1.期首における退職給付債務は40000、年金資産は20000である。
2.当期における企業年金に対する掛金拠出額は8000、当社からの退職一時金の支給額は1100、企業年金からの退職年金の支給額は3100である。
3.当期における勤務費用は6000である。
4.退職給付債務の算定に使用する割引率は年3%、年金資産に係る期待運用収益は年2%とする。
5.当期において、年金資産の実際運用収益が期待運用収益を下回ったことにより、数理計算上の差異が300生じている。数理計算上の差異は定額法(5年間)により費用処理する。なお、このほかに差異は一切生じていない。

[解答]
実際の解法としては4つのボックス図を作成することになる。a/cの種類は、1.年金資産、2.退職給付費用、3.退職給付債務、4.数理計算上の差異、である。以下でそれぞれのボックスの内容を見ていく。

1.年金資産
文中より年金資産の期首残高20000は、資産であるから当然に借方に記載される。ここに当期拠出額の8000と、期待運用収益400(期首残高20000×2%)を加えたものが借方項目の全てである。
貸方は、支給された年金3100と、数理計算上の差異300が計上される。

2.退職給付費用
費用勘定は借方項目である。文中より勤務費用が6000、利息費用が1200(退職給付債務の期首残高40,000×3%)、ならびに数理計算上の差異300÷5年定額費用により60が借方に計上される。対して費用のマイナス項目、つまり貸方側には400の期待運用収益を記載する。

3.退職給付債務
債務であるから貸方項目である。まずは期首残高40,000。これに上で費用計上した勤務費用6000と利息費用1200を加える。差異60/300は、5年間で費用処理する為、退職給付債務には計上されない
債務のマイナス項目、借方側は、企業年金の支給額3100と、当社が支払った一時金1100が計上される。

4.数理計算上の差異
これは貸借どちらもあり得るが、今回は損失、つまり企業にとっては費用であるから、借方に300が計上される。ちなみに数理計算上の差異について、その発生を認識した年度から処理するのが原則法(今回のやり方である)、発生を認識した翌年から処理するのが容認法となっている。さらに処理方法は定額法と定率法のそれぞれがある。
文中に5年間の定額法で処理とあるので、原則法に従い、当期に60を費用処理する。つまり貸方側から60を抜き去り、具体的な費用勘定である退職給付費用a/cの借方に計上する。

以上でボックスの作図は終了する。ここで、各ボックスの貸借差額の処理が最も重要となる。その他、付随する仕分けについても見ていく。

1.退職給付費用
費用であるから当然に借方残高の6860である。これは当期に置いて認識された仕訳であるから、以下の仕訳が切られる。

(借)退職給付費用 6860 (貸)退職給付引当金 6860

2.年金資産
まず当期に企業年金へ拠出した掛金8000についての仕分け。

(借)年金資産 8000 (貸)現金預金 8000

※企業年金への掛金拠出は、結果的には退職給付引当金を減ずることになるが、それは期末段階であって、拠出時には上の仕訳が切られることになる。

なお年金資産の貸借差額は、借方残高の25,000である。

3.退職給付債務
まず当期において退職一時金を支払った時点での仕訳。

(借)退職給付引当金 1100 (貸)現金預金 1100

※退職一時金は想定内の費用であるから、退職引当金により賄われる。

※借方側(債務の減少)には上の一時金の支払の他、企業年金の支払額3100が記帳されている。なお、これは積立時に既に現金を支払っているものであり、且つ年金資産と退職給付債務が同額減少する性質のものであるから、仕訳が切られることはない。この他、貸方の勤務費用・利息費用の当期発生分を加味して、貸借差額は貸方残高の43,000である。

4.差異
損失、つまり費用として借方に計上されたのが、当期に認識された300。このうち(定額法によるため)当期に費用計上した額が60、差額は240の貸方残高である。

・[退職給付引当金の期末残高の計算]
以上の4つのボックス図のうち、1.退職給付債務、2.年金資産、3.数理計算上の差異、の3つを使って引当金残高を計算する。その前に今一度、引当金算定の基本式を示す。

退職給付引当金=退職給付債務-年金資産

まず退職給付債務・年金資産は、当然にそれぞれ貸方残高・借方残高である。ここに差異をどのように絡めるかだが、差異が借方残高ならば同じ借方残高である年金資産側に加える。同様に差異が貸方残高ならば、貸方残高側である債務側に加えることで最終的な引当金の期末残高を求める。

やや煩雑な手続なので、3つの数字で再度T勘定を作成して集計する方が理解が早いかもしれない。なおこれにより期末の退職給付引当金残高は貸方43,000-借方(25,000+240)の17,760となる。