こんにちは、
株式会社Lean Stack代表の吹上由樹です。
はじめに
今回は、就業規則の話をします。
これまでの記事では、給与計算や助成金のチェック業務をAIで効率化する話をメインにしてきました。
でも、就業規則の作成も、実はかなりの時間と労力がかかっている業務なんですよね。
先日、実際にある社労士の先生のサポートをしている中で、就業規則の作成フローをAIで効率化するプロジェクトに取り組んでいます。
その中で見えてきたのが、多くの社労士事務所が「ひな形」に頼って就業規則を作っている現実。
そして、その「ひな形に頼る」というやり方が、先生の時間を静かに、でも確実に奪い続けているという事実です。
今回は、この「ひな形信仰」の落とし穴と、AIで就業規則の叩き台を一瞬で出せる仕組みについて書きます。
「ひな形さえあれば回る」は、本当か
「うちはひな形があるから、そこまで困っていない」
社労士の先生と就業規則の話をすると、こう返ってくることが多いです。
確かに、就業規則には「共通部分」があります。
労働時間、休日、休暇、賃金、退職。
どの会社の就業規則にも必ず盛り込むべき項目は、法律で決まっている。
だから、ひな形を一度作れば、それをベースにカスタマイズすれば回る。
理屈はたしかにそうです。
でも、現実はそう単純じゃないんですよね。
まず、就業規則を作る「目的」によって、盛り込む内容が大きく変わる。
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新規設立で最低限の規則を整えたいのか。
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助成金の申請に必要だから作るのか。
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労務トラブルの予防を目的としているのか。
目的が変われば、力を入れるべきポイントがまったく違ってくる。
さらに厄介なのが、業界によって「これは入れるべき」「これは入れないべき」という項目が存在します。
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製造業なら安全衛生関連の規定を厚く書く必要がある。
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建設業なら現場作業に関する特有のルールが必要になる。
-
IT企業ならリモートワークや副業に関する規定が求められる。
共通部分は確かにある。
でも、変動部分がかなり大きいんです。
そしてもうひとつ。
これが一番厄介なんですが。笑
先生ごとに、就業規則へのこだわりがまったく違う。
「この条文はこう書きたい」
「ここは必ずこの表現を使う」
「この順番で並べないと気持ち悪い」
先生の数だけ流儀がある。
ひな形が同じでも、出来上がりは全然違う。
つまり、「ひな形さえあれば回る」は、半分は正解で、半分は幻想なんですよね。
ひな形に頼り続ける"見えない損"
ここで、ちょっと冷静に考えてほしいんです。
ひな形をベースに就業規則を作る。
そのとき、実際にどれだけの時間がかかっているか。
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ひな形を引っ張り出してくる。
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顧問先の業種や要望に合わせて、条文をカスタマイズする。
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不要な項目を削る。
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必要な項目を追加する。
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表現を調整する。
-
法改正があれば、それに対応した文言に修正する。
「ひな形があるから楽」と言いつつ、結局のところ、先生が自分の時間を使って、かなりの労力をかけているんですよね。
しかも、このカスタマイズの判断基準は、先生の頭の中にしかない。
「この業界ならこの項目は入れるべき」
「この規模の会社ならここは省略していい」
「この顧問先はこういう要望があるからこう書く」
全部、先生の経験と判断に依存しているんです。
これ、給与計算のときにも同じ話をしましたが、
完全に属人化しているんですよね。
先生が体調を崩したら、その案件は止まる。
先生が忙しければ、後回しになる。
そして、この「見えない損」は、給与計算ほど大きくは見えない。
なぜなら、給与計算は毎月発生するから、時間がかかっている自覚がある。
でも、就業規則の作成は頻度が低い分、「まあ、こんなもんだよね」で済まされてしまう。
でも、1件あたりにかかっている時間を冷静に計算してみてください。
それが年間で何件あるか、掛け算してみてください。
案外、バカにならない時間を使っているはずなんです。
そして、その時間は本来、もっと別のこと(特に売上拡大に寄与する業務)に使えたはずの時間なんですよね。
AIで就業規則の"叩き台"を一瞬で出す方法
じゃあ、どうすればいいのか。
答えは、AIに就業規則の叩き台を出させる仕組みを作ることです。
具体的に言うと、こういうことをやります。
まず、就業規則に必要な要素を、パターンごとに整理する。
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共通して必ず入れるべき項目。
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業界ごとに入れるべき項目。
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目的に応じて入れるべき項目。
-
先生独自のこだわりポイント。
これを全部、ナレッジとしてAIに蓄積する。
そのうえで、顧問先からのヒアリングシートや基本情報をAIに読み込ませる。
「業種は製造業」
「従業員数は30名」
「目的は助成金申請に伴う整備」
「シフト制勤務あり」
こういった情報を入力するだけで、その条件に合った就業規則の叩き台が、ポンと出てくる。
先生がやるのは、その叩き台を確認して、微調整するだけ。
ゼロから考える時間が、ほぼなくなるんです。
「いやいや、そんなにうまくいくわけないだろう」
と思いましたよね。
正直、そうです笑。
ただ、ここで重要なのは、普通にChatGPTやClaude、Geminiを使っても、これはできないということなんです。
ご想像の通り、限界があります。
「AIに丸投げ」では意味がない。だからこそナレッジ化
ちょっとだけ、正直な話をさせてください。
ChatGPT、Claude、Gemini。
どれも素晴らしいAIです。
でも、これらに「就業規則を作って」と頼んでも、実務で使えるレベルのものは出てきません。
なぜか。
就業規則って、法律を扱うんですよ。
法律に遵守させる必要がある。
しかも、細部までこだわる必要がある。
「この条文のこの表現は、こう書かないと法的にまずい」
「この業界ではこの項目を入れないと労基署に指摘される」
「この規模の会社なら、ここはこう書くのがベスト」
こういう細部の判断を、汎用AIにそのまま任せるのは、正直なところ厳しいんですよね。。。
つまり、痒いところに手が届かないんです。
汎用AIは「だいたい正しいこと」は言える。
でも、「この先生の、この顧問先の、この業界の、この条件における正解」を出すには、圧倒的に情報が足りない。
だからこそ、ナレッジ化が必要なんです。
- 先生の頭の中にある判断基準。
- 業界ごとのパターン。
- イレギュラーケースの対応ルール。
- 過去に作成した就業規則の完成版データ。
これらを全部整理して、AIに食わせる。
そうすることで初めて、AIは「この先生の、この事務所の基準に合った就業規則」を出せるようになる。
汎用AIの限界を、事務所固有のナレッジで埋める。
これが、就業規則のAI活用における最大のポイントです。
ナレッジ化さえできれば、全然いけるんですよ。
業界別のパターン分けも、先生ごとのこだわりの反映も、ヒアリング情報からの自動反映も。
全部、仕組みとして回せるようになる。
給与計算に比べると、圧縮できる幅は少し小さいかもしれない。
給与計算のほうが、もともとかかっている時間が大きいですからね。
でも、就業規則の作成で先生のリソースが解放される意味は、数字以上に大きいんです。
先生がやるべきは、就業規則のテンプレをカスタマイズする作業じゃない。
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顧問先の経営課題に寄り添うこと。
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新しい提案をすること。
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事務所の経営を考えること。
その時間を作るためのAI活用なんですよね。
まとめ
就業規則の「ひな形があるから大丈夫」は、半分は正解で、半分は幻想です。
目的によって盛り込む内容が変わる。
業界によって必要な項目が違う。
先生ごとにこだわりが異なる。
結局、毎回それなりの時間と労力がかかっている。
そして、その判断基準は先生の頭の中にしかない。
AIに就業規則の叩き台を出させる仕組みを作れば、この属人化は解消できる。
ただし、ChatGPTやClaudeをそのまま使っても実現はできない。
事務所固有のナレッジを蓄積して初めて、実務で使えるレベルになる。
ナレッジ化の手間はかかります。
でも、一度仕組みを作れば、そこから先はずっと楽になる。
ひな形に頼り続ける限り、先生の時間は永遠に圧迫され続ける。
その"静かな損"に気づいた事務所から、変わっていくんだと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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