まず財務諸表監査の目的は、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準(Generally Accepted Accounting Principles)に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明することにある。ここで、財務諸表が企業の状態を適正に表示しているかどうかという命題を適正性命題という。

・適正性命題:財務諸表が企業の状態を適正に表示しているかどうかという命題

しかし適正性命題立証に必要となる根拠を入手することは容易ではない。FSにはBS,PL,CS等いくつもの種類があり、更にそれぞれに様々な項目がある。したがって適正性命題をいきなり立証することはできない。そこで、適正性命題を監査人が直接立証するのではなく、適正性命題を、直接立証できる小さな命題に分解していくことが必要となってくる。ここで登場する概念が、監査要点というものである。監査要点とは、FSの基礎となる取引や会計事象等の構成要素について立証すべき目標のことをいう。

・監査要点:立証すべき目標

適正性命題と監査要点の関係のまとめ

・財務諸表監査の究極目的(究極的な立証命題)
・投資家等の保護のため、財務諸表の適正性を検証し、検証結果を監査人の意見として表明すること(適正性命題
・しかし、監査人が適正性命題を直接立証するのは困難(または不可能)
・なぜなら、FSの全体としての適正性を直接に立証することのできる監査の方法や証拠は存在しないと考えられているため
・そこで、FSの構成要素の適正性を個別に立証し、その結果を積み上げることによりFS全体の適正性を立証する
・つまり、適正性命題を監査人が直接立証できる具体的な個別立証命題に分解していく必要がある
・そして、この分解された小さな命題を監査要点という
・監査人は適正性命題を立証すべく、これを細分化し最下位層の監査要点から順次立証していき、これを積み上げ最終的に適正性命題を立証するという関係にある


~監査基準に例示されている代表的な監査要点~
1.実在性
2.網羅性
3.権利と義務の帰属
4.評価の妥当性
5.期間配分の適切性
6.表示の妥当性

1.実在性:資産及び負債が実際に存在し、取引や会計事象等が実際に発生していること。BSに計上された資産と負債は決算日に当該企業に実在していたか。損益をもたらした取引や事象は発生していたか。(さらに具体化=個別監査要点)BSに記載されている製品は、物理的に存在しているか。

2.網羅性:計上すべき資産、負債、取引や会計事象を全て記録していること。決算日において、BSに記載すべき全ての資産と負債の残高が計上されているか。簿外資産や簿外負債が存在していないか。製品数量には、手元にある全ての製品が含まれているか。

3.権利と義務の帰属:計上されている資産に対する権利及び負債に関する義務が会社に帰属していること。資産の計上の根拠となる権利は、会社に帰属するものであるかどうか、或いは負債計上の根拠となる義務は、会社に帰属するものであるか。会社は製品に対して法的所有権あるいは類似の権利を有しているか。

4.評価の妥当性:資産及び負債を適切な価格で計上していること。資産と負債の期末評価は妥当または合理的か。製品は原価で適切に計上されているか。製品意含まれている過剰、不良および陳腐化項目が適切に識別されているか。

5.期間配分の適切性:取引や会計事象を適切な金額で記録し、収益及び費用を適切な期間に配分していること。収益や費用は、すべて当該会計期間に適切に配分されているか。製品に関する評価損または減耗損が適切に計上されているか

6.評価の妥当性:取引や会計事象を適切に表示していること。FSがひょ時の基準にしたがって、明瞭に表示されているか。製品はBS上、流動資産として適正に分類計上されているか。