1.当社の会計期間は4.1~3.31
2.保有する国債(額面10,000、取得価額10,000、その他有価証券に分類)の価格変動リスクをヘッジする目的で、H22.3.1に債券先物(額面10,000、限月H23.6.30)を額面100につき112で売り建てた。なお委託証拠金については無視する。
3.H21年度決算日における国債の時価は額面100につき96、債権先物価格(限月H23.6.30)は額面100につき109であった。
4.H22.5.31に国債を額面100につき94で売却するとともに、債権先物について反対売買による差金決済を行った。H22.5.31における債権先物価格(限月H23.6.30)は額面100につき107であった。
5.その他有価証券の評価差額は全部純資産直入法により処理する。
6.税効果会計は適用しない。

[解説]
まずは復習だが今までの学習に基づいて有価証券の分類すると『売買目的、満期保有目的債権、関係会社株式、その他有価証券』となる。
この中でその他有価証券の評価損益には2通りの処理法方があった。
『全部純資産直入法と部分純資産直入法』である。
全部純資産直入法は、その他有価証券から生じる評価損益をその他有価証券評価差額金(BS純資産)として処理する(利益・損失を問わず)。
他方、部分純資産直入法では、評価益の場合は
(借)有価証券or投資有価証券 (貸)その他有価証券評価差額金
となり、この場合は全部純資産直入法と全く同様の処理である。
しかし損失の場合は
(借)投資有価証券評価損(貸)有価証券or投資有価証券
となる。
少し話が逸れたが、全部純資産直入法によるその他有価証券の処理においては、評価損益はPL項目では認識されない。そして今回のヘッジ対象はその他有価証券であり、全部純資産直入法を採用している。
そもそも『ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象は、毎期損益が認識されるとは限らないもの』である。故に今回のその他有価証券がヘッジ対象となっているのである。

ちなみに今回の問題は繰延ヘッジと時価ヘッジのどちらを採用するかについて明示的でないので、原則法の繰延ヘッジを前提に説明する。

まずはヘッジ会計を採用しない場合のヘッジ対象(その他有価証券)とヘッジ手段(債権先物)の価格変動の仕訳から。なお損益についてはアンダーラインを付す。

・その他有価証券(100個)
取得時:@100
決算時:@96
(借)その他有価証券評価差額金 400 (貸)投資有価証券 400
翌期首
(借)投資有価証券 400 (貸)その他有価証券評価差額金 400
売却時:@94
(借)現金預金 9400、投資有価証券売却損益 600 (貸)投資有価証券 10000

※投資有価証券は洗替処理が必須である。

・債権先物(100個)
約定時@112(売り建て)
※委託証拠金は無視するとの指示があるので仕訳はしない
決算時@109
(借)債権先物 300 (貸)債権先物損益 300
翌期首
仕訳なし
決済日:@107
(借)現金預金 500 (貸)債権先物 300、債権先物損益 200

以上の流れを念頭に、損益について表にすると



H21年度 H22年度
その他有価証券 なし マイナス600
ヘッジ対象 (H21H22年度分)
債権先物 プラス300 プラス200



となる。繰延ヘッジはヘッジ手段をヘッジ対象に合わせる処理である。つまりH21年度に債権先物で計上された300の利益を繰延ヘッジ損益としてH22年度に持ち越し、ヘッジ対象が損益を認識した時点に調整するのである。
<繰延ヘッジ適用後>
H21年度 H22年度
その他有価証券 なし マイナス600
ヘッジ対象 (H21~H22年度分)
債権先物 なし プラス500
ヘッジ手段 (H21~H22年度分)
繰延ヘッジを適用すれば当然仕訳の形も変化する。その部分について以下で解説。

・債権先物

決算時:(借)債権先物 300 (貸)繰延ヘッジ損益 300(評価・換算差額等)

決済日
(借)債権先物 200 (貸)繰延ヘッジ損益 200
(借)繰延ヘッジ損益 500 (貸)債権先物損益 500
(借)現金預金 500 (貸)債権先物 500

※時価ヘッジの処理については次エントリにて。