外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行。長ったらしいが要するに借金である。ただし外貨での借金。よって決算時や返済時、利払時には当然CR換算が必要となる。

今は社債を発行した場合、つまり借金した場合を見ているが、借金を金銭で返済する代わりに当社の株式を引き渡すこともできる(というかその選択は相手が行うが)。相手が権利行使を行った場合、ワラントが付されているので予め定められた払込でもって当社の株式を引き渡すことになる。転換社債型なので、権利行使を行う場合は金銭ではなく社債、すなわち借金の帳消しでもって払込とする。社債の転換による新株の発行は現物出資と捉えられているため、外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行と転換による株式の発行は別個に考える必要がある。ということで設例で見ていこう。

[設例]
・当期首(×1年.4.1)に次の条件で転換社債型新株予約権付社債を発行した。発行時の為替相場は1ドル=120円であった。転換社債型新株予約権付社債は一括法により処理する。
?額面金額:1000ドル
?払込金額:1000ドル
?転換価格:50円
?換算レート(転換レート):1ドル=150円
?利息:なし
・×1年度の決算時の為替相場は1ドル=130円である。
・×2年10.1に上記新株予約権のうち20%が権利行使され、新株をは行した。新株の発行時に出資された額は1株あたり40円を資本金とする。権利行使時の為替相場は1ドル=135円であった。

[解答]
まず発行時の仕訳。払い込まれた金額は1000ドル、HRは120円。
(借)現金預金 120,000 (貸)社債 120,000

なお今回は額面も1000ドルなので償却の必要がない。

次に×1年度決算。社債、いわゆる外貨建の借金はCR換算する必要がある。HR換算で120,000円の社債は、決算時にCR換算で130,000円に膨らんでしまっている。損失の原因は為替相場の変動からきている。
(借)為替差損益 10,000 (貸)社債 10,000

ここまでは特に目新しいことはない。問題は×2.10.1の権利行使。
この権利行使は新株予約権のうちの20%分。社債は総額で1000ドルなので、200ドル分の現物出資である。
さて、この時の為替相場は1ドル=135円である。転換価格は50円なので、200ドル×135円÷50円=540株の発行となるのだろうか?
この計算は間違いである。外貨建の新株予約権付社債は、権利行使時のレートを予め固定している。これを転換レート(換算レート)と呼ぶ。問題文中の?にある「1ドル=150円」がそれである。

新株予約権なので「1株当り~~円」で株式を購入する権利は当然付されているが、外貨建の場合は転換レートも定められていることには気をつけたい。発行するのはあくまで自社の(つまり日本の)株式なので、その払い込みは円貨が用いられる。相場変動の影響を受けないよう予め定めた転換レートは(おそらく)その時点での為替レートと異なるものである。
今回の場合は権利行使時の相場は1ドル=135円である。実際に償還した社債200ドル分については200ドル×135円の価値である。

説明がごちゃごちゃしてきたので、200ドルに限って考えてみよう。
200ドルは前期末(×2.3.31)には26,000円の簿価で計上されている(200ドル×CR130)。
この200ドル26,000円が×2.10.1に権利行使された。権利行使とはすなわち「借金を(そちらの株式で)返済してください」ということ。ただし返済時点で200ドルはHR135を乗じた27,000円である。
簿価26,000円の借金をHR換算27,000円で返済しなければならなかった。これは為替相場の変動に基づく損失の計上である。ということでまず最初の仕訳。
(借)為替差損益 1000 (貸)社債 1000

次に新株の発行の処理について。
さて、払い込まれたのは明らかに27,000円(200ドル×HR135)である。
よってこの時点で社債は27,000円減少する。しかし交付される株式数はHR135円ではなく、予め定められた転換レート1ドル=150円に基づく
よって200ドル×転換レート150円=30,000円分の株式を交付することになる。転換価格は50円なので30,000÷50=600株の交付である。
さらに資本金繰入額は1株当り40円である。このため600株×40円=24,000円が資本金繰入額である。そして差額部分が資本準備金となる。

(借)社債 27,000 (貸)資本金 24,000、 資本準備金 3000

このように払込金額を資本金と準備金に振り分けるような場合でなければ、社債の減少額はあくまで行使日の為替相場に基づく。逆に言えば、転換レートが問題で示されているということは、別途こうした計算を要する場合を考えていく必要がある。