映画/ヒトラーに盗られたうさぎ(2019) | 心を湛(しずか)にゆるがせて

心を湛(しずか)にゆるがせて

ご訪問、ありがとうございます。
風森湛(かざもり しずか)と申します。
隙間を縫っての更新な為
空いてる時間に記事を書き溜め
UPしている状態です。
リコメ等 遅れがちですが
気長にお付き合いください。

2021(126)/2021/10/24観:WOWOW放送

『Als Hitler das rosa Kaninchen stahl ─ ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ』

2019年  ドイツ映画  119分

監督・脚本/カロリーヌ・リンク

脚本/アナ・ブリュッゲマン

原作/ジュディス・カー

製作/ヨッヘン・ラウベ

美術/スーザン・ビーリング

音楽/フォルガー・ベルテルマン

撮影/ベラ・ハルベン

編集/パトリシア・ロメル

衣装/バーバラ・グルップ

【キャスト】

アンナ/リーヴァ・クリマロフスキ

アルトゥア(父)/オリヴァー・マスッチ

ドロテア(母)/カーラ・ジュリ

マックス(兄)/マリノス・ホーマン

ハインピー(兄妹のばあや)/ウルスラ・ヴェルナー

ユリウス(父の友人、アンナの名付け親)/ユストゥス・フォン・ドーナニー

【あらすじ】1933年早春、ベルリンに住む9歳のアンナは、兄のマックスと共にカーニバルを楽しんでいた。翌朝アンナは「家族でスイスに逃げる」と母から突然告げられる。ユダヤ人で辛口演劇批評家の父は新聞でヒトラーの批判を続け、次の選挙でナチスが勝ったら弾圧されると忠告を受けていた。アンナは、大好きなピンクのうさぎのぬいぐるみや優しいばあやハインピー、ユリウスおじさんと別れを告げて育った家を離れる・・・。

────────────────────────────────────────────

絵本作家 ジュディス・カー(1923~2019)の伝記を基にした映画です。

劇中のアンナが幼い頃のジュディス自身。

つまり、これは逃げ延びたユダヤ人一家の物語なので安心しつつ観られました。

タイトルの意味は、主人公の少女が一家で家財一切を置いて亡命した為、

お気に入りだったももいろうさぎのぬいぐるみを手放した事を指します。

 

但し、先ずプラハへ逃げた父とスイスで一家落ち合い暫く暮すも

物書きである父は仕事の都合で「パリに行こう」とか言い出す!ガーン

ジュディス・カーを知らない私は「いやあああ!」とか叫びました(心の中で)。

フランスなんかに行くなよ!アメリカへ渡れってば!と。

 

そういったハラハラドキドキ(実際にかなりリスキーだったと想像します)の中で

子どもって逞しい。アンナが生命力に溢れた子だったという事でしょう。

行く先々で仲良しができるし、ちょっとからかわれても敢然と立ち向かえる。

スイスで10歳の誕生日を迎えた時は、大好きなばあやがベルリンからお祝いのTEL。

名付け親のユリウスおじさんは、アンナにハガキを定期的にくれる。

そういう愛された子どもだったゆえ、生きる力も強かったと思いました。

ベルリンの都会育ちの割に、裸足で走り回るはパンツ丸見えで男子の前で側転するは、

かなり野性的な少女アンナが魅力的です。

 

但し、ユリウスおじさんのハガキは子ども宛という体で

アンナの父にベルリンの様子を知らせる意味合いもありました。

だけど、自宅に「ももいろうさぎ」を置いて行かねばならなかったアンナの為に

デューラーの兎の絵葉書を送ってくれたり、おじさん本当に優しい。

そんなおじさんもユダヤ人なので運命は残酷でした。

ナチスは反対者をリストアップし旅券を抑えて亡命できない様にしたそうで

逃げ出せなかった人々が多かったと、この映画で知りました。

 

ベルリンでは裕福だったアンナ一家も、パリでは貧乏のズンドコを味わいますが

アンナは元気いっぱい。フランス語も何とか習得し作文で賞金10フランも獲得。

ママやお兄ちゃんは少し忍耐が切れますが、パパは食べ物で解決(笑)。

疲れたママには(子どもに内緒で)ガトーを。

妹に八つ当たりしてママに反抗するお兄ちゃんを外に連れ出して

庶民的ビストロでエスカルゴを食べさせる。お腹が満たされると人は落ち着けます。

これらのシーンは、パパの人柄を感じてほっこりしました。

 

現在見れば、強制収容所での悲惨な出来事と比較すると緩い話と思えましょう。

それでもやはり、安住の地を求めて転々とする当時は一家にとって苦しかったはず。

そんな暮らしでも幼い少女が元気でいられたのは、家族が一緒だったから。

悲惨な時代に幸運な家族も在って救われた思いがしました。

少女は児童作家に、お兄ちゃんは英国初の外国人で高等法院の裁判官に成ったそうです。