・自己株式の処分と新株の発行を同時に行った場合

通常であれば、自己株式を大量に保有する会社が新株を発行する必要はなく、自己株式を処分すれば良いだけである(自己株式を保有するのは好ましくない)。新株の発行が自己株式の処分と同時に行われるケースとは、自己株式の処分対価以上の資金調達を要する場合の手続である。

以下で設例を二問、自己株について処分差益のケースと処分差損のケースにわけてみていく。

[設例]
募集株式100株(新株90、自己株10)が次の条件で行われ、払込がなされた。
1.払込み金額:10,000
2.処分する自己株式の簿価:600
3.新株の発行に対応する払込金額はすべて資本金とする。

[解答]

(借)現金預金 10,000

(貸)資本金 9000、 自己株式 600、 その他資本剰余金 400

※まず払込み金額が10,000であり発行・処分される株式数が100。もちろん発行・処分の別で価値が異なるということはないので、1株当たりに対する払込金額は100である。

※自己株式10枚を処分して払い込まれる対価は10枚×100の1,000である。対して処分される自己株式の簿価は資料より600。よって400の処分差益が生じる。自己株式の処分差益は(処分とは出資であるので)その他資本剰余金に割り振られる。

※新株については当然90枚×100の9000分であり、これは指示に従い資本金に割り振られる。


[設例]
募集株式100株(新株90、自己株10)が次の条件で行われ、払込がなされた。
1.払込み金額:10,000
2.処分する自己株式の簿価:1500
3.新株の発行に対応する払込金額はすべて資本金とする。

[解答]
こちらは処分差損のケース。
先程と同様1株当たりの払込み金額は100。自己株式の処分数は10枚=1000の払込みだが、その簿価は1500。つまり500の処分差損が生じている。ただし株主資本の増加と減少を同時に行うことは会社法の観点から認められていない。

処理としては、処分差損は資本金や資本準備金に吸収させる。よって正答は

(借)現金預金 10000

(貸)資本金 8500、 自己株式 1500

である。
※どうあっても自己株式の簿価1500は変わらないので、残るは資本金で調整するよりない。