「FaOI」前半公演終了から10日程の間に、良くも悪くも本当に様々な情報が流れてきて、たった数日程度でも、既に過去のような感覚に陥っています。
そんな中、6月11日(日)
幕張初日に「公式YouTubeメンバー」へ向けて告知してくれていた、限定動画が公開に…
『ノートルダム・ド・パリ』
このプログラムを再び演じてくれていたとは、予告があってから実際に投稿されるまで、全く予想出来ませんでした。
羽生君が、限定動画についても「感想を自由に発信して大丈夫」とコメントしてくれていたので、とても個人的な感想を…
画面に映し出されたタイトルと、あの衣装を着てスタート位置につく羽生選手の姿を目にしただけで、今でも胸が押しつぶされそうな気持ちになります。
この競技プログラムを「アイスリンク仙台」の氷の上で、試合のように明るい照明の下、演じる姿を披露してもらえる日が来るとは、思いもしませんでした。
当時と同じ構成で挑む、競技用の
「FSプログラム」
ジャンプは、その高さも飛距離も雄大で、空中姿勢もランディングも、とても美しく、スピンも他のエレメンツも、全てが完璧でした。
11年の時を経て、全ての要素において成長した姿を見せながらも、あの頃と変わらない振付で演じるその姿は
当時、既に感じていた、生きていく上での苦しさや、周囲に翻弄され、もがき続ける苦し気な姿を、この物語の世界観と重ね合わせて表現しているようで
スケートの精度やクオリティーは上がっていても、当時のプログラムに対し出来るだけ忠実に再現し
表現面においても、昨年の「FaOI」のアンコールとは違い、当時の彼自身の感情を思い起こしながら滑っているかのようでした。
(以前、昔のプログラムを滑る時に、成長した今の技術で演技を変えてしまうのではなく、観る方達の持っている当時の印象を大事にしたい、という趣旨のことを言っていたように…)
動画を観ていて感じたのは、いつも以上に回数を多く感じるカメラ切替のタイミングで、彼の演技のスピードと、今まで以上に身体を大きく使った一つ一つの振付が
ターンを多く取り入れたステップを踏みながらも、あっという間に広い範囲を行き来する、そのスケートの「速さ」と、動きの「大きさ」を象徴しているように見えました。
そして試合の時のような、一つ一つの要素を大きく捉えたカメラアングルや、試合では、ほぼ見ることのない、低い視点から見上げるようなジャンプの美しさで
A ・ Bツアー間の休息期間とはいえ、編集にもかなりの時間と労力を掛けているような気がしています。
(「Unedited ver.」や、MIKIKO先生に映像を送ったときのような「俯瞰でのカメラ撮影」で、演技全体の映像も観たいと思ってしまう…)
「FaOI」最終日アンコールの大きな反響から約1年。
当時の試合を観ていないファンの為にも、プロになって改めてもう一度、このプログラムをフルバージョンで完成させたいという想いや
プロ転向後、これまでは日本の楽曲が多かったので、出演したアイスショーをなかなか見ることが出来ない海外のファンや、フィギュアスケートの王道的な楽曲が好きな方達に向けて
また、昨年から今年の「FaOI」
そして、アマチュアからプロへも、途切れることなく
「フィギュアスケーター 羽生結弦」としての「道」が続いていることを象徴するかのように、このプログラムを選んでくれたように感じました。
順序を考えると、きっと本当は「FaOI」ツアーで今回のショープログラム「if…」を披露するより前に動画を投稿する予定が、権利関係の手続きにより間に合わなくなってしまったのだと…
(あまりにもハードな日程で、編集自体も間に合わなかったのかも知れないけれど)
「SOI」ツアーが終演し、TV出演やカナダへの再訪後、次の「FaOI」に向けたプログラムを、一から作り上げるのと並行して
「公式YouTubeメンバー限定動画」を投稿するために、ジャンプ8本を含む4分半の「競技用FS」をフルで、完成形まで持っていくのは、決して簡単なことではなかったはずで
いつもながら、そのあまりにも過酷過ぎると思える「高い目標設定」と、それを実現するための「凄まじい努力」に対して
とても大きな感謝の気持ちと同時に、言葉で表現するのがとても難しい、切なさや苦しさにも似た、複雑な感情が湧いてきます。
「皆さんに演技を披露する」ため常に全力で、その時の最高の演技を届けようとしてくれる、その変わらぬ姿勢と、周囲の予想を遥かに超える過酷な努力。
「FaOI 2023」で魅せてくれた
「表現者」として、新しい道を切り開いていく演技と
動画で披露してくれた
「現役トップアスリート」としての矜持と、変わらぬ「思考回路」
その両方をさらに磨き続けた演技達を次々と披露してくれている今の状況が、とても贅沢なことだと感じ、いつもながら本当に感謝の気持ちでいっぱいになります。
「FaOI」後半Bツアーも、デイヴィッドが振付で帯同するのだとしたら、日本滞在中のこの期間に動画を直接見てもらうことが出来るので
彼に「このプログラムの完成形の演技を贈りたい」という気持ちもあったように思います。
本当にあっという間でしたが、いよいよ明日、新潟公演が開演。
この間に放送されたBS朝日の幕張公演2日目と、JSPORTS4で観た宮城公演最終日の「if…」
それぞれの演技が素晴らしかったのはもちろんですが、一つ一つの印象はかなり違っていて
技術面でも表現面においても、きっと色々と試してみていること、アーティストの方々のその日のパフォーマンスや温度感によっても変わる、本当に一期一会の演技であることが、改めて伝わってくるものでした。
後半Bツアーの演技も、羽生君が見せてくれる新しい景色と、その一期一会の演技を大切に心に刻みたいと、改めて感じています。