週末。

 「外出は控えて」とのことなので、私だけマスク着用で、レンタル屋にさっと行って、さっと借りてきた映画。

 子供たちも見たいと言っていたので、一緒に鑑賞。

 

 こども3、あまりにも怖かったのか、そのうち鼻歌交りに、ウルトラマンの人形を片手にもって退場。

 子ども2、涙目で最後まで黙ったまま鑑賞。

 子供1、「これは何を意味するのか」と私と議論しながら鑑賞。

 

 最初、宗教的な意味(エレミヤ記が出てきたり、キリスト教以前の原始宗教がモチーフっぽいお化け屋敷のようなものが出てきたり)があるのかな、面白そう!と思って観ていたのですが・・・・だんだん、あれれ?でした。

 

 

 さて、この映画、意味ありげなものであふれているのですが、その辺の解釈は他のサイトでいっぱいあるので、ご覧くださいませ。

 ここでは、他サイトにあまりない(ので、おそらく我が家だけの妄想)、感想を。

 

 ネタバレにしないように注意しますが、どうしても触れる部分があると思うので、未見の方はご覧いただいた後に、どうぞ。

 こういう「妄想」もありかと思っていただければ。

 

 

 

 

 

(始めますね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あの人たち」たちが出てきたとき、まず子供1と議論になったのが、「なんで赤い服?」「なんではさみ?」でした。

 私は、最初、宗教的象徴に捉われていたので、その線で見ていました。たとえば・・・

 

 *アデレードが少女時代、お化け屋敷(?)の「マーリンの館」(みたいな名前)へ。

 → マーリンは、ご存知アーサー王伝説に出てくる魔術師。アーサー王物語って、キリスト教と、ケルトもしくはドルイド教との闘いという意味を重ねていたはずです。先住民の宗教と、侵入してきたローマ軍の持ち込もうとした宗教の争いですね。

 

 *お化け屋敷に入る直前に、アデレード、リンゴ飴を落とす。

 → リンゴは知恵の実ですよね、キリスト教的には。

 

 *隣人家族の旦那の名前が「ジョシュア」(ユダヤ人の名前ですね)だったりとか、アデレードの旦那の名前がゲイブ(調べると、大天使ガブリエルが語源)

 

 *ウサギさんはイースターかも。

 → イースターって、キリスト教+原始宗教割る2ですよね。

    キリストの復活と収穫の願掛けの祝い。

 

 *音楽が「キリスト教以前」ぽい。

 → 要は「AKIRA」とか「攻殻機動隊」っぽい。

 

 なので、赤と宗教?・・・・どういう意味?と考えていたのですが、一方で隣人の奥さん(か娘?)の名前が「オフィーリア」だったり(なぜ「ハムレット」?)、あれれ?と訳がわからなくなっていました。

 

 で、「あの人たち」が手をつないで人々が数珠つなぎになっているところで、「ああ!」と。

 (でも勘違いでしたけど。本来の意味は、1986年にHands across Americaという「ホームレスを助けよう」運動があったので、それを「あの人たち」がやっているということだったようです。でも、我が家の妄想は続けます)

 

 

 「赤い人たちの結束」

 つまり、共和党です。

 ということは・・・そう、トランプ大統領支持者の皆様。

 ハサミは「分断する道具」。

 それが金色なのは、トランプ・タワーが、お前は秀吉かというくらい、金を使っていることかなぁと。

 

 あと、数珠つなぎの人々、ずーっと海に向かってつながり、ラストでは山の中でもつながっている。

 アメリカの地図で調べると、舞台のサンタクルーズのビーチは南向きなので、東西に分断しているように見えますが、サンタクルーズの西、つまりカリフォルニアとネバダの州境に山脈があります。そこを通っているとすれが、南北の分断です。

 アメリカは深南部は共和党支持が多いですよね。

 あるいはカリフォルニアは青い州だけど、西に平行移動すると赤い州になります。

 南北、東西どちらでもよさそう(調べると、カリフォルニアは山脈が東西、南北どちらも横切っているものがあります)。

 

 

 というわけで、我が家的には「あの人たち」は、「アメリカ人の心の中にあった、本音丸出しの姿」ではないかと。

 映画では、設定的にはクローンとか、SFぽかったです。

 ただ、私的には、要は「トランプ以後のアメリカ人」です。

 

 

 アデレードがいくマーリンの館の入り口には「Find your self」って掲示板がありましたね。

 あのお化け屋敷は、「己自身を発見するところ」なんですよ、きっと。

 だから鏡の迷路があった。

 己を映す鏡が。

 

 もうポリコレとかうんざりだ!

 フェミニズムとかくそくらえ!

 アジア人も黒人もユダヤ人もアラブ人も出て行け!ここはWASPの国だ!

 キリスト教を信じないやつは出て行け!

 メキシコにでも行っちまえ!(アデレードが言った「メキシコに逃げましょう」は、ブラックジョークに思えました。アデレードたちがアメリカとメキシコ国境にトランプが作った壁で戸惑っている姿とか思い浮かべたりして)

 学者やインテリのいうことなんか信じるか!(「あの人たち」は言葉をしゃべらず、うなるだけですよね。教育を受けていない。アメリカに根強くある反知性主義は昔から指摘されていますが、本当かどうかはともかくトランプ現象とアメリカの反知性主義の関係もよく議論されるところです)

 

 (4月14日追記:最近、ニーチェの「ツァラトゥストラはかく語りき」を読んでいたら、第二部にクモのことが書いてありました。本作でもお化け屋敷でクモがでるし、アデレードの目の前にクモがいるシーンがあります。なんの意味かなと思ったのですが、ニーチェは「毒クモ」を「平等を正義と考える」人々として描いていました・・・おっと、サンダース候補が優勢な民主党のこと?)

 

 

 

 一方、主人公一家は富裕層でインテリ。

 旦那さん、ハワード大学(黒人の名門大学)のシャツ着てるし、いきなりボート買っているし。

 アデレードも、時間があると本読んでいたりして、インテリっぽいです。

 そもそもアデレードという名前、調べてみるとドイツ系の名前で「高貴な」という意味だそうです(ちなみに、アデレードから派生する名前が、ハイジとアリスだそうです。おおっと、ウサギさんもここから出てきてもおかしくないです。地下にいっちゃうしね)。

 

 

 あと「右手だけ革手袋」ですが、やっぱり「right wing」ではないでしょうか。

 多くのサイトで、マイケル・ジャクソンの恰好では、という説が多いのですが(そうかもしれません)、ただ、白人一家も右手に手袋でした。

 あと、「エレミヤ 11:11」おじさんのもう一人の方は、手袋してません。

 だから、私はマイコーじゃないと思うんだけど・・・・まま、白人だから違うという説明もありだけど(でもジョシュア家に来た「彼ら」は手袋してた)。

 かわりに、右手から血を流していました。

 「血に汚れた」右手です。

 

 

 なので、やはり、トランプ以前のアメリカと、自由と平等とチャンスの国、アメリカじゃなかったっけ?と変貌したトランプ以後のアメリカが、「入れ替わった」という映画では・・・・と。

 

 

 そうなると、監督がどこかで言っているらしい「手をつなぐ運動に偽善性を感じた」こととつながる気もするのです。

 かつてのアメリカでは「ホームレスを助けよう!」という主張で、(監督の感じた)偽善的な運動としてhands across Americaを行った。

 今のアメリカは「白人以外はどこかに行け!」という主張で、偽善さえも捨ててて、身も蓋もない露悪的な行動、アメリカを分断する行動として、結束している人たちがいる。

 

 

 …というわけで、怖いのは怖いのですが、でも、とぼけた雰囲気もある映画でした。

 お父さんのピントのずれた、役にたたない言動(「お父さんがいい味だしてる」が子供1との共通意見でした)。

 あと、さっきも書いたアデレードの「メキシコに逃げよう」とか、<置き鍵>といういかにも育ちの良い習慣が裏目に出た時のお父さんの台詞、「お前は、白人か!」とか。

 ちょこちょこ笑えて、私はブラック・コメディーとしても楽しめました(←私の頭がアレなのでしょうか?)。

 

 たとえば末っ子のジェイソンくん。

 ジェイソンといえば、ホラー映画では、白い汚いつなぎを着ている彼ですね。

 他のサイトでも、つなぎを着ているつながりで「13金」との関連性を指摘されています。

 でも、調べてみると、ジェイソンって名前はギリシャ神話の英雄イアソンから来ているのですね。

 そうだとすると、「もう一人」のジェイソンくんの名前がプルート(ローマ神話で冥界の王ですね)なのが、府に落ちます。

 最初、名前が違うのが不思議でしたが、ギリシャ・ローマ神話つながりだと思えば納得。

 

 で、ジェイソン君の「もう一人」のプルート君。終始、犬っぽいんですよ。

 これもブラック・ジョークですよね、たぶん。

 だって、絶対、ミッキーマウスのプルートでしょう?

 

 

 いやー面白かったです(我が家的には、こうやっていくらでも妄想できるのが「面白い映画」です)。

 (追記 町山さんが、別の観点から解説なさっています。https://eiga.com/news/20190917/19/ ・・・・あら、やっぱり、私の考えすぎかなあ・・・。でも妄想は楽しいので、このままにしておきます)

 

 

 

 ほかには昔見た映画ばかり借りていたので、あとは子供たちとボードゲーム大会でした。

 こういう週末もいいですね。

 

 

 

 

ジョーダン・ピール監督「アス」   原題 Us   2019年制作、日米公開