小話 理由のない不安 | さくらの日常

さくらの日常

徒然なるままに

 小学一年生だったころ、私は登校を渋っていました。誰かにいじめられることもなく、姉も通っているのにも拘らず、学校に行くことがとても怖かったのです。心の奥底から湧いてくる拒絶の感情から、当時新築だった我が家の玄関で思わず吐いてしまうこともありました。ですが、両親は学校へ行かせなければという思いで、なんとか私を学校へ連れて行きました。登校班でみんなと一緒に学校へ行けなかった私を祖母が連れていってくれたこともありました。無事に学校へ到着してからも、不安感を除くためにか特別に先生の隣に席を設けてもらっていたそうです。
 

 その状況を心配した両親は祖父に助けを求めました。この祖父は少し普通でないような力がありました。姉を除く家族全員で神棚の前に座り、お祓いのようなものが始まりました。すると、祖父は原因は岩にあると叫びました。普段は温厚な祖父ですが、この時の剣幕はとても恐ろしいものでした。
 

 当時新築だった我が家ですが、同時に庭も造っていました。そのときにいくつかの大きい岩が置かれたのですが、私はそのうちのひとつにひどく魅せられてしまったのです。奇妙なことに、小学一年生の女児が岩の魅力に取り憑かれ、毎日のようにひとりで庭に行き、登ったり、眺めたり、撫でたりしていたのです。今でもその時の不思議な感情をほんのりと思い返すことができます。
 

 それ以来、岩のところへ行くことをやめました。そして、普通に学校へも通えるようになりました。冷静に考えると、不登校の原因は単なる親離れができていなかったことにあるのかも知れません。ですが、我が家で私の不登校の昔話が出るたびにあれは岩の呪いやったね、とちょっとした笑い話になっています。