棺桶リスト
棺桶リスト(Bucket List)という、挑発的な言葉がある。
かつて『最高の人生の見つけ方』という邦題で評判になった、The Bucket Listのタイトルだ。
余命を宣告された二人の主人公が、「死ぬまでにしたいこと」を書き出し、それを実行していく――
そんなコメディタッチの映画として知られている。
今ではこの言葉は、「人生で挑戦したいこと、行ってみたい場所、会いたい人などを自由に書き出す習慣」として、スピリチュアル系ワークショップの定番メニューにまでなっている。
私も十年ほど前までは、百個くらいはスラスラと書き出せるほど、やりたいことが山ほどあった。
しかし最近では、「やりたいこと」から「在りたいこと」へと、エネルギーの軸が明らかにシフトしてきた。
それに伴い、リストの項目も年々減り、ここ数年は書き出すことすらしていなかった。
アイスバス(氷風呂)
そんな中でも、「死ぬまでに一度は体験したい」と思い続けていたものが、一つだけあった。
それが――アイスバス(氷風呂)である。
今では健康法として広く普及しており、水温10〜15℃程度が推奨され、健康な人なら誰でも体験可能だ。
だが、私が惹かれていたのは、もっと本格的なアイスバスだった。
通称“アイスマン”と呼ばれるオランダ人、ヴィム・ホフによるヴィム・ホフ・メソッド。
水風呂に大量の氷を入れ、水温はほぼ0℃。
そこに3分間入るという、かなりチャレンジングな方法だ。
このメソッドは独自の呼吸法とセットになっており、私が志している瞑想の在り方とも、驚くほど相性が良い。
さらに、趣味のウィンドサーフィンやスノーボードにおける真冬の寒さ対策としても、非常に理にかなっている。
伝説的サーファーのレアード・ハミルトンも、このメソッドを学んだと知り、私の棺桶リストの最上位に一気に浮上した。
日本ではまだほとんど知られていなかった当時、オランダまで学びに行こうと本気で画策したが、コロナ・パンデミックによって渡航不能となり、いつしかその計画もリストから消えかかっていった。
ところが最近、日本でもワークショップが盛んに開催されていることを知り、迷わず申し込んだのである。
命を通じて、つながっている
結果は――実に素晴らしかった。
最初の30秒ほどは、寒さを通り越して全身に鋭い痛みが走り、「凍え死ぬかもしれない」という、かすかな恐怖すら感じた。
文字通り、棺桶(Bucket)に氷漬けにされたような感覚だった。
ところがその後、身体の最深部から大生命エネルギーが目覚め、全身がカァ〜ッと熱を帯び始めた。
この世とは別次元の、得も言われぬ心地よさが訪れた。
比喩的に言えば――
凍てつく真冬の三途の川を、死に怯えながら渡り、地獄の恐怖を味わったあと、
向こう岸に辿り着いて、天国の境地を体験したようなものだ。
そして、ここが最も強調したい点なのだが、
あの世の天国と、この世の「今」は、大生命を通じて、確かにつながっている
――それを、身体ごと体験することができた。
死ぬ前に、
「死んだあとも死なない自分」を、垣間見た。
臨死体験の一瞥と言っても、あながち大げさではないだろう。
明け渡す
瞑想の道には、大きく分けて二つある。
修行の道(努力)と、明け渡しの道(寛ぎ)だ。
ヴィム・ホフ・メソッドは、典型的な修行の道であり、
寒さや痛みと闘い、奮闘努力を重ねる――
そんな「男性エネルギー全開」のワークだと、私は覚悟していた。
だが、実際に繰り返し強調されていたのは、
**「明け渡し」**だった。
これまで文献や動画で何度も、
寒さ、痛み、身体の叡智、生命のメカニズムに「明け渡す」ことが語られてきた。
しかし外側から眺めている限り、それはどう見ても
「冷たさをヤセ我慢し、寒さと闘い、コンフォートゾーンを破壊する」
力技のワークにしか見えなかった。
今回、実際に体験して初めて、
自分の身体の声に耳を澄まし、それに従う
ということの、真の意味を知った。
実は、最初の3分間のアイスバスを余裕でクリアした私は、
二度目のチャレンジにも申し込んでいた。
ところが直前になって、首の筋肉が硬直し始めた。
私は身体の声を尊重し、チャレンジを中止することにした。
以前の私なら、無理をしてでも「初心貫徹!」と突き進んでいただろう。
しかしそのとき、自分を超えた大いなる存在の声が、はっきりと聞こえた気がした。
『無理しなくていいんだよ』
自分の意思を、大いなる意思に明け渡す――
それ自体が、かけがえのない体験だった。
その後のブレスワークで、首の硬直がマインドと深く結びついていることを体感し、
それが解放されたとき、非常に深い寛ぎが訪れた。
さらに、スノーボードのやり過ぎで慢性化しかけていた背中の痛みまで、すっかり消えてしまった。
毎日のように温泉に通っても改善しなかった痛みが、たった一度のアイスバスで消えたのである。
驚きとともに、
このワークショップを主催してくれたレンスさん、
そして共に体験を分かち合った参加者の皆さんに、心から感謝している🙏

