前回に続いてリスク・アプローチ。
ここでは重要な虚偽表示のリスク(Risk of Material Misstatemenについて。

?そのまえに前回の4つのリスクで学習したことを少しまとめるてみる。監査人が誤った意見を形成する可能性を監査リスクという。これは次の3つのリスクからなる。すなわち固有リスク、統制リスク、発見リスクである。
固有リスクとはある事象ごとの本質的なリスク、統制リスクとは企業の内部統制の脆弱性、発見リスクとは監査人のヒューマンエラーのようなもの。

監査リスク=固有リスク×統制リスク×発見リスク

監査リスクを構成するこの3つのリスク。これを見ていくと、発見リスクは監査人に、固有リスクと統制リスクは企業に属するものであることが分かる。監査人が固有リスクを下げることは出来ない。また、内部統制についても監査人はせいぜいが助言する程度で、この構築、運用は経営者に責任がある。つまり監査人がコントロールし得るのは3つのうち発見リスクということになる。

また、虚偽表示を生じさせるリスクは固有リスクと統制リスクからであることも分かる。このため、固有リスクと統制リスクをまとめて重要な虚偽表示のリスクとすることもある。

監査リスク=固有リスク×統制リスク×発見リスク=重要な虚偽表示のリスク×発見リスク


?重要な虚偽表示のリスクのレベル
監査人が重要な虚偽表示のリスクを考える時、これを2つのレベルで捉える必要がある。「財務諸表全体レベルの重要な虚偽表示のリスク」と、「財務諸表項目レベルの重要な虚偽表示のリスク」である。全体レベルで重要な虚偽表示があると判断されれば不適正意見を表明することになるが、項目レベルの重要な虚偽表示であっても、その合計によっては全体レベルでの重要な虚偽表示とされる場合もある。


?リスク・アプローチ採用の根拠
ここまで様々なリスクについて見て来たが、なぜこのようなリスクを考える必要があるのだろうか。
財務諸表監査の目的は、財務諸表について重要な虚偽の表氏が含まれていないということに対して、監査人が合理的な保証を付し、もって投資者等の保護を図ることにある。翻せば財務諸表に含まれている重要でない虚偽表示までをも発見する必要はないということになる。
もちろん全ての虚偽表示を発見できればそれに越したことはないのだろうが、監査リソースは有限である。もともと法定監査を要する企業は大規模であり、取引内容や会計処理の大量化、専門化、複雑化する傾向にある。こういった状況で監査人は監査を効率的に実施する必要がある。

つまりリスク・アプローチを採用することで、財務諸表全体の適正性を損なわない程度の微細な虚偽表示を発見するようなサンクコストを節約し、リスクの高い領域に対してリソースを重点的に投入し、効率化した監査の実施を図ることができるのである。

まとめ
リスク・アプローチとは、重要な虚偽の表示が生じる可能性が高い事項について重点的に監査の人員や時間を充てることにより、監査を効果的かつ効率的なものとすることができる監査の実施の方法をいう。

次では監査リスクモデルについて学習する。