・批判機能と指導機能

財務諸表監査の内包する効果として批判機能と指導機能がある。
ここで注意したいのは、これらは並列な機能ではなく、「主たる批判機能と従たる指導機能」という位置関係が存在することである。

批判機能とは、極論すれば不適正意見あるいは意見不表明を指す。しかし監査はあくまで財務諸表の利用者の為のものである。投資意思決定を行う者にとって真に望ましいのは財務諸表に無限定適正意見が付されていることである。不適正意見の表明された財務諸表を利用できなくなるよりは、不適正として公表される以前に適正なものに修正されることを期待する。このニーズを満たすのが指導機能である。
また、企業にとっても不適正意見が表明されてしまえばその後の存続すら難しくなる(とは言え財務諸表監査はあくまで利用者のためにある)。現実的に言って好きなように財務諸表を作成し、決算の段階で会計監査を行い問題を指摘されたのではタイミング的にも修正は難しい。
こうした理由から不適正とするより前に、財務諸表の表示に問題のある箇所をその公表前に予め作成者に伝え、適正なものに修正してもらうことで適正意見を表明することが出来る。ただしこのような指導機能には当然強制力がないために一定の限界がある。監査の大前提には二重責任の原則が存在するからである。とは言え、幾ら強制力がなくとも「こうした処理は監査上認められないが、このように処理すれば監査上認めることができる」といったアドバイスは粉飾指南とも解釈されかねない。それゆえ、経営者は監査人の指導・助言を拒否することができ、指導機能は批判機能を支える従たる関係にある、といった位置づけを意識することが重要である。