2022(28)2022/2/9観:WOWOW放送
『楢山節考(ならやまぶしこう)』 1958年 日本映画 98分
原作/福澤七郎
監督・脚本/木下恵介
製作/小梶正治
撮影/楠田浩之
美術/伊藤憙朔×梅田千代夫
長唄/杵屋六左衛門
浄瑠璃/野沢松之輔
編集/杉原よし
衣装/杉山利和
【キャスト】※1983年版と並記
おりん(元気だが「お山入り」を決意する)/田中絹代×坂本スミ子
辰平(おりんの長男)/高橋貞二×緒形拳
玉やん(辰平の後妻、気立てが良い)/望月優子×あき竹城
けさ吉(辰平と前妻の長男)/三代目市川團子×倉崎青児
松やん(けさ吉のできちゃった嫁)/小笠原慶子×高田順子
又やん(隣家「銭屋」、「お山入り」を恐れる老人)/宮口精二×辰巳柳太郎
銭屋の倅/伊藤雄之助×深水三章
照やん(村のリーダー、「お山入り」)の作法を伝授/三津田健×殿山泰司
雨屋(飢えの為に盗むを働く)/鬼笑介×横山あきお
飛脚/東野英治郎
村人/西村晃
【あらすじ】70歳になると楢山参り(姥捨)の仕来りがある山村の老女おりんとその息子が軸となるストーリー─────────────────────────────────────────────『楢山節考』 1983年 日本映画 131分
監督・脚本/今村昌平
製作/友田二郎
撮影/栃沢正夫
編集/岡安肇
美術/吉野尹孝
音楽/池辺晋一郎
※感想記事(&1983年版の他の出演者)はこちら↓
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ほぼ10年前にイマヘイ版の感想を書いた頃は、木下恵介版を観ていませんでした。
(その後WOWOW放送録画して永久保存に♪)
本作は原作も読んでおり、木下版が忠実に描いているのが分かりました。
イマヘイ版は過去記事にも書いておりますが、深沢作品の別の小説を混ぜています。
故に、木下版の方が母と息子の物語に焦点を当てて分かり易くなっています。
イマヘイ版も決して蛇足の様な脚本には成っていませんが
衝撃的なエピを盛り込んでいる為、貧農の壮絶な状況がより迫って感じられました。
(長男以下の男子は奴隷として一生飼い殺しなど)
この二作品は殆ど同じ流れ、同じシーンを描き切っています。
それでも、木下版よりイマヘイ版の方が暗く重いです。
木下版では楽しい村祭りの様子も描かれていますし、
最も衝撃エピ「楢山様に謝らせる」(村での私刑)のシーンがソフト。
イマヘイ版は悪夢見そうなくらい恐かったです。
昔の映画では、酷いシーンは示唆する演出に留めるだけが多いですね。
私にはそちらの方が観易いです。
イマヘイ版では、主人公りんの孫けさ吉の彼女を
「楢山様に謝らせる」シーンで粛清される一家の娘とアレンジし
その時だけは慟哭しても、すぐさま別の娘と良い仲になってるという
過酷な状況で生きる逞しさなのか人間性なのか
薄情な孫息子に拍車がかかって描かれていました。
そんな祖母不幸者の孫を、木下版で生き生きと演じたのは
香川照之さんのお父さん(ニ代目 市川 猿翁)と鑑賞後で知りました。
また、二作品とも老父を谷底へ突き落す恐い息子が登場します。
「お山に行きたくない!(=死にたくない)」とあがく老父は
両作品とも名優が演じており上手過ぎる!(ゆえに悲惨さが増します!)
食べる事が生きる全てに直結する逼迫した暮らしなので
老人でなくても、夫が亡くなるとさっさと次に嫁ぎ先を紹介され
彼氏ができた娘はさっさと実家から追い出されるという
とにかく食い扶持を減らす事が当たり前に描かれているのも壮絶でした。
何より老後問題は人類普遍のテーマであり
突き刺さるエピソード満載の物語であります。
尚、生き抜く老人たちを描いた
『姥捨山には続きがあった』後日譚の『デンデラ』(2011年・監督/天願大介)
アラスカ先住民の『ふたりの老女』の記事も貼付いたします。