『今度、デート』



幼馴染の夢奈が彼氏をつれて歩いてるところに、松木はばったりと


出くわす。夜店が並んだ夏の夕暮れだった。


店先には、ヨーヨーやお面の被り物、金魚すくいに、イカ焼き、とうもろこし


にラムネ。所狭しといった風で、活気が溢れている。


祭に参加したのは、松木の母親が、ちょうどお祭りの進行委員の手伝いを


していて、半ば強制的に行くことになったためだ。


松木の母は、地元の行事には必ずと言ってよいほど、率先して参加した。


松木自身、渋々、店舗を出す為の重い荷物を運ぶことに嫌気がさしていた。


祭りや人混みで溢れている場所自体、決して好んだりするタイプでは


なかった。


それでも、彼は、夕方、5時半には来るようにと母親に言づけされていた


ので、重い腰を持ち上げることにした。


彼のイメージしていた通り、出店は人だかりで熱気に蒸せ返していた。


地域振興会の人たちが、プロパンガスやビール瓶を軽自動車の荷台から


積み降ろしていた。


はっぴを腕まくりして着ていた彼らは、消防団や自衛隊そのものだと、


松木は思った。周りは、肉体に自信のある大男ばかりで、松木は居心地が


悪かった。


草履を引き摺りながら、渋々、母を捜し歩いた。



神社の境内近くに差し掛かったとき、聞き慣れた声がした。


男勝りな低いトーンの声。けれど、何処となくか細さも伺える口調。


夢奈は、松木の目を凝視した後、団扇で扇ぎながら言った。


「あれぇー。久しぶりじゃん。元気そうだね」


松木は、彼女の目力のある瞳を一瞥すると、分が悪そうに答えた。


「おう、久々だね・・。別に、元気でもねーけど」


夢奈は、浴衣姿で相変わらず、淡々とした口ぶりだった。


元気でもない、彼の言葉を無視して彼女は続けた。


「で、今、何やってるんだっけ?」


松木は言葉に詰まった。今。母親の手伝いに、と言おうとしたが、


それは場違いであったし、夢奈の質問に答えていない。


そう考えて、彼は口を濁す。


「休みもなくバイトやってるよ。そっちは?」


ふーん。


夢奈は、そっけなくそう言いながら、辺りを見回していた。


彼は、もう1度聞いた。


「てか、今、何処に住んでんの?」


夢奈は、自分の彼氏を見つけたかと思うと、手を振り、合図した。


その後で、彼女は再確認するように、松木の顔を覗き込む。


「ん?で、何だっけ?住んでんのは、横浜だけど」


間髪入れずに、彼は続けた。


「ああ、じゃあ、変わらず横浜なんだね。さっきのは、彼氏?」


「そう。悪い??」


悪くないよ、別に。松木は、頭を掻きながら、そう抗ったが、彼女の


意識が他のところにある事を知り、話題を変えようとした。


夢奈は、松木と幼馴染であったけれど、正確には微妙な関係だった。


夢奈は、小学校5年から転校し、松木のクラスに入ってきた。たまたま


引っ越してきた先が、自宅を挟んで、3軒隣だった。


そもそも、松木の実家は、過疎化の進む町だった。


そのため、近所に引っ越してくることはかなりレアなケースだったのだ。


母親から同級生らしいわよ、そんな言葉を耳にした。


当時、幼かった彼は、彼女の家まで遊びついでに下見に行った。


中から、大柄の父らしき人が出てきて、会釈をした。


子供ながらに、松木は律儀な人だと思った。その男性の太腿の裏に


掴まるように、こちらを睨んでいた女の子がいた。


それが、夢奈だった。目つきが鋭く、口は噤んでいた。


チェック柄のセーターにピンクのスカートだった。


実家では、滅多にお目にかかれないお洒落な子だと、


松木は感じた。



それ以来、学校や近所の友達と出掛ける時、彼女の姿があった。


過疎化とは言え、集団でいるのは当然だったし、学校終わりに


近所の空き地で遊ぶのが、松木たちの日課だった。


ある時、夢奈が他の子と喧嘩してる様子を見た。


彼女は、普段は大人しかったが、1度、揉め事を引き起こすと


人が変わったように荒々しさの篭った口調になった。


夢奈が、友人の女の子の襟を掴み、離そうとしなかった。


子供とはいえ、松木たちの仲間内でもルールはあった。


だが、彼女はそんな掟破りな行動に出た。石を掴んで投げたり、


髪をくしゃくしゃに引っ張ったり。


滅茶苦茶だった。自分でも訳がわからない様子で、小心者の


松木は、その一部始終を呆気に取られて見ていた。


彼女とは、揉め事をやってはいけない。そう周囲は、


敏感に感じ取った。


そんな出来事をきっかけに夢奈は、クラスでも1人でいることが


多くなった。



松木は、10年以上も前の記憶をようやく遡っていた。目の前にいる


夢奈とは、2年振りだった。顔を見ると、目つきはあの頃と変わらず


鋭かった。面影というよりは、そのまま成長が止まってる、そんな印象


さえ抱いた。



祭りが本格的に賑やかになっていた頃、松木は、そそくさと夢奈との


会話を終え、母親を探しに行った。


夢奈は、去り際にこう言った。


「彼氏を探してこなきゃ。あっ、あとで忘れないうちに、メールで電話


番号、送っといて」


松木は、2年前のメールを思い出した。同窓会で、みんなで花火を


した時、彼女からさりげなく教わったアドレス。


紛失してなきゃな、と彼は不確かな記憶を辿りながら、人混みを


掻き分けた。



祭りの準備が終わった頃、母親の指示で、出店をゴミ袋を渡して回った。


振興会の人は、ようやく一段落が着いたといった様子で、店の辺りで


一服していた。笛や和太鼓が鳴り響く中、松木は彼女のメールを思い


出し、一応、送っておいた。


しかし、返事はそれ以来なかった。



東京に戻る飛行機の中で、松木は1人、考えていた。祭りの後、彼女が


彼氏を置いてきぼりにしていたこと。


鋭い目つきで、同級生を睨みつけていたこと。夢奈が、本当は孤独だった


こと。


祭りに来ることは、毎年恒例となっていたが、松木はその年はちょうど


周囲との夏休みの予定が合わず、結局、同級生と会ったのは夢奈1人


だけだった。


働き盛りの頃に、俺だけ帰ってる、そんな後ろめたさを感じた。


彼女も仕事がないと言って、愚痴をこぼしていたが、松木にとっても


それは同じ意味のような気がした。東京であっても、横浜であっても、


やりたいことは何もなく、ただその場凌ぎで、生活のために働いていると


しか、言えなかった。


松木の世代は、所謂、引きこもりやニート、フリーターが増え始めた頃で、


友人が、何もせず、ただダンスを踊っているだけという生活にも、松木たち


は納得していた。


働くという意味を、楽しむという言葉に置き換えるための手段でしかないと


言ったらそれまでだが、無気力な大学生活を送っていた松木やその友人達


にとっては、30歳までのモラトリアムと説明する以外、なかった。



東京の1人暮らしは、喧騒に包まれていた。たった6畳の部屋で、仕事以外


誰とも付き合いもなく、また、付き合おうともしない。


孤独というのは、自分を育てるための期間だと誰かが言ったが、


もうその言葉さえも、通用しない世代であることも承知だった。


働きたくない。だが、働かねばならない。そんな毎日の繰り返し。


ステレオタイプの日々がもたらしていたは、マンネリと増え続ける煙草の数


だけだった。


夏も終わり、秋が近づいた頃、松木は夢奈からメールが送られていたこと


に気がついた。メールを返信することが、大して重要事項でもなかった彼に


とって、予期せぬ出来事のように思えた。


携帯を手に取り、松木は慣れない送受信ボックスから開いて見ていた。


ちょうど、バイトの昼休憩だった。



「松木、元気してんのか?メールもらったけど、返信できなくてごめん。


私もそれなりにやってるよ。で、今度の日曜なんだけど、空いてたら


東京に行くから。よろしく!」



よろしく・・。という言葉が、1人よがりを物語っていた。ずぼらな返事が


彼女らしいと、松木は思った。


適当に打たれた文字のように一見みえたが、彼は、昼休憩ともあって、


何回か読み直していた。


返信させる気が全くない。そう感じた。半強制的。


東京へ来るのも、好きにしろ。松木は、心の中で夢奈を詰った後で、


携帯を徐にポケットに突っ込んだ。



秋風が吹きつけ始めた都内。もうすぐ冬になりそうな空模様だった。


松木は、待ち合わせの場所までわざわざ出向いた。無目的な女との


待ち合わせ。別にデートをするわけでもなく、幼馴染の用件に振り回されて


いる。松木は、厚手のジャンパーに身を纏い、壁際にもたればがら、空を


見ていた。


唐突に、横から突きつけるような視線を感じた。夢奈だった。


「松木!お待たせ!じゃあ、行こっか」


「あ?いきなり、行こうかって何処へ行くつもりだよ!?」


「デートに決まってるでしょ!馬鹿じゃないの」


無理矢理に取り付けられたデート。というより、デートではなく、


むしろ1人よがりのキャバクラ嬢と同伴と言ったほうが適切だと


思った。


「なんか、言った?はっきり言いなよ」


松木は、腕を取る彼女にせかされた。彼は、暫くデートというものに


縁がなかったため、たじろいだ。それと同時に、夢奈の強引さが


幼少の喧嘩の記憶を少しずつ甦らせていった。


ナイフのように突き刺す視線。


松木は、彼女の心の中に、もやもやしたはっきりしないものがあること


に気付いた。そうだ、明確じゃないのは、彼女だ。


そう思った矢先、彼女が声を張り上げた。


「なに、もたもたしてんの?映画、間に合わないでしょ!」


「え、映画?いきなりかよ。予告も一切ねーじゃん」


「予告なんて、デートにいらないの!はい、ほら、さっさと前歩きなさい


よ、子供じゃないんだから」


子供なのはどっちだよ、と松木は言ったが、夢奈はそんなことはお構いなし


といった様子で、先へと進む。


映画館のある場所まで、早歩き。急かされた幼児。当初、何がそんなに


彼女を慌しくさせているのだろうかと思ったが、彼は皆目、無目的なプチ


同窓会も悪くないなと思えてきた。


夏に会えなかった分を取り戻すかのように。



映画館に入るや否や、夢奈は後方の1番見やすいシートに座った。


彼女は、やけに明るい素振りだった。それが却って、松木を不信がらせ


ていた。


何があったのか、彼は知る由もない。ただ、目の前のスクリーンをぼんやり


と見ながら、出演者の冴えない会話をお経のように聴いていた。


夢奈は、ポップコーンを口に頬張りながら、無心に聞き入っていた。


何がそんなに彼女を夢中にさせるのだろうか、甚だ彼女の言動に困り


果てていた。


彼女は、そんな松木の虚ろな表情に気付いたのか、耳打ちをした。


「つまんないんだったら、場所移動する?」


松木は、言葉を失った。夢奈が、気を遣っていることに、躊躇した。


「いいよ、別に映画じゃなくったって。出よっか」


そう夢奈は、独り言のように口走りながら、颯爽とシートから立ち上がり、


松木の手を取った。


デート?本気??



映画館を出ると、空は夕焼け色に変わっていた。乾いた風が、冷たく手を


吹き抜けた。手を繋いでいることに、松木は信じられずにいた。


夢奈は、唐突に話し掛けた。


「公園でも散歩しよっか?気分転換に・・」


松木は、ようやく我が身を取り直した。夢奈が、幼馴染をデートに誘う理由。


それを聞こうと思い立った。


公園。夢奈の表情が一瞬、曇った。松木は、彼氏に振れたんだと確信し、


「とりあえず、清々しい空気吸える場所、行くか」


と胸を張った。


夢奈は、彼の背中を思い切り、平手で叩いた。いたい!と叫ぶ声が、


映画館前で響いた。スクリーンのたわいもない囁きに比べれば、


と彼は呟いた。



公園のベンチは、カップルで溢れかえっている。日曜ということもあり、


川近くで油絵を自由気ままに描いている人、湖畔の売店で


ソフトクリームを買っている親子、ピエロの格好をし大道芸を


している人たちもいる。


夢奈は、そんな彼らを見て、呟く。


「こういう場所に来たかったんだ!センス、あるよね」


何の??と松木は聞き返した。


夢奈は、当たり前ジャン、と思い切り声を荒げた。


「デートだよ!デート!!」


鈍感なのね、と彼女は川のほとりを見ながら言った。


その前に何も説明が抜けてる、と松木は言ったが、彼女の目の行く


先は、もう既に松木には向いてなかった。


とりあえず、落ち着きたいと思った彼は、ベンチへ誘った。


夢奈は、


「あそこがいい!ねぇ、あそこ!」


と言って、力の限り松木の腕を引っ張った。


「手が抜けるよ、そんなに掴むなよ」


松木は、言われるがままに、銀杏の木が立っている、緑色のベンチに


座った。


日がもうすぐ暮れる。東京の秋は、寒くなるのが早い。そんなたわいもない


風景に見とれていた。彼の、デートのない日常がそうさせていたのかも


しれない。


夢奈は、手が寒い、手袋持ってくるんだった、と投げやりに言った。


松木は、彼女が彼氏のデートでは、こんな風に振舞うのかなと


半信半疑だった。彼は、本題を切り出した。


「お前、彼氏とどうなったんだよ。急に東京に来るっつーし、映画見たい


とか言うし。それ聞くのが、先なんだけど」


夢奈は、明るい顔をわざと作った。作り笑いが、少しはにかみ、口元を


歪ませた。おどけたピエロみたいだった。



「うーん。まぁ、想像に任せるよ」


「違う!そうじゃなくて、フラれたのか、フッたのか、聞いてんだよ!


どっちにしろ、幼馴染をデートに誘って何か得することあんのかよ?!」


はぐらかし続けた夢奈は、もう横浜には戻らない、と勢いなく呟いた。


その後で、足をわざとらしくバタバタさせ、ちゃんとデートしてよと甘えた


声で、松木を探った。


松木は、振られたんだな、と独り言のように切り替えし、彼女へのお返し


のように諭した。


1人よがり。孤独。都会。



すべて、仲間と合わなくなってからというもの、夢奈との共通点のように


思えてならなかった。


彼女には、彼氏が必要であるし、居ない場合は自ら出掛けてでも作る。


そんなスタンスが、彼女を突拍子もない行動に出せているのかもしれない、


そう松木は思った。



陽が暮れ、ベンチに影を落とした。緑色の塗装が、不気味な深緑に


映し変える。


夢奈が、足をそわそわした状態で宙ぶらりんにさせている。


赤い靴が、幼少の思い出を語る。


友達にキレて石を無造作に投げつけたシーン。


彼女は、もともと短気で、気移りが激しいであるが故に、


友人から仲間外れにされた。


そもそも、悪いのは、どちらなのだろうかと思った。


夢奈が抱いた感情は、あの頃のまま、沸々とリピートされ続けているのかも


しれない。何人の男が、彼女に近寄っては冷めたのだろう。


けれど、美人であることを決して隠したりはせず、また、奢ったりもしない。


魅力はあるが、松木は幼馴染という立場であるがために、今まで本当の


素顔に気付いてなかったのかもしれないと感じた。


専ら、仲間はそれ以上に、彼女について知る由もない。



隣で夢奈は、想いに耽っている様子だった。


川の水面に、街灯を映し出し、ゆらゆらと揺れていた。


彼女の目を覗こうと思った松木は、ゆっくりと腰を屈めた。


彼女の足元は一向におぼつかない。


声を掛けようとした時、彼女は唐突に言った。


「今日から、泊めてよ」


松木は、困惑した。


「今度は、何を言い出すのかと思ったら、それかよ・・」


「呆れた?」


意地悪そうな表情に打って変わり、夢奈は松木を一瞥した。


松木は、答えた。


「どうせ、どこも行く所ないんだろ?いいよ、来いよ」


「なんで、投げやりなの?私が行ってあげるってのに!料理も作れるんだ


からね、ちょっとは感謝しなさいよ」


お前には、頭があがらないよ、そう受け答えると、松木は立ち上がり、


今度は夢奈の手を取った。


行く宛てのない女。その日暮らし。


まるで、切手を貼らず、住所も書かれていない手紙だと思った。


松木は、夢奈の想いを汲み、自ら腕を組んだ。


それにつられ、夢奈も立ち上がり、足を上げた。


「やっぱり、お前は解かってるやつだよ」


寒空に、声が震えてるのが解かった。


東京で1人になった時から、孤独の味を占めていた。


しかし、それはすべて1人よがりで、会話にはままならなかった。


松木は、吐く息が白くなったのを見て、こう言った。


「今度、デートしよう」



2人の繋いだ手が、微かに強くなったように感じた。




<終>

「空調ヒストリー」



2002年、都内某所にて、空調を著しく取り乱すという事件が起こった。


空調とは、別名、「空気調節」とも言われている。


その発端となったのは、当時、空調協議会の空長に就任していた


ク・チョウセイ氏の突飛な発言であった。


「我々は、空調をつける時、果たして電源を入れる必要があるのだろうか?」


これを聞きつけた空調担当の営業マンは、事態を重く見た。


本社ビルでは、空調課長の顔色が真っ青になったとされるのは、


記憶に新しい。


2003年、いよいよ両氏の溝が深まり、これによってク・チョウの蜂起


勃発する。これまで余年に渡り、空調を担当していた営業マンも積極的に


蜂起に加担し、社内マニュアル「室外機の令」を発令した。


しかし、この令によって、蜂起が収まることはなかった。


民は、10月に空調が故障したことに取り乱し、空気が調節できないと


いう理由で、電車通勤を避けた。


これによって大幅に列車ダイヤが乱れる(列車ダイヤの乱 2003-2003)


一方、受付城でも、空調がきき続ける状態であることは、


家臣の過信であった。


また、即位していた納涼天皇は、世の安泰を求め、漢の国へ使者と風を


送ることを決意する。後に呼ばれる、「送風の件」である。



乱世は暫く続いたが、2年後に「ブレーカーの変」が起こり、寺院にも


影響が及ぶこととなる。


この動きに対して、空海と最澄の愛弟子とされる、空澄(1990-2005)は、


天下泰平を求め、雑木林に逃げ込むことになる。


しかし、半年後、悟りを開き、都内・新大久保に室外寺を建立する。


2004年には、自らの法典「ガンダーラ空調」を発行する。売れ行きもまず


まずであったため、これに気をよくした空澄は、翌年、室内機取付集を発表。


室外機と室内機の微調整が、度々遅れた社内ではあったが、


ワンタッチ操作のすゝめ」が普及したことにより、風を自由に送れるよう


になる。


夜になり、寝苦しくなることもなくなったが、空澄に先を越された僧侶、


春風(1992-2005)は、家族から刺客を送り込む。


長女のむゝめ」である。



しかし、後心地天皇(1999-2009)の新操作、ぐっすりタイマーに阻まれ、


深い眠りに就くこととなり、あえなく失敗に終わる。


その後、春風は「弱風の刑」に処される。


ク・チョウセイ氏と課長は、空澄の監視の下、和解が2005年に


交わされ(空調打診条約)、こうして長く続いた戦乱は幕を閉じた。


営業マンは、空調に危機に晒されることなく、元の日常生活に戻り、


歌舞伎町にある「キャバクラ幕府」へ直行したのは、


言うまでもないのである。






働くやつは、偉いのか?


ハイクオリティを備えた高級外車は、ポンコツ車を見てこう言うだろう。



「お前ら、まだそんな車に乗ってるのか?(嘲笑)」



労働に明け暮れるのは、人の勝手だ。好きにすればいい。


だが、ポンコツに対して、人間的に勝ってると思うな。


それは、高級車を高級だと勘違いする程度の偏見でしかない。



人間というものを、直に見つめた時、


動かなくなったポンコツ車のほうが、はるかに精神的に自由である。


何故なら、彼らは、生と死を選べるからである。



生きることしか見えなくなった人間は、すべて脳死状態だ。


いつかは、誰だって死ぬ。


死を意識して初めて、生とは何か、見出せる。



ヘルマンヘッセの「車輪の下」という本がある。


車輪の下敷きになるな、という教訓が書かれてある。



働く貨車と化した外車(アメリカナイズ)は、それに目を通すことなく、


過労死する。



ニートという言葉が出来る前から、ずっと思い続けていた。


働かない人は、考えてる。



ずっと、ずっとだ。



考えすぎて、目の前にあるものが、巨大で不可解な車輪に見えてくる。


しかし、その見方は正しい。



あなたがもし、社会復帰を考えているようなら、立ち止まって


もう1度、死とは何か、考えて欲しい。



死を目前に控えた人間ほど、人間らしい人はいない。










虎視眈々と 狙うポジション 家族団欒の


中、俺、弟分 毛蟹1本で興奮


申し分 のないあどけなさ 通用しない世の中


洟垂れ小僧の頃から  俺の妄想、のどかな


空き地で昼間っから


子供は無垢 振り向く 少女のスカートストーカー


無謀な 痴漢 ペニスの弛緩 公衆の罪悪感 さえなく


覚えたてのギャグ冴えなく


1人ぼっちの公園 砂山・滑り台


だが、あの頃に戻りたい


と誰だって思う 憧憬の彼方


ある種、包茎の最中



少年は風に囁く


真っ黒な両腕は、太陽の温床


何1つ、繰り返されない論証


純粋だった頃の妄想



結婚しよう! なんて言ったあの子はもう人妻


1つ間  違えれば、俺も出来ちゃった婚  未だ精子、ノーコン


ヒットエンドラン 忘れてタッチアウト 


晩年察し、抗うと


時すでに遅し 後悔するのが主に


振り返るな、と叫ぶ独身  仲人泣こうとも


ピクリともしない それが現状 交わることのない同一線上


卑猥な少年の物心、陰毛  早期教育、親の陰謀


却って過ちを犯す道、アウトロー


引き戻そう とか言うなよ、 俺は過去しか見ない、でくのぼう


いつか叶える、少年の大志は今でも、空き缶を放浪



少年は風に囁く

真っ黒な両腕は、太陽の温床

何1つ、繰り返されない論証

純粋だった頃の夢想




これぽっちのことで  俺そっちのけの顔で


差別されたくねぇ 人間は生まれながらに1人


孤独のランナー 9回裏のピンチヒッター


今、走り出した  出塁の夢、留まることを知らねーんだ









上には上がいる。


当たり前のことかもしんないけど、その1つに、「金持ち」とか富豪が


顕著で解かりやすい例かもしんないです。



例えば、女の子が、


「私、金持ちとしか付き合えない~!」っていうのは、


結局、上には上がいるわけだから、どんなに足掻いても、


富豪のトップの男までには手が届かないわけで。



だから、付き合う前から、完全に敗北が伴ってるんです。


で、年収1000万ぐらいなきゃ駄目よねっていうのは、社会的な


ステータスであって、その人物像を見てない。


いくら、その女の子が、


「いや、性格まで見てるしぃ~、へくしゅん。お金持ちってのは前提だけ


どぉ~、へくしゅん(陰口にクシャミ)。付き合う時には、フィーリングが


大事っていうかぁ~」


なんて言ってても、結局、彼女が靡くのは現実的な『お金』です。



本音を言うと、周りに嫌な女に見られると思ってるワケですからね。



お金、お金、っていうけど、確かにお金のない人に、魅力は感じないって


思うかもしれない。


自分が、貧乏代表として求めたいのは、


「お金で比較されない部分の人間性」です。それは、今後、どんな大金を手


にしたとしても揺るぎないココロですね。



人間性が乏しい人で、お金を持ってる人もいるだろうし、その逆もいる。


だけど、人間を磨けない「マネーフリーク」の女の人は、


きっとその男性がどの程度の魅力なのかさえ、見抜けないよね。


お金しか目に映ってないから。

物欲とか、性欲を持つことは、本能だと思うし、どんどん求めていって


いいと思う。


だけど、恋愛の対象を、お金に置く時点で、その人は、敗北者ですよ。


憐れで不幸な人です。



男も同様、何百万もする高級車やらマンションで、女の子を誘うとか。


そういうのも、結局、お金でしか人を見下せない、前者の彼女達と同義語


なんじゃないかなって。



昔、金融会社に勤めてて、動産と不動産について考えてた時期が


あったんですよ。


お金は、常に流動的だし、使って初めて生きるもので。つまり、動産


じゃないですか。


人の心は、変わりやすいけど、絶対的な動かないものでもあり得ると


思うんです。


例えば、信念とか男気。 女の子なら「子供を守る母性」とか。


それらは不動産であって、お金や物とは、全く別口なわけで。



不動産の欲は、それでも、時と場合でお金に靡くけど、


動く行為は、やっぱり自分じゃない相手(人)がいるのが前提で


働きかけるんですよね。



母性も、子供がいるから、心が動く。


男も、妻がいるから、財産を分け合ったりするわけで。



解かりやすい表現になってないけど(苦笑)、


心の支えになってる、不動産のようなものがなければ、


ずっとお金と同じようにその人も使われ、回り回って


同じ過ち(離婚)を繰り返すんだと思います。



お金で男を見る前に、


もっと大事なことがあるんじゃないのかなって


思います。




「妖艶」



彩夏は、ワンピースにジーンズ姿で部屋を片付けている。


ドラマのワンシーンを時折、振り返りながら、ソファのゴミを拾っている。


ブラウン管の中の男が、女の背中に腕を回し、熱い抱擁を交わす。


彼女はテレビに夢中になり、手がおぼつかず、ゴミがちりとりから


零れている。


「ふうん・・」


彩夏は、溜息をつく。普段、こんなに大掃除をすることなんて、滅多にない


のに。そう呟きながら。


唐突に、携帯のメールのバイブレーションがテーブルの上で振動し始める。


彼女は、そっけなく、ゴミを拾う時と同様に、ストラップを引っ張り手に取る。


メールを返信すると思いきや、彼女は何を思い出したか、キッチンへ


駆け寄る。


昨日、残りのカレーが入っている鍋を眺める。


部屋にいても、落ち着かない様子だった。


カーテンを背伸びして、レールから外し、洗濯機に放り込む。適当に


ボタンを押し、ソファに横になりながら、さきほどのメールを


チェックする。


「直樹か・・・」


玄関先のチャイムが鳴る。


彼女は、寝癖を撫で下ろしながら出迎える。顔は、すっぴんだ。


「はぁーい」


彼氏の直樹。付き合い始めて、もう半年が経過する。彼との暮らしは、


飽きやすい彼女にとっては、よく続いたほうだった。


直樹は、マンションの重い扉を開けると、彼女の姿を見るや否や、


「メールぐらい返してくれよ」


とふてくされた様子だ。


彼は、お邪魔します、と丁寧にシューズを脱ぎ、手でつま先を揃え、


玄関側に向けた。


彼女は、相変わらずかったるそうに欠伸をしながら、肩にかけた


バスタオルで顔を拭う。


「もうちょっと、女らしく出来ねーのかょ・・」


語尾が下がる。


自信のない彼の素振りに彼女は、一蹴する。


「これで精一杯。男勝りで、何が悪いの?」


彼は、沈黙してしまう。彼女は、虚ろ気な彼の眼差しを一瞥する。


彩夏は、彼の優しさを踏み台にし、生活の一部にしている。


徐に水道の蛇口を捻りながら、背後にいる彼に目をやる。


「冷蔵庫にジュースがあるから、適当にこのコップ使って」


直樹は、彼女の長い指から差し出されるコップと、赤に塗られた


マニキュアに見とれる。


「それ、どうしたの?」


「あ、これ、ネイルアートも最近、飽きちゃって」


即答する彼女。


趣味がよく変わる。直樹は内心、そう彼女の飽きっぽさを気に留めて


いる。だが、彼女の美貌の前に、彼は至って静かだった。



テーブルまで2つのコップを運ぶ直樹。


彼は、行儀良く座り、テーブルに飾られてある素っ気無いドライフラワー


をぼんやり眺める。


果汁濃縮オレンジジュースを注ぐ。体勢が低いせいか、肘が震えている。


テーブルに水滴が零れる。すぐさま、彼はティッシュでふき取る。


彼女は、携帯を眺めながら、ようやくキッチンから彼の背後のソファに


寝そべる。


胸元の膨らみが、クッションに圧し掛かり、谷間がうっすら見えている。


今にも落ちそうな体勢で、足を肘つきでパタパタさせている。


彼は、首を後ろに捻りながら、彼女の腕や足に目をやる。


「なに、見てんの?」


彩夏は、監視カメラのモニターで見ていたかのように、彼に鋭い視線を


送る。彼は、ご、ごめんとどもりながら、正面のオレンジジュースに


視点を戻す。


彼は、そそっかしく急いで、ジュースを飲む。


「あのさぁ、直樹、変な想像やめてよね」


直樹は、ジュースが喉元を過ぎた後で良かったと胸を撫で下ろす。


噴出すと、また彼女に叱られる、そんな思いに駆られる。


「変なって?」


「また、知らない振りして。私の胸、いつも見てるじゃん」


自分のことを棚にあげる、彼女の性格に、直樹は言葉を飲み込む。


ジュースをもう1度、口に含みながら。


「想像してないけど・・。なんでそんな事を聞くの?」


強がっちゃって、彼女は髪を掻き揚げた後で、彼の背後から


顔を出す。赤面する彼に、主導権を完全に握るかのように


頬をつねる。


「そんなに気になる?この前もHしたばっかじゃん」


低いトーンで、彼女は答える。


直樹は、たじろぎながら、小声でかわいいから、と呟く。


はっは、かわいいねぇ。


彩夏は、彼の顔に触れるか触れないかの位置から腕を伸ばし、


コップを手に取る。


白い腕。


いつも、こっそり見せて、俺を弄んでんだ。


彼は、彼女の仕草に、嫌悪感をわざと出す。主導権を握られ続ける、


それに対する些細な反抗。


彼女は、ソファに寄りかかるように、ヒップのラインを直樹側に向ける。


「アピールすんなよ・・」


彼は、そっと囁くように言った。


彼女は、携帯メールを打ちながら、睨む。


「アピールしてんのは、そっちでしょ。よくその口で言えたねぇ」


携帯のボタンを押す、指先に力が篭る。


彼は、目のやり場を失い、


仕方なく、カーテンを取ったガラス戸から外の景色を眺めることにする。


彼女は、そんな直樹には目もくれず、メールを2通、3通と出している様子。


たった数分間。


直樹にとっては、居心地が悪かった。ただ、どうして彼女と付き合ってる


のだろう・・。日常茶飯事になっている疑問に頭を抱える。


そんな素振りを見せるのが、精一杯だった。


直樹は、思い切って、彼女に声を掛けた。


窓の景色は、雲1つなく、凡庸を物語っている。


「あのさ、今日、何もやることないんだったら、帰るけど?」


うん、好きにすれば。


彼女はそっけなく返事をする。予め、台詞をこのタイミングにとって


おいたかのように。


彼は、彼女の様子に憤慨し、立ち上がる。玄関先に向かう途中、冷蔵庫


の横のワゴンに沖縄のお土産が置いてあるのを見つける。


「どうしたの、これ?」


彼は、語気を強めながら言った。


彼女は、携帯をソファに置き、直樹のいる場所へゆっくりと歩み寄る。


「あ、これ、渡そうと思って。直樹と付き合い始めた半年記念のプレゼント


なんだけどさ」


半年・・。 長かったような短かったような、時間。


彼は、彼女と付き合い始めた喜びを蒸し返した。


夜中、飲みすぎて彼女の自宅までタクシーで送った日。


喧嘩した後、仲直りに2人で1泊2日の小旅行に行った日。


彼は、半年という期間と、彼女からの珍しい差し入れに


さっきまでの憤りを忘れてしまう。


彼女の魔性だと解かっていながら・・。



直樹は、彼女の派手に塗られたネイルの指を取る。


彼女の持ったお土産が零れ落ちる。


「ありがとう」


声がしわがれていた。


咄嗟に、彼は彼女に抱きつく。


彼女は、冷静にテレビのシーンを思い出す。


「ちょっと!まだお昼だから!!」


彼女は、口を窄め、キスのしやすい体勢を整える。


直樹は、それに気が付かず、必死に彼女の背中を押さえる。


胸が彼に当たる。


クッションより柔らかい感触に、直樹は身悶えする。


そして、彼の腕の力が増す。


彼女は、身体を左右に振りながら、さきほど付けた香水を漂わせて


いる。


「キス、だけならいいよ」


そっと囁く。悪魔の声。


しかし、もはや無我夢中の直樹にとって、その声は安らぎと快楽でしか


ない。


彼は、強引に唇を奪おうとする。


彼女は、瞬時によけながら、優しく甘えながら言った。


「ねぇ、私のどこが好き?」



唇が重なる時、彼女の脳裏には、いつも3人目、4人目の男が


同時にシンクロする。


一斉に、何人もの男の弱い心を探るかのように。


すべては、自分の持つ妖艶さと、彼らをストックし続けるために。




『アバンギャルド絵巻図』



そこは教習所、運転席に俺。


またしても、S字クランクで失敗。


隣で教官が腕を組み、俺を睨む。東風、おっかねぇ。


何とか、この状況を打破しないとな。


俺、頭クラクラさせて、クラクションを鳴らす。


頭蓋骨まで響く、爆音。ずっと聴いてると、モーツァルトの協奏曲に


聞こえて、リラクゼーション。ハ長調。


アドレナリンをシナプスから大放出中。垂れ流し。


勢い余って、急発車。がっくん。教官がシートから飛び出そうになる。


シートベルトを鑢でぎっこぎこ。助手席側のドアを開け、蹴り上げて


追い出す、教官を。ムカツクんだよ、このがめつい顔とか言いながら。


求めない、皆の共感を。



やぁやぁ、出発。


デートのドライブより狂喜に満ち溢れたアバンギャルド運転。


絵画走法。道も筆で一書き。所謂、私道。


だが、それを定める法律もねーから、俺、やりたい放題。


ドライビングスクールの受付嬢にバイバイ。


正門抜けて、1人旅。


ああ、気楽なもんだ。肩の荷もすっきり落ち着いたところで、


シートベルトを外す。てか、ここ山形でしょ?山形のド田舎。


農道を走行してると。鍬を持った小母さんが前方に。


「何処ですか?ここ?」


道を尋ねる、俺。


小母さんは、俺に目をやるや否や、鍬で襲い掛かってくる。強迫観念。


「ここは、地獄じゃ!!」とか言いながら。


怖い、怖い。恐怖感。そんな事より、俺、逃げなきゃな。こうしては


いられん。


急発進。アクセルを思いっきり踏み込み、周りの景色が溶け出すほど


上げる、スピード。


多分、500キロくらいは出てんじゃないかな。速度メーターが2回転


3回転してる。


農道をまっすぐ。どこまでも伸びる地平線。だって、ここ一面に田んぼ


広がる田舎だもんね。


バスを追い抜き、雲を追い抜き、チーターを追い抜く。


は?チーター?


「なんで、こんな所にいんの?」


走ってんの。で、ご丁寧に赤信号で停まんの。嘘でしょ。


ううっ!躊躇いながらもアクセルをあくせく踏む、俺。


人呼んで、スピード狂。勝手にさっき名づけたんだけど。


そんな空想に耽ってる俺の脳内を放置プレイして、


フルスピード。


早い、早い。チーターがバックミラー越しに遠くなってゆく。


へへ、ざまーみろってんだ。


だが、目の前に、聳える高い壁があるから仰天だ。


やばい、ぶつかる!間髪入れずに即、ブレーキをかける。


一環の終わり。ジ・エンド。


あれ??壁を走ってる!!横壁を走る車。


風景が横に流れる。ちょっと、これ。忍者以来だよ。正にアバンギャルド、


そうこなくっちゃ。


意気揚々とアクセル踏みっぱなしの俺。


どこまでも天まで伸びる道。で、大空に見とれてると、Uターンの標識。


速度を落とし、きゅるっとジェットコースターばりに跳ね返し。


で、お次は引き返す道。反対車線。


元に戻ると、空と地上がくるりと一回転。180度、ひっくり返り。


俺、もう後戻りできない状況。


そんな苦境を打破。


シートに腕を立て、逆立ちしながら、ハンドルを握る。


これなら大丈夫。外からの風が車窓から入り込んでくる。


プルプル震える腕。あぁ、こんな事になるんなら、腕立て伏せやっと


くんだったな。なんて、思いながら、走らせると、道が途中で一回転


捻り。おい、ここ俺の私道じゃないの?とか言いながら勢いつけてくるり。


と同時に、後戻り。今度は、逆立ちから一転。


おいしょって、体勢を元に戻す。ああ、良かった。一息ついて外を


眺めてると、路肩に金髪美女が親指立ててヒッチハイク。


止める、車。


黙ってドアを開け、ずかずか乗り込む、美女。


「私、次女のニーナ。よろしくね!」


いや、続柄聞いてねーし。ま、いいや。てな具合に後部席で


煙草に火をつけ、すっかり居座るニーナ。


「ねぇ、どこか、面白いところ、連れてってくれないかしら?」


面白い?ここ、ド田舎だよ?とか言いながら笑ってると、彼女。


俺の耳に息吹きかけんの。ふぅ。あぁ、ぞくぞくする!


パツキン美女に興奮。


「じゃあ、湖でもいく?」


なんて声掛けてるうちに、彼女の舌が耳を這う。


耳元で「はぁぁ・・」なんて吐息、やめてくれ!運転できねーじゃん。


増す、興奮度と速度。彼女、助手席と運転席の隙間から


身を乗り出す。


即、ジッパーに伸びる手。ちょっと!マジ、ここじゃ不味いだろ!


なんて叱ると、美女もしょんぼり。俺の下半身もしょんぼり。


「萎えてんじゃねーよ!私、ニーナよ!」


なんて怒ってるけど、意味不明。どこの者かも知らん、女。


ニーナ、次女。それしかデータないし、よく解からん。


そんな女とドライブ。


「よし、じゃあ、水俣行くか?」


ミナマタ?彼女は、外人並みの片言を喋る。


水俣病で、知られてるところだよ、そんな説明をしてるうちに、


彼女は何処で拾ってきたのか、亀を抱いてる。


「かわいいねぇ、お亀さん」


お亀・・・。


まぁ、とにかく進路変更。水俣に向かう。


って、どうやって行けばいいの?なんて尋ねても彼女、知らん振り。


いかん、この沈黙。


打破しないと。俺、打破マニア。


なんか、アフリカ大陸にありそうな名前。1人で噴き出し笑いを


してると彼女、解説し始める。


「水俣病は、チッソ工場がアセルアルデヒド生産時に出る水銀を


垂れ流したせいよ。川が汚染されて、水を飲んだ魚を人間が食べると、


脳に水銀が回るの。


ほら、この亀もくるくる回ってるでしょ」


なんで、そんなに詳しいの?お亀、水銀、舐めたの?


俺、曰く。だが、それさえ無視。


彼女、手を叩いて、「そっか!じゃあ、熊本城行きましょう!」


なんて言う。何の脈絡もへったくれもない。


俺、仕方なく、熊本入り、することに。


地図を出そうと、助手席手前のカバーを開ける。すると、中から


ヤスパースの「実存主義」の本が出てくる。


なんで?よくわかんねーよ、この世界。俺の倫理観と世界観。


「私、実存主義者よ」


ニーナが声を荒げる。


そこは、嘘だろ。と突っ込みを入れようとすると、彼女、本を取り上げ、


「こんなもの!こんなもの!!」とページをビリビリに破る。


呆気に取られる俺。


んで、本ごと、車窓から投げる。


チーターの頭にコツン。


あ、お前、ここで休んでたのか。かっかっか。もう止まらん、淫乱。





<次週に続く>


 母校に戻ってからの練習は、とにかく自分を苛め抜いた。スポーツ選手


が、マゾヒストになりがちなのは、高いレベルを求めるストイックな精神から


だ。


練習相手の蛭間は、実家に帰るため、かなり大きめのサイズのバッグを


部室に用意してある。


彼は、明らかにうんざりした様子で、シャトルを拾いに行く時も、のっそり


歩いて取りに行く。


「もうそろそろ、バスの時間でしょ?辞めようよ・・」


僕は、コートに残る彼女を追っている。練習に熱が篭る。どうすれば、


強くなれるのか、試行錯誤しながら。時計の針に目をやる。


時刻は、12時半を指していた。


「もう15分だけ!頼む、飯くらいおごるから・・」


蛭間は、渋々承諾し、フットワーク練習を再開する。彼の無気力な


ショットのせいで、ネットすれすれに落ちる。


飛びつき様、僕は地面を這うようになって転倒する。


勝ちたい。


勝つために、フットワークに磨きをかけて、もっと1周りプレーの幅を


広げたい。僕は、今まで自分の肉体を苛めてきただけなのかも


しれない。


そんな思考をしながら、力を抜き、高い打点でスマッシュを決める。


相手コートの左の奥ラインぎりぎりにシャトルが落ちる。


僕は、きっかけを掴んだ気がした。5割。全力は5割でいい。後は素早く


振りぬくタイミングとスピード。


コートに2人残されたまま。蛭間は、今のスマッシュなに?と言わんば


かりに呆然と見ていた。


ラストの1発は、不本意に終わったものの、彼のバスの時間に合わせ、


上がることにした。


「長谷川は、どうすんの?実家、帰るんでしょ?」


彼は、バッグにラケットを片付けながら、僕を急かすように尋ねる。


「ああ、帰るけど、俺は夕方の便にするよ」


これからデート?と蛭間は、嬉しそうに笑っている。僕は、彼の言葉


に苦笑しながら、寮へと戻る。


神奈川県と東京都の県境にある実家。


僕は、蛭間とは、もともと同じ市に住んでいるが、中学校は違い、


いつも勝ち上がれば準々決勝であたっていた。彼は、素直な性格


からか、プレースタイルがはっきりとしていた。


彼と違い、僕はどちらかというと、色んなプレーを試したがる


タイプで、いつも一貫性がないと言われた。


その為、手先は器用だったが、決定打に欠けていた。


相手の手を読むのも上手いが、高校で通用するほど、そんなに甘く


はない。僕は、それを身をもって思い知らされていた。



寮に戻ると、僕は真っ先に屋上にある洗濯置き場へ向かった。


いつもは男臭いシャツが、物干し竿いっぱいに広げられているが、


今日は僕の洗濯物だけが取り残されてある。


冬だというのに、陽射しが強かった。帰省を喜ぶ反面、僕は彼女に


取り残されたような気分に陥る。


シャツが、弱い風に揺れている。屋上からは、高校と周辺の町並みを


一望できる。遠く離れた街で、彼女は今、何をしてるのだろうと思いを


馳せる。


昼食は、学校備え付けの食堂で食べていたのだが、年末ということ


もあり、閉鎖されていた。


僕は、食事も近所の喫茶店で軽くとり、寮へ戻った後、ピンク電話から


高山に連絡する。


「おっす・・。今日は、何か予定ある?」


受話器越しに、彼の爽やかな声が響いている。


「今、彼女の家にいるけど、良かったらお前も飯食べに来いよ」


彼は、ルックスも良く、スタイルもモデルのような体型だった。


僕は、彼の実家に何度か行ったことがある。


部屋は男の部屋とは思えないような、お洒落にデザインされたポスター


やウォールポケットにラブレターの数々、そして、爽やかなカーテン等


が部屋いっぱいに広がっていた。


男子校だったが、彼は、他校の女の子から、もてていた。


共学の高校に練習試合へ行った時は、もう高山くんオンパレードで


収集がつかなかった。


けれど、彼はそれを別に誇っていなかったし、至って自然体で試合を


していた。憎たらしい、と1度も思ったことがなかった。


彼には、周囲の反感を抑えるだけの人間的な魅力があった。


僕は、夕食をファミレスで取ろうとしていただけに、


彼の返答に詰まった。彼女に悪いなと。


高山は、それを慮ったのか、僕に薦めてくる。


「彼女の料理、お前もいいから食べに来いよ。不味かったら文句


言っていいからさぁ」


不味いなんて言えるか、僕は笑いながら、高山の彼女の家に行く約束を


取り付けた。約束の時間は20時。僕は、さきほど取り込んだ洗濯物を


雑に畳みながら、小さなリュックに詰めた。


実家に帰るついでに、汚れたシーツも無理矢理押し込んで。


残された寮生は、ほとんど居なかった。正月前に、我先にと帰るのがごく


普通だったからだ。


僕は、鍵を部屋にかけ、バス停へと向かう。


高校の正門を抜けると、日本史の教師と遭遇する。僕は、教師のモノマネ


をし、馬鹿にしながら、後にする。


「おい!なめてんのか!?」


そう背後で声がしたが、無視した。


バス停の近くのコンビニに入り、雑誌を立ち読みして少し時間を


潰した後、僕は、小さなバッグの上に腰掛ける。


遠くからバスが見える。


反対車線のバス停は、神奈川の横浜方面行き。あれに乗れば、彼女


の高校に近づく。僕は、三田さんのプレーを思い出す。


チームを引っ張っていく、彼女の責任感。精神的な強さ。


彼女との距離は縮められるかもしれない。


しかし、物的な距離は近くなっても、存在自体は遠のいていくばかり。


僕は、もう1度、自分を戒める。


全国。もう半年しかない。


バスが近づいた時、僕は行く末を描いていた。


反対側のバスを見送った後で。




レフトハンドが新たな挑戦!


様々な悩みや質問に真っ向から、答える。


質問攻めにあっても、シカトなんてできない。




Q1.レフトハンドさんの、短編小説「うなじ」、毎回、楽しく拝見

  させて頂いてます。そこで、質問なんですが、レフトハンドさんが

  今まで恋した女性から言われた「好きな言葉」ってありますか?


A1.そうですね。やっぱ、「ちぢれ毛万博」ですかね。



Q2.お腹が痛いんですけど、どうしたらいいですか?


A2.阿鼻叫喚するしかないと思ってます。



Q3.色んな恋をしてきたレフトハンドさんだと思いますが、

  そもそも恋って何ですか??


A3.楽しい。



Q4.社内パンフレット白紙委員会の委員長に就任してらっしゃる

   レフトハンドさんにお聞きしたいのですが、どんな白紙状態が

   1番、しっくりきますか?


A4.シュレッダーに紙を入れる、その前後。



Q5.女子高生に詳しいレフトハンドさんですが、これから女子高生の

   ファッションは、どうなっていくと思われますか?


A5.徐々に衰退していくと思います。



Q6.女の子のパーツで、1番好きな部分はどこですか?


A6.内ポケット。



Q7.美人な女性が道を歩いてたとします。車に乗ってるレフトハンドさん

  だったら何て、声をかけますか?


A7.おい、内輪差に注意しなよ。



Q8.最近、よく少年犯罪が多発してますが、どうやって対処すれば

  いいんでしょうか?


A8.少年の情熱に消火活動。



Q9.新しい諺を作ってほしいんですけど、何かいいのあります?


A9.はい。夜は大体、8時には寝てます。



Q10.レフトハンドさんは、やたら怖い時があると思うんですけど、

   自分が優しいと感じた時のお話を聞かせて下さい。


A10.まろやかな滑り台を滑った時です。



Q11.今まで色んな作品を手がけてきたレフトハンドさんを尊敬してます。

   今後、どんな作品を発表しようと、お考えですか。


A11.快適、夜逃げライフ。



Q12.サインくださぁ~~い!!!


A12.右から3番目の子にだけなら、いいよ。



Q13.新しいネタをやってください。


A13.うざい。



Q14.どうも、このところ、エイズを患ってしまったみたいなんですけど・・・。

    診てもらえませんか?


A14.俺は、開業医ではありません。



Q15.今度、新曲をリリースするらしいのですが、タイトルを一足先に

    教えて下さい。お願いします!!


A15.「壊れるくらい、強く抱きしめてと君は言うけど、

     本当に壊れてしまったら、僕は君を2度と抱きしめられない」





※ 一通り、答えました。


「あぶなくない刑事2」


さっき、男友達からフラれた報告があったんですけど、


すごいヘコんでて。


ちょっと不味いなって。


だから、全国民、同時にアゲます(なんで?)


事情を説明してもらうと、好きだった子とデートする予定だった


らしいんですよ。


ここまでは、何の過失もないわけで。


で、実況見分ですよ。


その好きな女の子Aさんは、デートを俺の友達と取り付けたにも


関わらず、


「私、前の好きな人と付き合うことになって・・」って、


言われたそうですよ。


おかしくないっすか?


前好きだった人と連絡、取り合ってるんじゃん!!


なのに、俺の友達とデートしようとしてたんですよ。


2股系じゃんって。


多分、多分ですよ!そのAさんは、(さん付けなんて要らない) 


そのAは、


「大好きな彼とは付き合う確率が低いからぁ~、ペロ(涎)、別に私を


誘ってくれたぁ~、Bクンとぉ~、レロ(再び涎)、デートしてもいいかなペロ」


とか思ってるワケなんすよ。



許せないよね、そんな女。


どこが純潔じゃい。どこが、可愛いんじゃい!←これ友達に言ったら怒られたけど(笑)



そういう2股的な人、男でも女でも多いよね。


それで、幸せどうのこうのとか言ってたら、左手をパーからグーに


切り替えますよ。


なんて、醜いブサイク悪女だって。



でもね。自分もこういうの、経験してるんですよ、友達みたいなフラれ方。


やっぱ、許せないよね。


で、2股かけて、しかも好きだった人と付き合ったらしいんですよ。さっき。


なんじゃい??


男は、スーパーで価格を競い合ってるニンジンかい?


品定めして~、商品手にとってみて~、ダメだったら~、返品して~!


店員曰く、「あぁ!商品の袋破って、つまみ食いしてるぅ~~!!」


いい加減にしろよ。


自分が、警官だったら現行犯逮捕ですよ。


Aは、好きって気を見せといて、結局、フラれた側だけ敗訴みたいな。


許せないね。


だけど、友達には言ったんです。


「今回は不運だけど、嫌な女の見分け方が身に付いて良かったん


じゃない?」って。


見極めるのは、大事ですよ。


くだらないヤツに限って、2品、3品、注文する。


何故なら、自分の美貌に自信がないからです。


くだらないよね。


馬鹿馬鹿しくて、もみあげソリューションですよ(笑)


だから、判決!!


『その魂胆、透け透けパンストの刑!!』 極刑です。



苛々して、夜も眠れねーよ(zzzz・・・すやすや)


だけど、Bくんには、見る目を養える、いいきっかけになったってことで。


あぶなくない刑事(普通)からしてみれば、その女、奇人です。