退職給付会計についての苦手意識は、問題形式についての理解が不足していることが原因のような気がする。

退職給付会計の問題では、その多くが(例えば)全体勤務期間30年に対して26年目である当期末の退職給付引当金および費用を計算する、といった形式であ る。

しかし考えてみれば分かるが、退職金が毎年の勤務に基づいて発生する以上、実務では毎年その費用を計上し、計上額を引当金とする当たり前の 処理が行われているはずである。長期間に渡って行われる処理の真ん中にいきなり放り込まれるので全体が把握できていなかったが、入社1年目の社員を想定し て考えれば幾分分かりやすい。

勤務費用に限った話をするが、入社1年目のある社員の労働に係る費用が1,000だとする。毎年の仕訳は
(借)退職給付費用 1,000 (貸)退職給付引当金 1,000
となる。この時点でBSの退職給付引当金は(1年目なので)当然1,000である。
次に2年目に1,200の勤務費用を計上する(利息とかは無視)。仕訳では
(借)退職給付費用 1,200 (貸)退職給付引当金 1,200
となっているはずである。退職給付費用はPLなので毎年立ち消えていくものの、BS項目である退職給付引当金は徐々に積み重ねられていく。入社2年目の退 職給付引当金の残高は1000+1200の2400である。3年目の勤務費用が1500だとすれば、年度末のBSに計上されている退職給付引当金の残高は 3700となる

次に利息費用について考えてみる。引っかかるのは『なぜ割り引くのか』ということである。
ここからは想像で書くが、上の例の1年目、1,000の引当金を計上してから1年が経過した段階を想定すると、引当金は1030になっている(年金資産は 無いものとして)。
もちろんこれは負債を1年間放っておいたら勝手に増額したわけではない。1年後に1030であるべき債務を(1年前なので)減額して1000として計上しておいた、と考えるべきである。それでは何故減額して計上しておいたのか。ここも想像に依るが、おそらく1000の勤務費用は既に費用化され負債となった ものである。つまり引き渡し義務を要するがそのタイミングは現在ではない。これは性質的に見て借入金と同等のものである。そうである以上は利息が生じるの が道理である。言い換えれば、この債務1000についてどのように運用するとしても、最低限は市中金利を下回ることはないと見て利率を乗じる。要するに1 年前に1000を費用として計上した段階で預金しておけば1030になっているので、そうであるならば1年前の計上額は1000で事足りる、といった判断 である。恐らくは貨幣価値の変動率など難しい話が絡むのだとは思うが、上の理解でもって問題にあたっても不都合はなさそうな気がする。