最初は3日目公演のみ購入していたチケット。

 

奥州公演の配信を諦めたこともあり、後から最終日のチケットを追加で取って、最後の2日間、会場へ足を運びました。

 

現地で観た羽生君のプログラムと、ツアー終了後の個人的な感想です。

 

 

8日。公演3日目の「あの夏へ」

 

「東京ドーム」の

広大な空間とは大きく違い

 

「横浜アリーナ」の(大きいとはいえ)

リンクと客席が近い、通常のアイスショーの空間。

 

会場で観たこのプログラムは

「GIFT」の時とも、CS放送で観た大阪公演とも、また全く別の印象を受けました。

 

「GIFT」での自然と戯れる、緩やかな空気の流れを感じた演技とも

 

「SOI」CS放送での、激しさが伝わってきた演技とも。

 

 

氷上に現れた時から、その衣装の効果も最大限に生かされた、目に見えるほどのオーラを身に纏ったその姿は

スタート位置に着く前から、ここ最近で感じてきたよりも、いつも以上に大きく感じられました。

 

彼のその動きから、呼吸や、身体から発するエネルギーがはっきりと伝わってくるにもかかわらず

 

青い光に照らされたその「空間」は

まるで結界が張り巡らされているかのようで

 

決して誰にも踏み込むことが許されない

「神聖な場所」であるような「気」を肌で感じました。

 

それはまるで、神への祈りや、儀式のようで

その、身を捧げるような「生命の舞」に、自然と涙が溢れてくるような

 

もうすでに、何かを超越してしまったかのような…

 

言葉にならないくらい、特別で、神秘的な演技。

 

ラストで氷上に一度膝を付いてから跳び上がり、氷に触れたその手を高く上げ、空へと飛ばすような振付は

 

3月11日

『notte stellata』で説明をしてくれた、氷の上での動作の意味と重なって見え

 

それは、もしかしたら、亡くなった人々の魂を鎮め、天へと送り届ける

「FFⅩ」の世界での「異界送り」のような概念、あるいはテーマが演技に込められていたのかも知れないと

 

この「SOI」ツアーで「あの夏へ」を舞った彼は、まるで

 

白龍を召喚し、死者の魂を鎮める、本当に

「召喚士」のようだったと、そんな風に後から感じました。

 

 

9日。最終公演「阿修羅ちゃん」

 

名前がコールされる前から、会場の熱気と興奮が尋常ではないほどの盛り上がり方で

 

羽生君もそれに応えるように最初からエネルギー全開で、今まで以上に激しくキレキレの動きと、動きを止めた時の一つ一つのポーズも今まで以上に洗練され、動きや表情に余裕も感じられて

 

あの激しいステップを踏みながら、もの凄いスピードでリンクを移動し、各方向でアピールしまくっていて、会場中が熱狂を超え、もはや発狂状態。

 

会場のボルテージが最高潮を迎え、今までアイスショーでは感じたことのないほどの一体感から生じる、大きなうねりのような空気が、そこにはありました。

 

この日、この時の「横浜アリーナ」は

完全に「LIVE会場」と化していて

 

「GIFT」の時は演出の効果もあり

わりと“ポップ”だった「阿修羅ちゃん」は

 

この日は完全に“ロック”でした。

 

 

今回3つのプログラムを通して、改めて

 

「オペラ座の怪人」(シェイ振付)では

試合と同様の高難易度による緊張感を維持しながら、アマチュアの時よりもさらに磨かれた表現力で「物語の世界」へと、観る者を引きずり込み

 

「あの夏へ」(デイヴィッド振付)では

幻想的で美しいスケーティングと神秘的な演技で、自身が「見せたい世界」を表現する、プロフィギュアスケーターとしての真髄を見せてくれて

 

「阿修羅ちゃん」(セルフコレオ)では

アイスショーの可能性として、フィギュアスケートという「ジャンル」を超えた、新しいエンターテイメントの形を、プログラムを通して切り開くという

 

この「SOI」ツアーの10公演で見せてくれた、それぞれの演技、その世界、示してくれた可能性の大きさと

 

「GIFT」と『notte stellata』のあと、短期間でさらにプログラムを磨き上げ

プログラムにまた新しい命を吹きこんでいく圧倒的な才能に、いつもながら本当に驚かされると同時に、その類まれなる努力の成果を見せ続けてくれることに、改めて感謝の気持ちでいっぱいです。

 

単独ショーでは、数多くのプログラム、セットリストを最後まで滑り切ることが、きっと何よりも重要で

座長として出演した『notte stellata』では、公演全体への配慮と、被災地への想いを込めた、全身全霊の演技を披露する、精神的な過酷さ。

 

そのために培ってきた体力や持久力、精神力を、オープニングと1つのプログラムに全神経、全力を注ぐことが出来た結果、一つ一つの演目それぞれが本当に素晴らしい3つのプログラムを毎回、披露してもらえたのだと理解しています。

 

そしてプロジェクションマッピングや様々な演出のない、彼のスケートのみで見せてくれる世界の、演出を超える素晴らしさと、その圧倒的な存在感に、改めて驚かされます。

 

 

「SOI 2023」ツアー全日程が、大盛況のもと、無事に終演を迎えました。

 

『プロローグ』で「サザンカ」の曲に乗せた映像で

「僕のスケートを観て少しでも幸せを感じてくれたなら、これ以上ないくらい報われています」と

「僕は幸せです」と語っていた彼。

 

ショー開催前に作られた映像の中では、まだ少し無理して言っているような気もしていました。

 

「GIFT」のアンコール後、フィナーレの周回で

「やっぱスケート好きで良かったです」と言っていた彼。

 

この時も、支えてくれた全ての方へ贈り物を届けるため、本当にハードなセットリストで高い目標を設定し、たくさんの幸せを感じられても、楽しむ余裕はなかったと思っています。

 

『notte stellata』では仲間とともに希望を届け、被災地の方々に少しでも想いを受け止めてもらうことができ、受け入れてもらえたと羽生君自身が感じられ、きっと少しほっと出来たり、安堵の気持ちはあったのではないかと…

 

そして今回の「SOI」を通して…

当初の運営側の問題や、緊張感のあるスタートだったツアーも、初日からの大きな反響と公演の盛り上がり、回を重ねる毎にスケーター達の一体感も生まれ、観客の熱狂と同時に、彼のその圧倒的な演技に対して、後輩だけでなく、海外の先輩スケーター達からのリスペクトや賞賛も浴びて…

 

最終日「阿修羅ちゃん」の熱狂と、会場の一体感に

羽生君自身も「やっぱりスケートが楽しい」と、きっとそう感じられたのではないかなと、そんな風に思えました。

 

 

たくさんの感動と幸せを感じさせてもらえた、素晴らしい最後の2日間でした。