前の記事で、監査人が直接的な立証命題とするのは「財務諸表の適正性」ではなく「個別の監査要点」であることを学習した。また、具体的な監査要点の例はこちら。今回は、監査人がいかにして監査要点を立証するかについて。

監査人が監査要点の立証にあたって必要となるのが『十分かつ適切な監査証拠』である。監査人はいかにして十分かつ適切な監査証拠を入手していくのか。

監査人は証拠資料監査技術を適用することによって監査証拠を入手する。証拠資料とは会計記録の元となった取引の証拠。伝票や在庫品など。監査技術とは、監査人が証拠資料に対して実施する手続。例えば記録や文書の閲覧、有形資産の実査など。
そして監査証拠とは、監査人が監査意見を形成するに足る核心を得る為に入手したすべての情報を言う。

まとめると、証拠資料×監査技術=監査証拠であり、この一連の手続は監査手続と呼ばれる。

さて、監査人の目的は(適正性命題を立証すべく)監査証拠を入手することであるが、監査証拠は「十分かつ適切」なものでなければならない。十分性=量と、適切性=質(適合性と証明力)を備えていなければ、監査要点を立証できない。また、十分性はある程度適切性で補うことができる。監査要点に対する十分かつ適切な監査証拠は、単一の監査証拠とは限らず、複数の監査証拠を集積して1つの監査要点に対する監査証拠とする場合が多い。しかし、非常に証明力の高い単一の監査証拠によって、ある監査要点を立証できる場合は在りうる。反対に、証明力の弱い、あるいは適合性の極端に低い(ピント外れの)監査証拠をいくら集めようとも、(十分性で)適切性を補うのは難しい。