某宗教団体をめぐっての銃撃事件から、
政治家との癒着問題が明るみになり、
国会でも大きく取り上げられ、
マスコミでも大波乱の様相をみせています。
遠い昔…
私が短大の学生だった頃、
この宗教団体に大切な友達を奪われました。
最近では思い出すことも少なくなっていた昔の話。
ここにきて、ニュースで取りざたされるたびに、
さまざまな思い出が甦ってきて、
胸がきゅーんと痛くなります。
あの時、何もできなかった私…
思い出を振り返らせてください。
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短大の幼児教育科に入学し、ほどなく5人ほどの仲良しの友人グループができた。
その中のひとり、ハルコ。
雪深い街の出身だった彼女は、
その地域の人特有の、
口数は少ないけれど、辛抱強く、
優しく温かな心の持ち主だった。
その頃、こんな言葉があったかどうか忘れてしまったが、
「ピュア」
雪のように真っ白で、純粋な女の子。
ピュアという言葉が、ハルコを表すに一番近い言葉だったように思う。
学校のあった○市に就職していた兄と一緒に、
ハルコは同じ市内のアパートに住んでいた。
無口な彼女から、実家のご両親の話を聞くこともなく、
同居しているお兄さんの話をしたこともなく、
ましてや、過去の話なども聞くこともなく…
ハルコは自分の話をすることもなく、
いつもニコニコと笑って、友達の話を聞いていた。
今になってみると、彼女について詳しいことは何も知らなかった私がいる。
短大も2年となって、
卒業研究や、実習に忙しく時間を費やすことが多くなっていた頃、
ハルコの様子が以前と少しずつ変わり始めたことに、皆が気づいていた。
細かいことは憶えていないが、
何かのサークルに入って勉強していると。
ウキウキとその様子を話すハルコの顔は、
とても明るく生き生きとしていて、
普段自分の感情を表に出すことが少なかった彼女のそんな変化は、
私たち仲間にとっては嬉しい出来事ことだった。
けれど、そんな嬉しい変化は一時のもので、
ほどなくして、ハルコは授業を休みがちになっていく。
たまに学校へ来たかと思うと、深刻な顔をして、
さまざまなこの世の「憂い」のようなものを呟いていることもあった。
ある日ハルコが授業の合間に、こう言って見せてくれたものがある。
「私にとってこの世で一番大切なもの。これを持っていると幸せになれるの。」
大事そうに包んだ袋の中から出てきたものは、
印鑑…
だった。
「霊感商法」
あの頃は、その問題がまだ、大きく取り沙汰される前だったのだとは思うが、
事の重大さを薄々感じ始めた私たちは、
信頼できるシスターに相談した。
そこからわかってきた事実…
市内の一番の繁華街にあるスクランブル交差点で、
アンケートを取る目的で、若者を勧誘する団体があること。
そこからすぐ近くの事務所に連れて行き、
「真理研究会」なる勉強会を開いていること。
いわゆる「カルト教団」が関係し、そこにいくと洗脳される危険性があるから、
絶対に近づいてはいけないこと。
恐ろしい事実を突きつけられて、
私たちは震え上がった。
何故、ハルコがそんなところと関係を持ってしまったのか。
あんなに優しくて、穏やかで、
純粋そのものな女の子なのに!
今思えば、
「だからこそ」
信じてのめり込んでしまったということもわかるのだけど。
私たちがその事実を知る頃、
いよいよハルコは学校に来なくなっていた。
ハルコに会いたかったけれど、
やっと調べて訪ねていったアパートでも会うことはできず、
「ハルコを取り戻しに行こう!」
そう意気込んで、
その団体の事務所に乗りこもうとしていた私たちに、
「絶対に行ってはいけません!関わってはいけません!」
シスターに強く諭され、
私たちはそれを断念した。
心配で、
でも何も出来ず、
ただ時だけが過ぎていった。
夏が過ぎ、
秋になり、
就職活動が始まり、いよいよ忙しくなってきた頃、
「ハルコさんが退学しました。」
担任からその事実を聞かされ、
私たちはなすすべもなく、ただハルコの無事を願うことしかできなかった。
ハルコは、このすみれのような女の子でした。
私の中では今でも、あの19歳の時のままです。
そして、私の中のハルコは、
いつでも優しく笑っています。
けれど、ハルコのその笑顔の裏にある闇のようなものを、
若かった私たちは、
わかってやることができなかった…
「友達」だったのに、
何もしてやれなかった…
そんな悔いがずっと残っています。
突然、
私たちの前から姿を消してしまったハルコ。
実はその後もハルコの物語は続くのですが…
長くなってしまいそうです。
続き、また綴らせてくださいね。