レさんのブログ改めジャンク・エッセイ

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活字中毒の方、ヒマ潰してみませんか?

 順当に春が進んでゆき、今年も桜が咲く。3月の後半から桜が咲き始めた、当地・福岡は今日が満開とのこと。当然ながら地域差はあるだろう。少なくとも市内の福岡管区気象台がある周辺のことだろう。僕に言わせると、だいたい桜という花はどう見積もっても、おかしな花だ。一つの樹に砂糖にたかる蟻のように群生して咲くこともそうだ。しかも花の一つひとつは小さいし。それに咲いている期間も短い。ゆえに潔いとはされている。しかし、これになぞらえて先の大戦末期に作られた、非人道兵器である桜花とそのパイロットのことを考えると、ね。そこいらへんの事は、松本零士氏の『音速雷撃隊』を是非観てほしい。

 

 そんなことをつらつらと考えていると、地元にある福岡城の桜祭りには生まれてこの方行った事がなかったなあ、と思い、つれあいと出かけてみた。

 

 

               

 

 まさに絢爛。まさに豪華。福岡城の堀に移る姿もこれまた幻想的である。時刻は19時を少しすぎた頃である。

 

 

 なかなかの賑わい。昨日の雨で地面はぬかるんでいるがこの人だかりである。

 

 まあ相変わらず平和。ぬかるんでるけど。

 

 どこをどう通ったかわからないけれど、たどり着いた場所は埠頭の突端だった。ここでバーベキューをするという。

 運転手二人は幸いな事に下戸で、というのもこの二人が幹事というか発起人だった。よく晴れた4月、土曜日の午後だったと思う。まだ高い太陽に波濤が砕けて、夏に汚される前の海は青い

 

 離婚したばかりで、ジェットコースターのような日々が続いていた。

 家で一人で飲む。誰かに誘われればそこで飲む。家で飲むのはビールとウオッカとラム。外で飲むのはビールと焼酎。激安の焼肉屋に3日続けて通って案の定腹を下したり、港湾労働者の溜まり場で定食屋兼角打ちみたいな店で、行き場のない打ち明け話を聴いたりしていた。仕事が終わった後の空白の時間をアルコールで埋めるような日々。

 と、こう書くと同情されそうだけど、そんなことはなくて、結婚していた間に気が付かずに目の前を通りすぎて行った、綺麗だったり奇妙だったりする魚や石ころなんかを、改めて手に取って眺めてみて、自室に飾ってみたりMTRで録音してみたりする日々は、それなりに充実していた。

 

 炭を起こして焼き網の上で安い肉が焼けている。ホルモンや豚バラがダラダラと油を垂らして、それが火を呼ぶ。

 炭火で焼けたばかりの肉は、なんでも美味い。それにビールと音楽があれば何もいらない。そんな瞬間が誰にでも訪れるのだ。堤防の上に腰掛けていると上島くんが、俺も離婚するかも、と言う。そうなの、と聞き返すと、「うん。もういいだろって。なんだかそう言う話になってさ。俺の場合子供がいるけどね」どうするのさ、と再び尋ねると、生まれたばかりだし、ヤツが引き取るよ、と言った。「養育費は当然払うけどね」大きなスズキが、釣られたわけでもないのにエラ洗いのように跳ねるのが見えた。肉焼けたよー、と城並さんが呼んでいる。とても綺麗なソプラノだな、と僕は思った。僕たちは堤防を降りる。寺内くんや山中さんや江頭さんも肉にかぶりついて、ビールを流し込んでいる。ああ春爛漫な2000年4月初旬。

 

 それからしばらくして、上島くんのジェットコースターが脱線してしまった、と聴いた。僕はすでに新しい職場に移っていたけれど、内谷くんが教えてくれた。なんなんですかね、ヤツの人生って。僕はなんだろうね、としか言えなかった。

 僕はまだ生きていて、こうしてあの日の午後の海とたなびく煙を思い出している。

 ぬくぬくと春がゆく。

 しんとした夜の縁の寒さに1ヶ月前のやる気のない凍えを懐かしく思い出したりもする。昼間のぬるみから察するに、もう戻るのは難しいようで鬱。

 今度の冬は例年になく暖かかった、当地・福岡である。例年ならもっと寒かった冬。ホリゾンタルグレイの空のもと、凍える風と舞う雪片もしくは氷雨にさらされて、あー寒っ、もう痛いくらいに、もう足の先の感覚があああ、っていうくらいに寒い(痛い)っつーのが冬の冬たる所以。なのに、だのに今度の冬のやる気の無さと言ったら云々。

 

 でも、本当に春が嫌いな理由は、分かってはいる。

 

 春特有の別れと出会い、それに付随する由なしことに翻弄されるのが面倒なだけなのだ。

 ぽっかりとした昼間にそんなことで奔走することが面倒で仕方がない。もういっそ何もせずに山中の庵もしくは海風吹きっ晒しの番屋などに引きこもって、空腹を抱えつつ酔生夢死。あーいいねいいね、なんて。

 

 で、それをできるのか、そもさん!せっぱ!つうて膝突き合わせて問われると、えー、あーどうですかね、あの、あれだ、自分アレルギーもありますしね、頭痛持ちでしてね、なんて日和見主義的に奔走するのがおちで、どうもこうも逃げられないのであってまた鬱。

 なんだかなー春。