もう一度おさらい。

1株当り当期純利益(Earnings Per Share、EPS)とはその名の通り利益を株の数で割ったものである。正確には

EPS=普通株式に係る当期純利益÷普通株式の期中平均株式数

である。純利益からは優先配当額を、株式数からは自己株と優先株を控除して計算する必要がある。これらを加味すると

EPS=PL当期純利益-普通株主に帰属しない金額 / 普通株式の期中平均発行済株式数-普通株式の期中平均自己株式数

といった式であらわされる。

[設例]
1.会計期間はH21.4.1~H22.3.31である。
2.H21年度の当期純利益は10,000千円であった。
3.普通株式数の状況

・期首の発行済株式 500,000
・期首の自己株式 100,000
・H21.7.1の新株発行 80,000
・H21.10.1の自己株式の取得 50,000
・H22.1.1の自己株式の処分
・H22.3.1の自己株式の消却

4.配当優先株式(非累積型)
・発行済株式数 30,000
・H21年度末日を基準日とする剰余金の配当にかかる優先配当額 300千円

5.1株当り当期純利益の算定に当っては、株式数について1株未満を四捨五入。また金額について単位は円とし、小数点2位未満を四捨五入

[解答]
原則として日数按分であり、容認法によるとの明確な指示があった場合は月数按分する。


?利益を「普通株主に帰属するもの」と「そうでないもの」にわける

PL当期純利益10,000千円-優先配当額300千円=9,700千円


?普通株式の期中平均発行済株式数を算定する。
資料にはa.普通株式、b普通株式(自己株式)、c.優先株式がある。ここで知りたいのはaの普通株式のうち流通しているものの期中平均数である。

500,000×365/365=500,000
80,000(7.1から3.31まで)×274/365=60,055
60,000(1.1から3.31まで)×90/365=14,795

まず500,000については期首段階で発行済の(つまり市場に流通している)株式である。これはそのまま1としてカウントできる。
ただし期中に新たに市場に流通することになった株式は、日数按分して当期純利益と比較する必要がある。そもそもPL当期純利益とは一会計期間における利益=期間情報である。これを例えば期末時点における発行済株式総数などの時点情報と比較しても無意味である。このために現在計算しているのが期中平均株式数である。

よって中段の80,000株については、7月1日に発行して翌年3月31日までの期間、市場に存在していたことになる。この期間は日数ベースで274日である。

同様に60,000株について。これは新株発行ではなく自己株処分のケースである。以前にも学習したことだが、自己株式の処分は新株の発行と経済的実態を同じくする。会計が経済活動を公平な視点でもって数値に落とし込むことならば、当然同じ処理が適用される(もちろん仕訳は違うけど)。ここでいう「新株発行と同様の経済的実態」とは『株式が新たに市場に流通すること』である。EPSは市場に流通している普通株式をベースに算定される。そうであるならば、処分された(再度流通した)自己株60,000は、その流通期間(90日/365日)を乗じて、当期の純利益との比較対象になるのである。

さらに同様の理由から、取得した自己株も期間に応じてEPSの算定上控除する必要がある。ここでも重要なのは市場に流通しているか否かの一点である。つまり『取得した自己株式を保有しようが消却しようが、「市場に流通していない」という点ではまったく同じこと』なのである。

資料には10,000株の自己株についての消却が示されているが、この消却された10,000株についてはEPSの算定上なんら影響を持たないということになる(要するにひっかけです)。

?普通株式の期中平均自己株式数の算定
当期中に取得した自己株式は50,000、保有期間は182/365日であるので、24932株については控除項目となる。


以上より、

普通株式に係る当期純利益=9,700千円

普通株式の期中平均株式数=449,918株

EPS(1株当り当期純利益)=9,700,000÷449,918=21.56円