スキージャンプの検査員は自分の仕事をしただけ、だが・・・ | 大学中退者のその後の後

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北京オリンピックのスキージャンプ混合団体において、日本代表の高梨沙羅選手を初め複数の選手が、ジャンプスーツの規定違反でジャンプ後に失格処分と成り、1本分のジャンプが無効になってしまいました。

 

高梨選手が泣き崩れる姿が世界中に配信され、騒然となりました。

 

この問題がなぜ起こったのか、どのような問題を孕んでいるのかを書いてみたいと思います。

検査員の仕事とは

ジャンプスーツの規定として、身体のサイズに合わせて、そこから一定以下のサイズにするというものが有るそうです。

 

理由は、スーツのサイズが大きいと空気抵抗を受けやすくなり、ジャンプにおいては飛距離を延ばすことが出来てしまうためです。

 

そのために公平を期すため、検査員が抜き打ちで検査を行うそうで、その検査で今回多くの失格者を出したということです。

 

今回担当した検査員は、おそらく一生懸命、自分に与えられた仕事をこなしたのだと思います。

 

検査員に任命され、自分の仕事の内容を理解し、それにまい進した結果が今回の大騒動です。

 

一体何が問題だったのでしょう?

検査員の本来の役目は抑止力

スキージャンプにおいて、ジャンプスーツが大きいことにより飛距離を延ばすことが出来て、本来の実力以上の得点を得ることが出来るのは間違いなさそうです。

 

しかし、おそらくその効果は限定的だと思われ、例えば本来最下位の選手が優勝出来るといったほどの効果は無く、上位の順位が入れ替わる程度だと思います。

 

さらに言うと、この不正によりジャンプ競技自体の魅力が無くなりファンが減ったり、事故により人が亡くなったりもしないはずです。

 

例えば、自動車などの製造過程や検査過程において不正が行われれば、それは安全性に関わることで、事故が起きて人の命に係わる可能性が有ります。

 

そのような場合は徹底的に不正を暴いて、もし不正が発覚すれば、自動車メーカーが大損しようが何しようが、リコールなどを徹底的に行うわけです。

 

しかし、今回のスキージャンプ競技ではそこまでの影響は無いわけで、検査員の役割は、あくまで不正の抑止のはずなのです。

 

それなのに今回は徹底した検査を行い、複数の失格者を出し、オリンピックという祭典的な競技を、大混乱に陥れてしまいました。

一般社会にも居る、過剰に役割を果たしてしまう人たち

筆者が仕事の場とする業界にも、このような人がしばしば見受けられます。

 

筆者はいわゆる「業者」として、客先の工場や作業場に出向くことが有ります。

そこでたまに見かけるのが、出入り業者を過剰に取り締まる人です。

 

工場などでは、新規設備の立上げ時などに重量物を搬入することなども有り、安全には非常に気を配っています。

 

そのため、製造担当などの中に、必ず安全担当が居ます。

その安全担当の中に過剰に役割を果たしてしまう人が居ました。

 

例えば、現場に立ち入る人はプログラマーだろうが何だろうが、安全靴の着用が義務付けられている工場がほとんどです。

 

安全靴は一見すると、普通の靴と見分けがつきません。

なので、ほとんどの現場では自己申告で確認を済ませていますが、そうでは無い現場の話を聞いたことが有ります。

 

設備の立上げ作業をしていた業者を、作業の手を止めさせて、靴を踏むことで安全靴を履いているかどうかを確かめた担当者が居たそうです。

 

安全のためとはいえ、本来の作業を止めてまですることでしょうか?

しかも人の靴踏むって、普通失礼なことです。

 

この担当者は、すごく仕事熱心なのだと思います。

 

しかし、本来の仕事は製造担当で、スムーズに新規設備の立上げを進めて、新しい生産設備で製品を生産することが役割のはずです。

 

ところが、それとは別に安全担当を命じられ、その役職を重視しすぎたために起きたことだと思います。

全体を見て自分の役割を認識すること

この安全担当は、腕に「安全委員」などという腕章を着けて、現場を監視しています。

 

そんな人の実際の作業として必要なのは、数日ごとに現場を回るだけのことだと思うのです。

そんな人がうろうろしていることで、業者は規則を守ろうと思うはずです。

 

スキージャンプの検査員にしても、「ちゃんと検査をするぞ」という姿勢を見せて、不正を未然に防ぐことが、本来の役目なのです。

 

そういった、全体から見た自分の役目を分からずに、職務だけに専念するから、問題行動が起こるのです。

 

よく「一般社員も経営者目線で仕事しろ」と言われるのは、このためです。

 

自分の立場をわきまえて、良い仕事をしていきましょう。