監査人は監査要点を直接的な立証命題とすることを前述したが、監査要点の立証にあたって必要となるのが、『十分かつ適切な監査証拠』というものである。

監査人は証拠資料に監査技術を適用することによって、監査証拠を入手するという作業を繰り返す。ここで、証拠資料、監査技術および監査証拠について説明していく。

『証拠資料』とは。それに対して監査技術を適用することで監査用個を得ることができるもののことである。つまり監査技術の適用対象であり、例として在庫品の現物や伝票等の証憑書類が挙げられる。

『監査技術』とは、監査証拠を得るために、監査人が証拠資料に対して実施する手続きのことをいう。例えば、記録や文書の閲覧、有形資産の実査といった手続きが挙げられる。

『監査証拠』とは、監査人が監査意見を形成するに足る確信を得るために入手したすべての情報をいう。

上記三者の関係をまとめると、監査人は証拠資料に対して監査技術を適用することで監査証拠を得ることができるということになる。そしてこれら一連の手続きを『監査手続』と呼ぶ。

~十分かつ適切な監査証拠~
上で記したように、監査人は証拠資料に監査技術を適用し監査証拠を入手することになるが、その入手した監査証拠が監査要点を立証する為には一定の質と量が求められる。ある監査要点、例えば仕掛品の実在性を立証したいとする。この時に入手すべき監査証拠はもちろん帳簿上の数字ではない。実在性を証明したいのならば記録上の数字を見るのではなく、実査こそが適切だからである。この時、例えば10箇所に保管されている仕掛品のうち、1箇所のみの実査によって実在性を立証したと考えるのは当然早計といえる。つまり監査人は、監査要点に適合し、必要な証明力および十分な料を有する監査証拠(=十分かつ適切な監査証拠)を入手しなければならないのである。このように監査証拠には「十分性」と「適切性」が求められており、監査人はこの十分かつ適切な監査証拠を入手して初めて監査要点を立証することができるのである。


~監査技術(監査の手法としての監査手続)~
1.記録や文書の閲覧
記録や文書の閲覧は、紙媒体、電子媒体又はその他の媒体による企業内外の記録や文書を確かめる監査手続である

2.有形資産の実査
有形資産の実査は、監査人自らが、現物を実際に確かめる監査手続である

3.観察
観察は、業務処理のプロセスや手続を確かめる監査手続である

4.質問
質問は監査人が経営者、従業員又は外部の関係者に問い合わせて、説明又は解答を求める監査手続である

5.確認
確認は、質問の一種であり、勘定残高とその明細に関連する情報又は現在の契約条件等について、監査人が企業の取引先等の第三者に対して問い合わせを行い、その解答を直接入手し評価する監査手続である

6.再計算
再計算は、記録や文書の計算の正確性を監査人自らが計算し確かめる監査手続である

7.再実施
再実施は、企業が内部統制の一環として実施している手続又は内部統制を監査人が自ら実施することによって確かめる監査手続である

8.分析的手続
分析的手続は、監査人が財務データ相互又は財務データ以外のデータと財務データとの間に存在する関係を利用して推定値を算出し、推定値と財務情報を比較することによって財務情報を検討する監査手続である