熊本県八代の海。そこで見える白い漁火。それを不知火と言う。昔は妖怪とも擬えられた。
海から立ち昇る水蒸気で対岸の白い灯りが揺めく。それが不知火の正体である、と後の世に検証がなされたのだけれど、もともと「不知火」とは人のイメージが生み出したもの。それが怪異と呼ばれるまでになったのである。遡れば12代天皇の頃まで遡ると言うのだから、かなり昔のことだ。
人を動かす原動力はイメージである、と僕は思う。
今も昔もノウハウもなくこれから事を起こそうとする者に、最もわかりやすく訴えかける手段。それはアニメだったり映画だったり小説だったり漫画だったり音楽だったりドラマだったり舞台だったりするのだろう。
大学では経済学の導入としてドラマを見せると聞いた。
五十路を過ぎる僕としては、「なんだかなあ」と言う思いと「ほう、やるではないか」という思いが交錯して、どっちつかずではあるのだけど、その流れは至極当然のことなのだ、と思う。
壮年に差し掛かろうとする僕としては、そこで学んだ者たちはイメージで得た力を数倍にも顕現してくれたら楽しいだろうな、と思う。
揺めき不安定な白い灯りとは若さの揺めきそのものである。