私の勤務する病院は、現在、東海地方では唯一の、埋込型補助人工心臓の実施認定施設である。ある意味、技術力の高さが評価されて、認定されているわけで、喜ばしいことではある。
先週、東京の某大学病院の有名な教授をお招きして、埋込型の人工心臓の講演をしていただいた。今後の埋込型の人工心臓の実施にむけての準備ということもある。
内容は、国内で承認された、国産の人工心臓、「EVAHEART]である。

本当に小さくなっただけでなく、なかで血栓が発生しない、また出力も十分にあるということで、
実に素晴らしいものができた。
そもそも、左室の補助として、心臓移植までの橋渡し的な役割で承認されているのであるが、
実際に、日本ではそれほど、心臓移植が行われているわけではないので、
橋渡しといっても、これで数年しのいでもらうことも多くなる
結果的には、長く装着されて補助人工心臓をつけながら生きながらえるという、
一時的な使用ではない最終目的としての使用になってきているというも、日本ならではのことである。
そして、それが皮肉にも、この日本製の人工心臓が、長期使用にも耐えることを証明することになったという。
長年、心臓移植を待てずに亡くなっていった人に、たいへんな福音となる。
医療の技術、科学の進歩というのは素晴らしい。
日本のものづくり技術も捨てたものではない。
・・・と両手をあげて絶賛したいところであるが、
一方で大きな問題がないわけではない。
値段である。
一式、1800万円なり。
そして装着の費用、術後の管理なども入れれば、
装着した年の一人あたりの一年の医療費は、おそらく軽く3000万円は超えてくるであろう。
いまは、適応を絞って、年間100例くらいになるように制限しているという。
しかし、これが評判になり、中高年の虚血性ならびに、後天性の弁疾患による心不全などにも適応を広げていくことになるのは目に見えている。
そもそもが移植までのつなぎであるから、移植の適応年齢である、60歳以下というのが現在の適応年齢である。しかし、移植も今回法改正があり、適応年齢を65歳に引き上げることになるという。
そいうなると、移植に連動している、補助人工心臓も適応年齢は上がる。
対象となる人もどっと増えることになる。
これから適応が広げられると、おそらく容易に10倍にはなるだろう。
医療費はいったいどうなるのか。
だれが払うのか。
今年も医療費は37.8兆円となり、過去最高を年々更新している。
しかるに、税収は減る一方。このままでは30兆も切るのは時間の問題だろう。
いまの税収では医療費すら賄えないのである。
誰が医療費を払っているのか?
ほかならぬ、国民自身。
国は出しているといっても、税収で足りない部分は赤字国債を発行して
一部負担しているだけ。
残りは、結局、国民個人が負担している。
しかも、それは、すくなっている現役世代の給料から差し引かれているのである。
これから増えていく、高齢者の医療もすべて、現役世代の給料から差し引かれている。
国が発行した赤字国債で将来の世代に借金を積み上げ、そこから支払っているのが
現在の医療費である。
そんななけなしの、というかもう、赤字で出処もあってないような、日本の医療費から、
こんな高額な医療がどこまで許されるのか。。。。
非常に由々しき問題である。
というか、もう、破綻しているとしか言いようがない。
その点を質問すると、その教授いわく、「透析医療にはもっとケタ違いのお金がかかっているので、それにくらべれば、微々たるものです」と。
まったく議論になっていない。
開発に携わってもいるので、そんな否定的なことは言えないのはわかるが、
もっと、根本的に対策をしないといけない。
せっかく、国産なのだから、日本の強みである技術にものを言わせて、
いまの10分の一くらいの値段でできるようにしたらどうだろう。
そうなれば、多少、適応患者が増えてもそれほど痛くなくなるだろう。
数をこなしていけば、それなりの安全に手術をするノウハウも全国的に広がることだろう。
さらには、これを一大輸出産業に育てることだ。
医療機器は現在、完全に欧米のメーカーにやられており、完全な輸入超。
年間6000億ともそれ以上とも言われている。
これを、ここらで、一発逆転させて、一気に、輸入超を輸出超に変えてやる。
それだけでも、かなりの財政への貢献にもなる。
すべては、医療政策、政策の後押しにかかっている。
まだまだ、日本の生き残る道はたくさんあるのだから、いまから、積極的に、
そうした数少ない生き残れる道に資源を集中していかなくてはならない。
しかし、行き着くところまでいかないと、だれもいまのぬるま湯から抜けだそうとはしないのだろう。人間の弱いのは、洋の東西、否、ギリシャも日本も変わらないかもしれない。