退職給付会計は、90年代後期からの会計ビッグバン/国際財務報告基準とのコンバージェンスの文脈の中で制定された規準である。この時点での従来の処理(退職給与引当金)と、新たに計上する退職給付引当金との差額を「会計基準変更時差異」として認識し、最長15年に渡って費用処理することとなった。
ただし2010年現在では、基準変更から10年近くが経過するため、当論点の重要性はさほど高くないと思われる(退職給付会計は確か平成13年頃から適用だったと思う)。むしろ、昨年度末(平成22年3月18日)
にASBJより公開された草案においては、差異の未認識部分もBS計上されることとなっている。適用は平成23年度に係る決算(平成24年3月)からで、これまでの退職給付会計の処理をしっかりと理解した上で、新基準にも目を通す必要がある。(https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/exposure_draft/taikyu-4/taikyu-4.pdf)

さて、会計基準変更時差異は基本的には企業にとってマイナスである場合が多い。他の差異と同様に、毎期、退職給付費用として認識し、未認識部分は退職給付引当金の算定に影響を及ぼす。なお会計基準変更時差異については費用処理方法は15年以内の定額法のみが認められる。費用処理の開始時期は適用初年度である。最長償却期間は特に暗記する必要は無いように感じる。

[設例]
1.当社は当期首から「退職給付に係る会計基準」を適用している。
2.前期末の貸借対照表に計上された退職給付引当金は1,000であった。
3.期首における退職給付債務は4000、年金資産は1500である。
4.当期における勤務費用は400である。
5.退職給付債務の算定に使用する割引率は年3%、年金資産にかかる期待運用収益率は年2%とする。
6.会計基準変更時差異は発生年度から15年で費用処理する。なお会計基準変更時差異の他に差異は生じていない。

[解答]


?まず変更時には振替仕訳が必要となる

(借)退職給与引当金 1000 (貸)退職給付引当金 1000

※「退職給与引当金」を全額、新基準である退職給付引当金に振り替える。


?会計基準変更時差異の金額の把握
今までに引当金とした債務は1000(退職給与引当金)である。しかし制度変更後の引当金残高は2500である(期首退職給付債務4000-期首年金資産1500)。差額の1500を差異として認識し、15年に渡って費用処理する。

?当期の費用
勤務費用が問題文より400、利息費用が4000×0.3=120、期待運用収益が30、ここに(損失である)差異の費用処理額100(1500÷15年)を加えて、当期に費用は590となる。