今日は僕の誕生日である。
子供の頃から誕生日は特別な日という知識はあった。
昔の僕は子供心にいろいろな楽しいことが起こるのではないか、とわくわくしていた。
そしてそういう期待がだいたい裏切られてきた歴史がある。
誕生日は特別と世間は煽る。
けれども、それは起こりそうもないなにかを幼い僕に印象付け、そのたびに小さな失望を味わうという効果しかもたらさなかった。
バースデーケーキを家族全員で囲む、友人を招待してのパーティー、美しくリボンの包装が施された贈り物。
誕生日めいたものは、僕の子供時代の体験にはほとんどない。
あとになって思えば、そんなことをしている人が周囲にいないことにも気付かない僕はおめでたい子供だった。
むしろ大人になってからの方がその手のイベントに縁がある。
今日もお客様からおいしそうなうなぎやシャンパン、後輩からはいちご大福と化粧品をもらった。
子供の時の僕が聞いたら大喜びするのは間違いない。
この違いはなんだろうと思えば、やはり他人のことを祝うようになったのが大きいだろう。
あと教師業なので生徒さんにありがたくも祝福してもらえるというのもある。
どちらも子供の頃はなかったことだ。
大人になったのだな、と思うと同時に子供の時の自分に伝えてあげたい。
人に祝ってもらうには自分も他人を祝福しなければならないのだと。
ただ待っていても何も起こるはずがないのだと。