こんにちは、株式会社Lean Stack代表の吹上由樹です。

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「努力義務だから、申出があってから考える」は、説明として足りない

 

 

顧問先から、こんな言葉が出てくることがあります。

「両立支援は努力義務ですよね。病気の社員が出てから考えれば足りますよね」

「主治医の診断書に『就業可』とあれば、元の仕事にそのまま戻せばよいですよね」

「病気が分かったら、念のため休ませておくのが一番安全ですよね」

この三つは、令和8年4月1日から適用された「治療と就業の両立支援指針」への説明としては足りません。

厚生労働省は、支援の必要が生じてから社内の制度や体制を考え始めていては、適切な対応は難しい、と説明しています。だから、平時からの環境整備が中身になります。

就業の可否も、主治医が一人で決めるものではありません。病気になったことだけで就業を止める対応も、指針の考え方と合いません。

何が変わったか——ガイドラインから、法律に基づく指針へ

改正労働施策総合推進法により、令和8年4月1日から、職場での治療と就業の両立支援が事業主の努力義務になりました。

事業主は、本人からの相談に応じ、適切に対応するための体制の整備などを講ずるよう努めなければならない、という規定です。

具体的な中身は、令和8年2月10日に告示された「治療と就業の両立支援指針」が定めています。これまでのガイドライン(通達)は、令和8年3月31日をもって廃止されました。国は指針に従い、事業主に指導・援助等を行うことができます。

対象の範囲は、次のとおりです。後ろの三つは、施行通達の整理です。

  • 労働者は、雇用形態に関わらず全員

  • 疾病は、医師が反復・継続した治療が必要と判断し、就業の継続に配慮が必要なもの(負傷を含む)

  • 派遣労働者には、派遣元と派遣先の両方に適用

  • 感冒のように短期で治るものや、美容医療などは含まれない

  • 労働者を使用しない個人事業主や、中小企業の事業主・役員は対象とならない

「努力義務だから、何も用意しなくてよい」と返すのは、やってはいけません。 法律の言葉は「努めなければならない」です。

申出の前に整えるもの——平時の環境整備

 

 

 

両立支援は私傷病に関わるものなので、本人からの申出をきっかけに始めるのが基本です。

ただし指針は、申出が出やすい環境を先に作ることも重要としています。挙がっているのは、次の整備です。

  • 基本方針の表明と、事業場内ルールの作成・周知(衛生委員会等での調査審議を経て)

  • 全ての労働者と管理職への研修等による意識啓発

  • 相談窓口と、申出があったときの情報の取扱いの明確化

  • 休暇制度・勤務制度の整備(時間単位の年次有給休暇、傷病休暇・病気休暇、時差出勤、短時間勤務、在宅勤務、試し出勤など)

  • 申出があったときの対応手順と、関係者の役割の整理

  • 主治医に勤務情報を伝える様式と、主治医の意見を求める様式の用意

休暇・勤務制度は、各事業場の実情に応じて導入することが望ましい、という書き方です。全部を一度に入れる義務とは説明しません。

「休職規程があるので、両立支援は対応済みです」と閉じるのは、避けてください。 指針は、休業を要しない場合の進め方も分けて書いています。休職規程だけでは、働きながら治療する人への窓口・手順・様式が抜けます。

就業の可否は、主治医が決めるのではない——進め方の流れ

 

 

指針が示す進め方は、次の順番です。

  1. 労働者が申出をし、勤務の状況を主治医に伝えて、支援に必要な情報を主治医から集めて事業主に出す

  2. 事業主が、その情報を産業医等に渡し、意見を聴く(産業医等がいない場合は、主治医の情報を参考にする)

  3. 事業主が、主治医と産業医等の意見を勘案し、本人の希望を聴いて十分に話し合い、就業継続の可否を判断する

  4. 続けられると判断したら、就業上の措置と治療への配慮を決め、必要に応じて両立支援プランを作って実施する

  5. 治療の経過に応じて状況を確かめ、プランや配慮を見直す

施行通達は、就業継続の可否や具体的な措置は、主治医の意見をもとに、産業医等の意見を勘案しつつ、労働者と十分話し合ったうえで、事業主が最終的に決定する、と書いています。

厚生労働省のリーフレットは、主治医に渡す勤務情報に、職務上最低限必要となる作業や要件を具体的に書くよう勧めています。

指針は、治療の終了後すぐに通常の勤務に戻れるとは限らない点にも、留意を求めています。

「診断書に就業可とあるから、元の仕事にそのまま戻す」で終わらせるのは、やってはいけません。

やってはいけない対応——安易な就業禁止、同意のない情報取得、繁忙を理由にした配慮なし

 

 


病気になったことをもって、安易に就業を禁止しないことが求められています。 主治医や産業医等の意見を勘案し、配置転換や作業時間の短縮などで、できる限り就業の機会を失わせないよう留意する、という整理です。

健康情報は、法定の健康診断で把握した場合を除き、原則として本人の同意なく取得してはならない、とされています。 把握した情報も、扱う人の範囲を決め、漏えいを防ぐ管理体制が要ります。上司や同僚と共有するのも、措置と配慮に必要な情報に限ります。

業務の繁忙等を理由に、必要な措置や配慮を行わないことはあってはならない、とも明記されています。

「念のため休ませる」「診断書を集めて回覧する」「忙しいから配慮は後で」で済ませるのは、やってはいけません。

効率化は、部分ではなく全体で進める

方針だけ、休職規程だけ、様式だけ、と部分で止めると、申出から決定までの流れがつながりません。

事務所の仕事も同じです。公開済みの実績は、減った場所が揃っていません。

  • シンカ社会保険労務士法人様は、助成金チェックと書類作成・手続き

  • アスタリスク様は、就業規則

  • フォーシーズン様は、給与計算

どれか一つの改善を、事務所全体の完了とは置きません。効率化は部分ではなく全体で進めます。 両立支援も、方針・窓口・制度・様式・進め方を一本の流れで整えることが大切です。

今日、事務所が顧問先に確認する3つ

説明の入口は、次の三つに絞ると動きやすいです。

  1. 基本方針と事業場内ルール、相談窓口、申出時の情報の取扱いを決めて、全ての労働者に周知しているか

  2. 主治医に勤務情報を伝える様式と、主治医の意見を求める様式を用意し、誰が受けて、誰の意見を聴き、誰が決めるかを整理しているか

  3. 休業しない場合(時間単位の年次有給休暇、時差出勤、短時間勤務など)と、休業する場合(休業中の連絡、職場復帰の判断)の両方に、社内の制度で対応できるか

この三点を確認しないまま、「努力義務なので、申出があってから考えましょう」と返すのは、避けてください。

まとめ

令和8年4月1日から、治療と就業の両立支援は事業主の努力義務になり、指針が中身を定めています。対象は、雇用形態に関わらず全ての労働者です。

求められているのは、平時の環境整備と、申出から決定・見直しまでの流れです。就業の可否は、医師の意見と本人との話合いを経て、事業主が最終的に決めます。安易な就業禁止や、同意のない健康情報の取得は、指針と合いません。

指針は、事業主を支える関係者の一つに社会保険労務士を挙げています。事務所の仕事は、「努力義務です」と伝えて終わることではなく、顧問先が今日確認すべき三点を具体に落とすことです。

「両立支援は努力義務だから、申出が来てから考えると伝えて足りますか」

「診断書に就業可とあれば、元の仕事に戻すだけでいいですか」

「病気の社員の情報は、どこまで集めて、誰に伝えてよいですか」

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本日も最後まで読んでいただきありがとうございます。

この記事はnoteにも掲載しています。
https://note.com/leanstack/n/n1a1eca312654