前回みたように、通常の1株当り当期純利益(以下EPS)潜在株式調整後のEPSは異なるものである。これは単純に名前通り、潜在株式を考慮するのかしないのかといった違いである。

ただし考慮するといっても、そもそもEPSは一般に有報と共に開示される情報である。当たり前のことだが潜在株式は、期末時点では未だ潜在株式なのであって、この潜在株式としてカウントされているワラントや転換証券が今後どのように顕在化するかは誰にも分からない。つまり「調整」とは言え、将来事象についてのことなので、要するに予測である。それではどの程度の潜在株式が普通株式として流通すると仮定するのか。

これは結論を言えば全てである。株価や権利行使価額などは度外視して、普通株式となりうる全ての潜在株式が普通株式となった場合を仮定するのである。

EPSの算定式が

普通株式に係る当期純利益/普通株式の期中平均株式数

だったのに対して、潜在株式調整後のEPSは

普通株式に係る当期純利益+当期純利益調整額/普通株式の期中平均株式数+普通株式増加数

さて上で書いたように、分子の普通株式増加数を何株とするかについては、全ての潜在株式が普通株式となった場合を考える。

次に分母の当期純利益調整額。こちらも全ての潜在株式が権利行使されたと仮定した場合の潜在株式に係る損益の調整額である。潜在株式の権利行使に由来する損益がどのようなものかは次以降で見ていく。

ここで重要なのはどのタイミングで権利行使されたと仮定するかである。純利益が一会計年度の結果であるのに対して、期末時点での株式数を比較しても非合理であることは以前説明した。そもそも潜在株式調整自体がある意味で保守的な思考であることからも分かるが、これは最も早いタイミングで権利行使されたと仮定する。言い換えれば、最も希薄化の度合いが強いタイミングである。具体的には以下の二つのケースに分けて説明できる。

?潜在株式が期首に存在する場合=期首における権利行使を仮定
?潜在株式が期中に発行された場合=発行時における権利行使を仮定

例えば、期首段階で存在する潜在株式数が100であれば、期末時点でのEPSの調整において普通株式増加数は100であるし(優先株とかはないものとします)、半年経過段階で発行された潜在株式100であれば、調整時には50の増加数とされる。

あるいは、潜在株式が期中に消滅、消却、償還、満了した場合も、その時点までは存在していたものと仮定して調整する。とにかく、投資家に取って最も不都合なケースを想定して計算するのが潜在株式の調整である。