~ストックオプションの会計処理についての復習~
まずストックオプション会計のプロセスを大きく2つに分けると以下のようになる。
(※SO=ストックオプション)
・権利確定日以前の会計処理
1.従業員から取得するサービスを費用として計上
2.対応する金額を「新株予約権」として計上
・権利確定日後の会計処理
通常の新株予約権と同等の処理
ではまず前者の「権利確定日以前の会計処理」について復習。
まず最も基本となる会計処理というか仕訳。
『(借)株式報酬費用 (貸)新株予約権』
借方の株式報酬費用は従業員の用役に係る費用であるからPL上の「販管費」である。また、新株予約権はBS上「純資産」の部に属する。
従業員から取得するサービスはその取得に応じて費用計上し、対応する金額をストックオプションの権利の行使又は失効が確定するまで「新株予約権」として計上する。
感覚的には、従業員の用役に対して支払われる給料に代わって「新株予約権」を積立てておき、これが使用される/失効する時点をもって取り崩すような感じだろうか。
例としてH21年7.1に75名にSOを付与した。SOの公正な評価単価は1個当たり8円、SO行使時の払込金額は1株当たり75円だとする。このSOの権利確定日がH23年6月末、つまり2年後であるとする。この場合75名分のSOを(借)株式報酬費用(貸)新株予約権を計上するわけであるが、これは従業員の「用役に対応して発生する費用」である。そしてこれらの費用計上のタイミングは基本的に会計期末である。
このケースでは権利確定日までに2回の決算を挟み、さらに2回目の決算後に係る用役が3か月分(4,5,6月分)あるので、合計3回分費用計上する機会がある。
さて費用の計上額だが、まず全体のSOの価値を求める。この際に使う数字は1.何名にSOを付与するのか、2.一人当たり幾つのSOを付与するのか、3.SO一個当たりの評価単価は幾らか、などである。
一般に付与日から権利確定日までは一定の期間が設けられている。この期間を対象勤務期間と呼ぶが、この間に退職する見込みのある人数を計算上考慮する(差し引く)ことにも注意が必要である。そもそもミスディレクトしたいのでもない限り無関係の数字は資料として与えられないはずである。では上の例を継いで以下で具体的な数字を代入してみる。
・一人当たりに付与されるSOは160個、1個当たりの公正な評価単価は8円、H23年6月末(つまり権利確定日)までに7名が退職見込みであるとする。この場合まずは権利確定する見込みのSO数を算定する。
(75名-7名)×160個=10,880個のSOについての権利が確定する見込みである。このSOの単価は1個当たり8円、よって10,880個×8円=87,040円が権利確定する見込みのあるSOの総額である。繰り返しだがこの87,040円は労働対価(のようなもの)である。そしてこの労働対価は『H21年7月からH23年6月末に係るもの』であるから、期間に対応して配分する必要がある。
・ではまずH21年度(7.1~3.31)までに費用かされる額を算定してみる。初年度は単純な期間配分でよい。労働対価の総額87,040円(対象期間中の退職者に係るものは除く)は対象勤務期間24ヶ月の労働対価である。付与されてから当期末までは9ヶ月(7月~3月末)、つまり9ヶ月/24ヶ月を乗じて32,640円が当期分の株式報酬費用/新株予約権となる。
・では次にH22年度(4.1~3.31)を見てみる。ただしこの会計期間中に将来の類型失効見込みを6名に修正したものとする。上で書いた条件ではSOが付与された75名中7名が退職により失効すると見積もったが、この見積退職者数を6名に修正した。この場合、権利確定する見込みのあるSO数が変更されるわけであるから、この根本から修正することになる。一人当たりSO160個×(75名-6名)=11,040個である。SO数が変われば当然SOの公正な評価額(単価ではなく総額)も変動する。評価単価8円×11,040個=88,320円である。これがH22年度末における「将来支払われるSOの価値の総額(見積)」である。ただし見積の総額が如何に変わろうと、前期末に32,640円の株式報酬費用及び新株予約権は計上済みである。
次がこのストックオプション会計における費用計上の最大の特徴であるが、「見込みの修正があった場合、当初より修正後の数字で計算していたかのような費用の算出の仕方をする」という計算式である。
これがどういうことかを説明するが、前年度に計上した株式報酬費用/新株予約権は32640円。これは失効見積7名に基づく9/24ヶ月分の労働対価である。しかし当期末において失効見積が修正され、SOの評価額(総額)も前年度87,040から88,320に修正された。この修正後の評価額に基づいて全体に期間配分(ただし計上済みの部分は引き算)を行う算定法である。
修正後のSOの公正な評価額88,320×21ヶ月/24ヶ月-前期までの費用計上額32,640=44,640(当期に費用化される用役に基づくSO)
特徴は、決して『修正後のSO評価額から前期までの計上額を差し引いてから期間配分』するのではない。そうではなく、『付与日から現在に至るまでの費用を先に期間配分したのちに前期末までの計上額を差し引く』のである。これが先に述べた、「当初より修正後の数字で計算をしていたかのような振る舞い」である。これを念頭に、以下では更に条件の変更を加えて処理をしてみる。
・H23年6月末までに実際に退職したのは5名であったとする。この場合は更に有効SOの数そのものから変更が加えられる。
(75-5)×160個×@8=89,600(SO総額)
89,600×24/24-(32,640+44,640)=12,320円
最終的にはSO数を権利確定数に一致させる。上の式では一応全体としての期間配分も記述しているが、単純に総額から既に費用化した金額を差し引くだけでことたりる。ちなみにこの株式報酬費用は当然4,5,6月の三か月分である。ここまでが『権利確定日以前の会計処理』である。以降で権利確定後の会計処理を見ていく。なお権利確定後の会計処理は通常の新株予約権と同等の処理である。
・H24年度期中において45名からSOの行使を受けたため新株を発行した。権利行使に伴う払込金額及び行使された新株予約権の金額の合計額は全額資本金に計上するとする。
上に条件を記したがもう一度。新株予約権は1個の行使につき1株が発行される。権利行使価額は1株75円。1名当たり160個のSOが付与されている。まずは仕訳の形から。
(借)現金預金 540,000、新株予約権 57,600 (貸)資本金 597,600
混乱しそうなので情報を整理。まず今は企業側の会計処理である。新株予約権の行使に伴い出資されるのは
45名×SO160個×75(行使価額)=540,000
これが会社が受け取る現金預金である。
そもそも新株予約権は、有利な条件を付したオプションを販売することによる資金調達のための手段である。この有利な権利を現金で販売したとして、対価、つまり貸し方側に記帳される勘定科目が新株予約権なのであるが、これはもちろん負債性を有するものではない。払い込まれた現金の対価として貸し方に記録されている新株予約権の金額を将来的に返済するような可能性はもちろん皆無である。さらに言えばBS純資産の部では、株主資本ではなく、評価・換算差額等でもなく、「新株予約権」という独自の区分で表示される。この辺りは正直に言って感覚的には全く理解できないが、とりあえずは「新株予約権」ときたら「純資産」に変換できるような条件付けをするしかない。指示にあるように、払込金額と新株予約権の全額を資本金に計上する、とあるので貸し方に合計額を計上してこの処理は完了する。払い込まれた現金預金は新たに株式を発行した対価であるので、相手勘定が資本金となるのは如何にも自然だが、新株予約権も資本金に振り替えられる。ここは覚えていくよりない。更に以下で次の条件を付す。
H25年度期中(H25年6月末まで)において、23名からSOの行使を受けたため自己株式(帳簿価額:1株当たり70)を交付した。
(借)現金預金 276,000 新株予約権 29,440 (貸)自己株式 257,600、その他資本剰余金 47,840
まず行使された新株予約権は23名×160個×@8=29440である。次にこのオプションを用いて払い込まれる現金預金は23名×160個×1株×75=276,000である。これら借方側の性質の違いを特に明確に分ける必要はない。というのは、その他資本剰余金に組み入れられる金額は、「あくまで借方と簿価の差額」でしかないからである。
発行される株式は23名×160株の3680株、自己株式の帳簿価額は70/株であるから、3680×70=257,600が交付される株式の価値である。差額部分を「その他資本剰余金」に組み入れてこの処理は完了する。
最後に行使されなかったSOの取扱いである。権利確定SO70名分に対して行使されたSOは68名分である。未行使の2名は与えられたSOに対する価値を(用役を通して)既に支払っている。これに対して企業側はサービス(SOの行使を受け入れる)をせずに2名の権利が失効したとすれば、企業は一方的に労働のみを享受したことになる。
(借)新株予約権 2,560 (貸)新株予約権戻入益 2,560
金額は2名×160個×@8のSO評価額である。新株予約権は純資産にてカウントされているので借方にて消滅、貸方の新株予約権戻入益は通常想定していない利益であるため、PL上は特別利益に計上される。
まずストックオプション会計のプロセスを大きく2つに分けると以下のようになる。
(※SO=ストックオプション)
・権利確定日以前の会計処理
1.従業員から取得するサービスを費用として計上
2.対応する金額を「新株予約権」として計上
・権利確定日後の会計処理
通常の新株予約権と同等の処理
ではまず前者の「権利確定日以前の会計処理」について復習。
まず最も基本となる会計処理というか仕訳。
『(借)株式報酬費用 (貸)新株予約権』
借方の株式報酬費用は従業員の用役に係る費用であるからPL上の「販管費」である。また、新株予約権はBS上「純資産」の部に属する。
従業員から取得するサービスはその取得に応じて費用計上し、対応する金額をストックオプションの権利の行使又は失効が確定するまで「新株予約権」として計上する。
感覚的には、従業員の用役に対して支払われる給料に代わって「新株予約権」を積立てておき、これが使用される/失効する時点をもって取り崩すような感じだろうか。
例としてH21年7.1に75名にSOを付与した。SOの公正な評価単価は1個当たり8円、SO行使時の払込金額は1株当たり75円だとする。このSOの権利確定日がH23年6月末、つまり2年後であるとする。この場合75名分のSOを(借)株式報酬費用(貸)新株予約権を計上するわけであるが、これは従業員の「用役に対応して発生する費用」である。そしてこれらの費用計上のタイミングは基本的に会計期末である。
このケースでは権利確定日までに2回の決算を挟み、さらに2回目の決算後に係る用役が3か月分(4,5,6月分)あるので、合計3回分費用計上する機会がある。
さて費用の計上額だが、まず全体のSOの価値を求める。この際に使う数字は1.何名にSOを付与するのか、2.一人当たり幾つのSOを付与するのか、3.SO一個当たりの評価単価は幾らか、などである。
一般に付与日から権利確定日までは一定の期間が設けられている。この期間を対象勤務期間と呼ぶが、この間に退職する見込みのある人数を計算上考慮する(差し引く)ことにも注意が必要である。そもそもミスディレクトしたいのでもない限り無関係の数字は資料として与えられないはずである。では上の例を継いで以下で具体的な数字を代入してみる。
・一人当たりに付与されるSOは160個、1個当たりの公正な評価単価は8円、H23年6月末(つまり権利確定日)までに7名が退職見込みであるとする。この場合まずは権利確定する見込みのSO数を算定する。
(75名-7名)×160個=10,880個のSOについての権利が確定する見込みである。このSOの単価は1個当たり8円、よって10,880個×8円=87,040円が権利確定する見込みのあるSOの総額である。繰り返しだがこの87,040円は労働対価(のようなもの)である。そしてこの労働対価は『H21年7月からH23年6月末に係るもの』であるから、期間に対応して配分する必要がある。
・ではまずH21年度(7.1~3.31)までに費用かされる額を算定してみる。初年度は単純な期間配分でよい。労働対価の総額87,040円(対象期間中の退職者に係るものは除く)は対象勤務期間24ヶ月の労働対価である。付与されてから当期末までは9ヶ月(7月~3月末)、つまり9ヶ月/24ヶ月を乗じて32,640円が当期分の株式報酬費用/新株予約権となる。
・では次にH22年度(4.1~3.31)を見てみる。ただしこの会計期間中に将来の類型失効見込みを6名に修正したものとする。上で書いた条件ではSOが付与された75名中7名が退職により失効すると見積もったが、この見積退職者数を6名に修正した。この場合、権利確定する見込みのあるSO数が変更されるわけであるから、この根本から修正することになる。一人当たりSO160個×(75名-6名)=11,040個である。SO数が変われば当然SOの公正な評価額(単価ではなく総額)も変動する。評価単価8円×11,040個=88,320円である。これがH22年度末における「将来支払われるSOの価値の総額(見積)」である。ただし見積の総額が如何に変わろうと、前期末に32,640円の株式報酬費用及び新株予約権は計上済みである。
次がこのストックオプション会計における費用計上の最大の特徴であるが、「見込みの修正があった場合、当初より修正後の数字で計算していたかのような費用の算出の仕方をする」という計算式である。
これがどういうことかを説明するが、前年度に計上した株式報酬費用/新株予約権は32640円。これは失効見積7名に基づく9/24ヶ月分の労働対価である。しかし当期末において失効見積が修正され、SOの評価額(総額)も前年度87,040から88,320に修正された。この修正後の評価額に基づいて全体に期間配分(ただし計上済みの部分は引き算)を行う算定法である。
修正後のSOの公正な評価額88,320×21ヶ月/24ヶ月-前期までの費用計上額32,640=44,640(当期に費用化される用役に基づくSO)
特徴は、決して『修正後のSO評価額から前期までの計上額を差し引いてから期間配分』するのではない。そうではなく、『付与日から現在に至るまでの費用を先に期間配分したのちに前期末までの計上額を差し引く』のである。これが先に述べた、「当初より修正後の数字で計算をしていたかのような振る舞い」である。これを念頭に、以下では更に条件の変更を加えて処理をしてみる。
・H23年6月末までに実際に退職したのは5名であったとする。この場合は更に有効SOの数そのものから変更が加えられる。
(75-5)×160個×@8=89,600(SO総額)
89,600×24/24-(32,640+44,640)=12,320円
最終的にはSO数を権利確定数に一致させる。上の式では一応全体としての期間配分も記述しているが、単純に総額から既に費用化した金額を差し引くだけでことたりる。ちなみにこの株式報酬費用は当然4,5,6月の三か月分である。ここまでが『権利確定日以前の会計処理』である。以降で権利確定後の会計処理を見ていく。なお権利確定後の会計処理は通常の新株予約権と同等の処理である。
・H24年度期中において45名からSOの行使を受けたため新株を発行した。権利行使に伴う払込金額及び行使された新株予約権の金額の合計額は全額資本金に計上するとする。
上に条件を記したがもう一度。新株予約権は1個の行使につき1株が発行される。権利行使価額は1株75円。1名当たり160個のSOが付与されている。まずは仕訳の形から。
(借)現金預金 540,000、新株予約権 57,600 (貸)資本金 597,600
混乱しそうなので情報を整理。まず今は企業側の会計処理である。新株予約権の行使に伴い出資されるのは
45名×SO160個×75(行使価額)=540,000
これが会社が受け取る現金預金である。
そもそも新株予約権は、有利な条件を付したオプションを販売することによる資金調達のための手段である。この有利な権利を現金で販売したとして、対価、つまり貸し方側に記帳される勘定科目が新株予約権なのであるが、これはもちろん負債性を有するものではない。払い込まれた現金の対価として貸し方に記録されている新株予約権の金額を将来的に返済するような可能性はもちろん皆無である。さらに言えばBS純資産の部では、株主資本ではなく、評価・換算差額等でもなく、「新株予約権」という独自の区分で表示される。この辺りは正直に言って感覚的には全く理解できないが、とりあえずは「新株予約権」ときたら「純資産」に変換できるような条件付けをするしかない。指示にあるように、払込金額と新株予約権の全額を資本金に計上する、とあるので貸し方に合計額を計上してこの処理は完了する。払い込まれた現金預金は新たに株式を発行した対価であるので、相手勘定が資本金となるのは如何にも自然だが、新株予約権も資本金に振り替えられる。ここは覚えていくよりない。更に以下で次の条件を付す。
H25年度期中(H25年6月末まで)において、23名からSOの行使を受けたため自己株式(帳簿価額:1株当たり70)を交付した。
(借)現金預金 276,000 新株予約権 29,440 (貸)自己株式 257,600、その他資本剰余金 47,840
まず行使された新株予約権は23名×160個×@8=29440である。次にこのオプションを用いて払い込まれる現金預金は23名×160個×1株×75=276,000である。これら借方側の性質の違いを特に明確に分ける必要はない。というのは、その他資本剰余金に組み入れられる金額は、「あくまで借方と簿価の差額」でしかないからである。
発行される株式は23名×160株の3680株、自己株式の帳簿価額は70/株であるから、3680×70=257,600が交付される株式の価値である。差額部分を「その他資本剰余金」に組み入れてこの処理は完了する。
最後に行使されなかったSOの取扱いである。権利確定SO70名分に対して行使されたSOは68名分である。未行使の2名は与えられたSOに対する価値を(用役を通して)既に支払っている。これに対して企業側はサービス(SOの行使を受け入れる)をせずに2名の権利が失効したとすれば、企業は一方的に労働のみを享受したことになる。
(借)新株予約権 2,560 (貸)新株予約権戻入益 2,560
金額は2名×160個×@8のSO評価額である。新株予約権は純資産にてカウントされているので借方にて消滅、貸方の新株予約権戻入益は通常想定していない利益であるため、PL上は特別利益に計上される。