してみてもいいな、と思っています。)


4.インタラクティブ性

これは完全にテンプル大学のほうが魅力的ですよね。何てったってクラスメイトがいますし、ディスカッションなどもあるでしょうから。ですのでテンプル大学に通学を検討されている方は、このインタラクティブ性がどの程度のものかを確認してもいいかもしれません。


逆にFCSLについては、完全にその人次第ですが、ベースとしてはあまりインタラクティブ性はありません。ただ、自らが行動すれば、教授はEmailベースで質問等にいつでも回答してくれます(当該科目のコースが終わった後も回答してくれる教授が多い)し、Skypeや通常の電話をかけたければ、Emailにて時間を調整することで対応してくれる教授も多いです。

自分の場合は、運よくFCSL Online LL.M.では初めて開講された参加自由の"Essay&Writing"という講義に参加でき、その際にはEssayの練習問題の回答を教授に送った後、その添削内容について教授と3回ほど、Skypeのテレビ電話にて面談をしたことがあります。

またクラスメイトについては、本当にたまたま連絡を取り合い始めた人(富山大学の高田先生)から横のつながりも広がっていったので、運がいいほうだと思います。(このブログを見て連絡をくれた同じFCSL生の方ともつながり、何回かみんなで飲みに行きました。有難い限りです。)


5.その他

その他、FCSLの特徴から、以下の点について両校を比べてみたらいいのではないか、という気がしております。

・FCSLはオンラインで学ぶ、という観点から、オンライン学習ツールがけっこうあります。まずLexisNexis、WestLawのLawschool Student用のアカウントIDが配布されます。これは学費に含まれています。その他、CALIという有名なオンライン学習ツールのアカウントも在校中は無料で配布されます。そのほかのツールもありますが、正直使いこなせていません。ただそれなりに充実はしているので、この点もテンプル大学の場合確認を入れてみてはいかがでしょうか。

・あとFCSLの場合結果論として大きいポイントかと思いますが、各科目のFinal Examもオンラインで受講するために、必然的に専用のソフトウェアを利用してFinal Examを受けます。そのソフトウェアが、CAL BarのLap Top受験でも使われるので、ソフトウェアの使い方の予行練習になります。テンプル大学の場合は、どうやってFinal Examを受験するんでしょうかね。

・テンプル大学は、最近日本での受講で卒業資格をとれるように変わったかと思いますが、引き続き特定単位の留学制度も採用されているのではないでしょうか。このあたりはよく知りませんが、逆に魅力的な点でもあり、長期休暇を取れるような羨ましい立場にいる方は、プラスの側面として確認されてもいいかもしれません。

・あまり急がずに時間をかけて勉強してもいい、という人は、Abitusの場合は、Bar対策講座(テキストは英語と日本語の併記、講義は各州のBar資格保有者の弁護士が日本語で行う)を受講して半年または1年後からFCSLに通学する、という私がとったスタイルが結構お勧めです。やはりなかなか1回の科目履修で全てを理解することは難しく、Bar対策講座でアウトラインを理解しつつ、記憶が薄れている中でFCSLの本講義を受講できていることは、自分にとって非常に有意義です。また本講義を受けつつ、Bar対策講座にて、Bar ExamのEssayにて記載すべき重要なRuleについて、どのような表現を用いるべきなのか、判断が付きやすいので、この点はAbitusの使い勝手のよさがあるかと思います。こういった時間をかけて学ぶ、という観点でテンプル大学の場合はどのような使い方があるのか、確認してみることをお勧めします。

今のところ、思いつく中で相当細かいどうでもいい部分を除けば、こんな感じかと。また思いついたら投稿しますが、今日はこのへんで。FCSLについての質問がある方は遠慮なくコメントください。



※ちなみに、「このブログの管理人、偉そうなこと言ってるけど、ほんとにちゃんと講義理解してんのかね」と思われたりしてたりして、と思ったりすることがあるのですが。。。本ブログの投稿の信頼性を(多少なりとも)確保するためですが、一応、今現在10科目20単位を取り終えた段階でのGPAは3.72(満点は4)なのでそれなりに頑張っているかと。。。

※今週末は所用のためにブログの投稿ができませんので、ご容赦ください。