1.H21年度期末に国庫補助金3000を受取、機会9000を取得した。圧縮記帳を行い、税務上3000の圧縮損を損金算入した。
2.上記機械については、会計上・税務上ともに定額法(残存価額ゼロ、耐用年数3年)により減価償却を行う。税効果会計に適用する実効税率は毎期40%とする。

[解答]
前回の復習。
補助金の処理は、会計上の直接減額方式と税務上の処理は同一のものである。
これらの方法に依った場合、特別利益である『国庫補助金受贈益』を、同額だけ『~~圧縮損』として費用計上することで、課税所得(および税引前当期純利益)を調整し、税金を繰り延べることが出来る。
「税金を繰り延べる」ことが出来る根拠だが、国庫補助金受贈益に対して圧縮処理を行わなければ当然この利益にも課税されてしまうからである。また、この処理の特徴は圧縮損の相手勘定である。
税務上及び直接減額方式では、名前の通り貸方で取得した固定資産(土地や備品)を直接減額する。
直接減額した結果、資産の帳簿価額は実際よりも小さいものとして記帳され、それによって毎期の原価償却額、つまり費用計上も小さくなる。毎期の費用が減少するということは課税所得が増大するということである。圧縮記帳による固定資産の直接減額は、以降の課税を大きくすることで、補助金に対して一時に課税せず税金を繰り延べる効果を持つ。

・直接減額方式による会計処理
取得:(借)機械 9000 (貸)現金預金 9000
補助:(借)現金預金 3000 (貸)国庫補助金受贈益 3000
圧縮:(借)機械圧縮損 3000 (貸)機械 3000
※これは税務上と同一の処理である。よって圧縮後の機械の簿価や減価償却費(つまり翌期以降の簿価)に差額は生じない。一時差異が生じないため税効果会計も必要としない。

積立金方式による会計処理
取得:(借)機械 9000 (貸)現金預金 9000
補助:(借)現金預金 3000 (貸)国庫補助金受贈益 3000

※上が積立金方式による処理である。しかし税務上の処理は直接減額方式によるものである。よって機械の簿価や減価償却費に差異が生じている。下に積立金方式による処理と税務上の処理を示す。左が積立金方式、右が税務上処理である。


減価償却費 圧縮損 簿価 減価償却費 圧縮損 簿価
H21年度 0 0 9000 0 3000 6000
H22年度 3000 0 6000 2000 0 4000
※機械の取得や補助金受贈はH21年度期末であるので、ここではDEPは生じない。

この時点で生じている差異は、会計上のみ計上されている国庫補助金受贈益3000(税務上は圧縮損により相殺)と、機械の簿価3000(簿価:会計9000、税務6000)である。この状態でまず税効果会計を適用する。会計上の方が資産および収益が大きいということは、本来納付する税額よりも会計上の計算によって算出する税額の方が大きいということである。これは税金の後払いであるため将来加算一時差異、つまり後払いする分の負債を計上しなければならない。
一時差異3000×税率40%
(借)法人税等調整額 1200 (貸)繰延税金負債 1200

次に行う処理が積立金方式の特徴だが、それが『圧縮積立金の積立』である。
圧縮積立金の積立額=将来加算一時差異-税効果相当額
となる。まずは仕訳を示すと
(借)繰越利益剰余金 1800 (貸)機械圧縮積立金 1800
となる。
ややこしいので以下で詳しく解説する。
直接減額では機械という資産を(税務上も会計上も)3000減額することで、補助金を課税対象から外した。積立金方式では、機械を減額しない。ここで会計上と税務上の簿価に一時差異が生じる。
一時差異の原因となっているのは、税務上の機械の簿価が会計上の機械の簿価を上回っている、という事実である。
繰越利益剰余金、つまり資産を3000減らすことで、直接減額と同等の効果を得ることができる(純資産だけど)。

あまりないケースだが会計上の資産の簿価が税務上の資産の簿価を上回る為、将来加算一時差異が生じる。ここで当期の税額が(会計視点で)減少する。この減少分と圧縮額の差額を繰越利益剰余金で補うことにより、圧縮額の全額を費用化したことになる。

・H22年度の処理
もう一度情報をまとめる。
機械:取得9000(H21年度末に取得)
減価償却:3年、残存ゼロ
国庫補助金受贈益:3000
ただし積立金方式による処理なので、将来加算一時差異が生じている。H21年度期末の税効果会計の処理は以下の通り。
(借)法人税等調整額 1200 (貸)繰延税金負債 1200(固定負債)
(借)繰越利益剰余金 1800 (貸)機械圧縮積立金 1800

次に22年度決算時の減価償却。簿価9000/3年
(借)減価償却費 3000 (貸)機械減価償却累計額 3000
ただし簿価の相違から税務上の減価償却費も異なる。
・税務上の減価償却[(借)DEP 2000 (貸)累計額 2000]
これにより償却後の簿価も当然差異が生じる。償却後は会計上が6000、税務上が4000である。
ということは22年度末に将来加算一時差異が2000生じている
税率を乗じて、あるべき繰延税金負債は800であるが、前期末に1200を繰り延べている為、今回は相殺する処理を行う。
(借)繰延税金負債 400 (貸)法人税等調整額 400

さらに「圧縮積立金の取崩し」の処理を必要とする。
この算定には二種類のアプローチが考えられる。まずは先にも触れた
『圧縮積立金=一時差異-繰延税金負債』という算式である。
H22年度末の一時差異は2000、繰延税金負債の残高は800、つまり1200がH22年度末にあるべき圧縮積立金の残高ということになる。
しかし圧縮積立金も既にH21年度末に計上済みである為、差額部分を調整計算するという手続になる。
H21年度に計上された圧縮積立金は1800であるため、H22年度のあるべき残額1200を調整しているため、取崩しの処理が必要となるのである。
(借)機械圧縮積立金 600 (貸)繰越利益剰余金 600

これにより繰延税金負債の残高800+機械圧縮積立金の残高1200の合計が一時差異2000と等しくなり、税額を調整することができる。これがひとつめの計算法である。

次にふたつめの計算法。これは圧縮積立金を固定資産の耐用年数と同年数で全額償却するというものである。H21年度の圧縮積立金の積立額は1800/耐用年数3年は、一年辺り600の取崩額となる。
(借)機械圧縮積立金 600 (貸)繰越利益剰余金 600
こちらの処理によった方がいくらか簡便な気がするが、両方とも完全に理解することが望ましい。