漂泊の民 | レさんのブログ改めジャンク・エッセイ

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活字中毒の方、ヒマ潰してみませんか?

 柳田国男の『山人論集成』を読んでいる。

 かつて、ひょっとしたら今でも深山にひっそりと暮らしているかも知れない「サンカ」と呼ばれる人々やその周辺のさまざまな出自について、御大が執筆した論文がまとめてあるものだ。ランニングのついでにTSUTAYAに寄って偶然見つけて、衝動的に買ってしまった。明治に記された論文がであるので、そのほとんどが文語体で記されていて、かつ僕の知識では読めない漢字が多数あるのだけれど、そのニュアンスはしっかりと伝わってくる。まぁ誰にでもオススメできる書物ではないけれど。僕のように妖怪沼に片足を突っ込んだ方であれば読んでみてもよいかも知れない。

 

 柳田国男といえば『遠野物語』が知られている。あの説話集も古くから「不可思議なこと」が跋扈する地・遠野でのフィールドワークの集大成であり、水木しげる御大に多大なインスパイアを与えたであろう人物である。「不可思議なこと」とは妖怪や妖怪が引き起こした事件のことで、妖怪といえば水木御大、その直系の始祖とも言えるのが柳田国男であるのだから、これは読まないわけにはいかないである。

 

 山にまつわる怪談・奇譚は枚挙にいとまが無い。この際、心霊的な話は置いておくとして、中には「人であって人ならざる者」が引き起こした事件がある。自然のめぐみ豊かな山界には、狩猟採集しながら漂泊を続ける民がいた、もしくはいるという。蓬髪、頑強な肉体、半裸の身体、人語をほとんど解さない人々。ほら、もうこう書くだけで鬼や山童を想起させるでしょ。

 

 深山幽谷と言われる場所がこの小さな島国のほとんどを占めているのだから、我々里の人間が山中を漂泊しながら暮らす人々がいても、全く不自然ではないのである。

 

 さて今宵も奥深い木立の闇へ出かけるとしようか。