別の映画を見ていたら予告編で見かけ、ええ?なんで今頃?と興味があって、さっそくレンタル。
私は面白かったです(ということは、いろいろ妄想できるということですhttps://ameblo.jp/lecture12/entry-12587544944.html)。
有名なエールフランスをパレスチナ人民解放戦線グループがハイジャックした事件。
それを強引な方法でイスラエル軍が救出した。
何回か映画になっているはずです。
私が知ってるのは「エンテベの勝利」。
あと、私世代なら知っている「なんとか(自粛)大統領アミン」も出てくる。
しかし、1976年のこの出来事を「なんで今頃、映画にするの?」がまず疑問。
でも、奇襲作戦決行でアドレナリン全開映画かもしれないし(←ただのバカ)、見てみようかなと。
感想。
ラストの字幕で「ああ!なるほど!」と。
ネタバレになる(ならない?事実はネットで調べれば一発だし)可能性もあるので、未見の方はとばしてくださいまし。
(始めます)
さて、いきない出だしから、ヘブライ語(?)の歌とダンス。
うん?「アクション映画」ではないのですね?。
了解です。観方スイッチ切り替えます。
アドレナリンは諦めます(←だから、ただのバカ)
話は、複数、平行して進みます。
ラビン首相とぺレス国防相のやりとり。
ドイツ人テロリスト2人とパレスチ人民解放戦線の2人のやりとり。
イスラエル軍人さんの動き。
最後はダンスも・・・・と、だんだんレイヤーが重層的に。
てんこ盛りにしているので「描き方に突っ込みがたらん」というご批判もあるようですが、仕方ないかなと。
こんだけ盛り込むと。
見どころ1。露骨に責任をとりたくないラビン首相と、仕方ねえなあと動き回って頑張るぺレスのやりとり。
いわゆるポリティカル・サスペンス的な緊張感はないですけど、「ありそうだなあ、こういうこと」と私は面白かったです。
見どころ2。ドイツ人というイスラエル問題に対して微妙な立場の男女が、親パレスチナとして動く。
これも面白い。特に男性の方の葛藤。
ドイツ人だからユダヤ人への罪悪感があり、露骨には反イスラエルという形をとりたくない。
だからイスラエルの人質は殺したくない。ナチスと同じになりますものね。
あと、彼らドイツ赤軍の目的は、にっくきドイツ資本主義を革命で倒すこと。
さらに母国は戦争犯罪をしっかり贖ったとはいえないので、余計倒したい(戦争であれこれやった人が、戦後、実は政治家として生き残っていた)。
で、ドイツはアメリカ・イスラエル寄りなので、敵の敵は友で、パレスチナと手を結ぶことになる。
とはいえ、彼らの目的の資本主義転覆とイスラエル・パレスチナ問題、はっきり言って関係ない。
実際、映画の冒頭近くで、自分たちの存在感がなくなったから何かしないと、と相談して、そうだ!ハイジャックだ!みたいな会話があります。
要は彼らにとっては宣伝行動に過ぎない。人質の皆さんにとってはホントにいい迷惑ですが。
なので、本当に彼らにとって必要性というか必然性のある行動かといわれれば、はっきりいってホントは「ない」。
だから結構、人質に対してゆるい態度をとる。
そして、それが命とりに。
男性テロリストが弱腰に描かれているという映画評もありましたが、彼は苦しんでいたんですよね。
てか後悔してたかも・・・まま、自業自得ですが。
そして、女性テロリストの方。
「プライベート・ウォー」で、モデルになった女性戦場記者と滅茶苦茶そっくりな発声で役を演じ切ったロザムンド・パイクさん。
「ゴーン・ガール」で、私の宿痾である女性恐怖症を悪化させた方。
ただ、この人、演技がうまいのか下手なのかわかりません。まったく表情がないので。
本作では、おそらく覚せい剤のようなアッパー系の薬を飲んで、自分を持ち上げながら果敢に行動する女性という役どころ。
でも最終的には彼女も壊れてしまう。
その演技が素晴らしかった。
特に電話のシーンでの、話し方の抑揚の無さ、変な間の取り方は絶妙。
見どころ3。
サンダーボルト作戦。
突っ込みどころはいろいろあるでしょう。でも、突撃シーンをクローズアップした映画ではないですし。
私的には、相変わらずの微妙な責任の押し付け合いや、現場の軍人さんが低空飛行で待機させられているあたりが、うわー、大変だーと興味深く拝見しました。
確か領空侵犯しての出撃だったので、それぞれの国といろいろあったとはずだと思うのですが、その辺はカットされています。
低空飛行なのは、レーダーに引っかからないため=領空侵犯がばれないためなのですが、それでもいつ撃ち落されるかわからない。
それから低空飛行は地面との間で乱気流が発生して、飛行機がとにかく激しく揺れる。
誤って地面や水面に接してしまうと墜落です。本当に危険。
とんでもなく揺れるために、さすがの歴戦の兵士たちも、機内でげーげー吐いている描写があってリアルでした。
最後。
すべての人々がカットバックされる。
政治家さん、テロリストたちと人質(作戦直前は、人質さんたち結構リラックスしている雰囲気で、テロリストたちの方が変にピリピリしているように描写されていました。どっちがメンタルやられてるんだという感じ)、軍人さん、ダンサー。
作戦行動の切迫感を、戦闘描写ではなく頻繁なカットバックで出そうという演出でした。
これもご批判があるようですけど、戦争映画ではないから、私はこれでよかったと思います。
そして、作戦中、一人だけイスラエル兵が死亡。
ああ、兵隊さん、被害者いたんだ。
でも一人か。
作戦としては大成功だよな・・・・・と思って、ラストの字幕で、亡くなった兵隊さんの名前を知って驚きました。
ところで、ダンスで倒れたのは「誰」か?
一人だけ殺された兵隊さんかもしれない。
ほかの可能性は?
ダンサーは、倒れ続ける彼女以外は、みんなが服を脱ぎ捨てている。
一人だけ、服を脱ぎそこない、執拗に繰り返し倒れ続ける。
服装が「そのままであり続ける」、あるいは「同じ行動を続ける」。
つまり「過去を捨てられない」誰か。
ユダヤ人への罪責感から逃れられないドイツ人テロリスト?
子供たちを殺されたという過去から逃れられないパレスチナ人たち?
死んだ兵隊さんを忘れられないその遺族?
ところで、ダンサー、15人います(たぶん。子供1と何回か数えましたが、数え間違いなら、以下、私の完全な勘違いです)。
調べると、現イスラエル首相は17代目ですが、複数回なった方もいるので、実際になった人は計12名。
何度も倒れるダンサーは右から数えて12人目です(たぶん。同上で、以下略)。
二つの可能性。
イスラエルの首相は13人目以降が「まだ、存在していない」。
12人目が「同じことを繰り返しているだけの人」で先に進まないから(舞台上に、13人目以後はいるけど、あくまで「将来のあるべき姿」ということで)
もう一つ。
11代目の首相は「先へ進んだ」(有名な話です)。
しかし13代目はどうか。
つまり11代目と13代目の間の<12>は裂開そのものといえる。
現イスラエル首相が右寄りなのはご存知かと思います。
ナタリー・ポートマンさんが、この人を理由にして、ある賞を辞退したのがニュースになりました。
まま、私の得意なノイローゼ的鑑賞かもしれません。
私がダンサーの数を数え始めた途端、「ああ、いつものパパの映画の見方だね」と子供1に突っ込まれました。
あ、でも、一緒に人数の意味を考えてくれましたけど。ありがとう、子供1(泣)
でも「今」とつながらないと、この事件をわざわざ戦争映画ではないテイストで、なぜ「今」作ったのか、わからないじゃないですか。
(ネットで調べると監督さんのインタビューが。やはり「今」を描きたかったようです。私の感想が穿ち過ぎかは不明 → https://cinemarche.net/interview/jose-padilha/#42
個人的には意外な面白さをもった映画だと思っています。
まま、強くお勧めするかといえば、うーん・・・・・
人を選ぶ映画かも・・・・・
ジョゼ・パリージャ監督「エンテベ空港の7日間」 原題 7 Days in Entebbe 米英合作 2018年公開 2019年日本公開