こんにちは、
株式会社Lean Stack代表の吹上由樹です。

 


 

【著者プロフィール】

 

吹上由樹(ふきあげ よしき)
株式会社Lean Stack 代表取締役

 

2021年4月 経済産業省へ入省
2023年7月 経済産業省を退職
2023年9月 株式会社Lean Stack設立

 

弊社HP:https://www.leanstack-buzz.com/

 

YouTubeチャンネル:DXできるくん
https://www.youtube.com/channel/UCpKWNCmxjPHYg6f8t3FaiUA

 


はじめに

「AIエージェント」

 

この言葉、最近よく耳にしませんか?

 

ChatGPTとは何が違うのか。

どう使い分けるべきなのか。

 

実は、ここに大きな誤解があります。

 

それは、

 

ChatGPTもAIエージェントも、同じ「単なるチャットツール」だと思い込んでいること

 

です。

 

実際は、全く違います。

 

この記事では、中小企業の経営者や現場担当者の方に向けて、


AIエージェントとは何か、なぜ今注目されているのか、


そして具体的にどう活用すればいいのかをお伝えします。

AIエージェントとは何か

まず、定義から整理しましょう。

 

OpenAIは、

 

「エージェントとは、あなたに変わって自立的にタスクを遂行するシステム」

 

と定義しています。

 

ここで重要なキーワードが、

 

代理

自立的

 

という2つの言葉です。

 

じゃあ、ChatGPTとの違いは何か。

 

それを理解するために、

AIを使った自動化の3段階

を見ていきましょう。

AIを使った自動化の3段階

AIを使った自動化には、3つの段階があります。

 

上に行くほど、任せられる仕事の範囲が広がるイメージです。

第1段階:単一の返答

これは、普段ChatGPTを使う時の状態です。

 

プロンプトを送ったら、


それに対して単一のテキストが返ってくる。

 

翻訳、企画の壁打ち、執筆——。

 

これだけでも十分便利なんですが、

 

出力されたテキストは、人間がそれを元に考えたり、他のサービスに使うことで初めて価値が出る

 

わけです。

 

これだけでは、まだ自動化の範囲は限られています。

第2段階:AIワークフロー

次の段階が、ワークフローです。

 

ワークフローとは、

 

事前に定義された枠組みの中でAIを使って自動化すること

 

を指します。

 

例えば、

 

「自分好みのニュースをまとめたニュースレターが毎日届く」

 

こんな自動化をしたいとします。

 

そのためには、

  1. ニュースを検索する

  2. ニュースを要約する

  3. 要約を配信する

という、あらかじめ決められたステップで処理を行います。

 

これで、AIを活用して、


より広い範囲での自動化が行えるようになる。

 

n8nやZapierといった


ウェブサービスを連携させるツールを使ったことがある方は、


イメージしやすいかもしれません。

 

で、ですね。

 

単一の返答からワークフローに段階が上がった時の差分として注目したいのが、

 

環境に作用する力があること

 

です。

 

環境というのは、

AI以外の様々な存在

 

つまり

 

——外部のサービスや人間、他のAI——

 

のことを指します。

 

単体でできることは狭く、


様々なものを組み合わせることによって、


よりインパクトの大きい自動化ができるようになるわけです。

 

ただ、ワークフローには限界があるんですね。

 

それは、

 

事前に決められたステップでしか処理できない

 

という点です。

 

それ以外の仕事が求められた時に、対応ができません。

 

定形的な業務しかないのであればそれで十分ですが、


より広範囲な仕事をお任せできるようにするためには、

 

自分でどんな風に仕事を進めるのかを考えてもらう必要がある

 

わけです。

第3段階:AIエージェント

そこで登場するのが、AIエージェントです。

 

AIエージェントは、

ワークフローに加えて、

 

考え、意思決定する力

を持っています。

 

ここで、AIエージェントの設計の考え方として、

 

ReAct(リアクト)

 

というものがあります。

 

ReActとは、

  1. Reason(思考する)

  2. Act(行動する)

  3. 観察する

そしてまた思考する——

 

というサイクルを繰り返していく考え方です。

 

例えば、

 

「最新のAIトレンドを調査してまとめて」

 

とAIエージェントにお願いしたとします。

 

AIエージェントは、まず思考します。

 

「よし。まずはAIトレンド2025でWeb検索をかけてみよう」

 

次に、その思考に基づいて行動——つまりWeb検索ツールを実行します。

 

そして、検索結果に対する観察を得て、また思考します。

 

「いくつか記事が見つかった。この記事とこの記事が信頼できそうだ。まずは内容を要約してみよう」

 

このように、

 

思考、行動、観察のサイクルを最終的な目的を達成するまで自立的にぐるぐると回し続ける

 

これがReActの基本的な仕組みです。

 

状況に応じて自分で次の一手を考えられる——

 

まさに自立性の源泉と言える考え方ですね。

 

現在、多くのAIエージェントはこのような枠組みに則って作られています。

3段階の違いをまとめると

これまでの自動化の段階を振り返ると、

 

まず、単一の返答からワークフローになる段階で、

 

AIは外部ツールを操作する「手足」を手に入れました

 

しかし、それだけでは決まった動きしかできません。

 

そこに、ReActのような

 

自分で考える「脳」

 

が加わることで、AIエージェントが誕生するわけです。

 

この脳と手足の両方を持っているからこそ、

 

人間の仕事を高度に、そして柔軟に代理できる

 

これこそがAIエージェントです。

AIエージェントはどう作られているのか

少し技術的な話になりますが、
概念だけ分かりやすく伝えますね。

 

昨今のAIエージェントたちは、

 

ズバリ、

 

ツールコーリングの連鎖

 

でできています。

 

ツールコーリングとは、

Web検索であったり、
ファイルを読み込んだり、
メールを送ったり——

 

つまり、

 

AIの外の世界にある様々なものを扱えるようにする仕組み

 

です。

 

例えば、ChatGPTを提供しているOpenAIのAPIでは、

 

AIを呼び出す時に「ツール」というものが渡されます。

 

このツールには、

  • ツールの名前

  • どんなツールなのかの説明

  • ツールにはどんな情報を渡すのか

などを定義します。

 

例えば、

 

Web検索のツールを定義していて、

 

「このツールを使うとWeb上の情報を検索できますよ」

 

という説明や、

 

「このツールを使うためには検索クエリが必要だよ」

 

ということを伝えるわけです。

 

で、ですね。

 

AIがプロンプトに応じてこのツールを使います。

 

「Web検索ツールに『AIトレンド2025』という検索クエリを入れるべきだよ」

 

と言ってくれる。

 

実際のところ、

 

AIはテキストを生成することしかできない

 

ので、AIが生成した内容を元に、


その行動を実際に行う処理はプログラムで書く必要があります。

 

ここまでを前提とすることで、


テキスト生成AIは環境に作用する手足を手に入れることができるのです。

 

そして、ここからが面白いところですが、

 

このツールには、他のプロンプトも含めることができます

 

これにより、

 

「行動を起こした後に、再度思考をする」

 

という流れを実現することができるわけです。

具体的な活用例

じゃあ、実際にどんな場面で使えるのか。

1. ディープリサーチ

例えば、

 

「競合他社のAI活用事例をまとめて」

 

こうAIエージェントにお願いすると、

 

AIエージェントは自動で、

  1. Web検索で競合企業のサイトを調べる

  2. 見つけた記事を要約する

  3. 情報が十分か判断する

  4. 不足していれば追加で検索する

  5. 最終的にレポートにまとめる

これを全部、自動でやってくれます。

 

従来のChatGPTだと、

 

「競合のURLを教えて」
「この記事を要約して」
「次はこの記事を要約して」

 

と、人間が指示を出し続ける必要がありました。

 

でも、AIエージェントなら、

 

最初の指示だけで、あとは自動で進めてくれる

 

わけです。

2. スライド・資料作成

GeminiのAIスライドやAIシート機能では、

 

「〇〇についてのプレゼン資料を作って」

 

と指示するだけで、

  1. Web検索で情報を集める

  2. 情報を整理する

  3. スライドの構成を考える

  4. 実際にスライドを作成する

これを全部自動でやってくれます。

 

従来なら、

ChatGPTで骨子を作って、
それをGoogleスライドにコピペして、
デザインを整えて——

 

という作業が必要でした。

 

でも、AIエージェントなら、

 

全部自動で完成する

 

わけです。

3. 複雑なタスクの自動化

例えば、

 

「毎週月曜日に、先週のプロジェクト進捗をまとめて、メールで送って」

 

こんなタスクも、AIエージェントなら可能です。

  1. Notionやスプレッドシートから進捗データを取得

  2. データを整理して報告書にまとめる

  3. メールで関係者に送信

これを全部自動で、毎週繰り返してくれる。

 

従来のワークフローだと、

 

「どのデータを取得するか」
「どうまとめるか」

 

を事前に全部決めておく必要がありました。

 

でも、AIエージェントなら、

 

状況に応じて柔軟に判断してくれる

 

わけです。

小さく始める3ステップ

いきなりAIエージェントを作る必要はありません。

 

まずは以下の流れで試してみてください。

Step 1: まず既存のAIエージェントを使ってみる(1日)

ChatGPTのエージェンツ機能、
GeminiのAIスライド、
NotionAIのディープリサーチ——

 

これらのサービスで、AIエージェントを体験する。

 

「あ、こういうことができるんだ」

 

という感覚を掴む。

Step 2: 自分の業務で試す(1週間)

例えば、

 

「競合分析をAIエージェントに任せてみる」


「週次レポートをAIエージェントに作らせてみる」

 

実際の業務で試してみる。

 

どれくらい時間が削減できたか、
精度はどうだったか、を記録する。

Step 3: チームで共有する(2週間後)

うまくいったら、週1回のミーティングで共有し、横展開する。

 

「この業務も任せられるんじゃないか?」

 

チームで議論しながら、
AIエージェント活用の幅を広げていく。

失敗しないための注意点

AIエージェントは強力ですが、
使い方を間違えると逆効果になります。

注意点1: AIエージェントは万能ではない

AIエージェントは、

 

考えるステップが増えるほど、全体の仕事の精度が下がる確率が上がります

 

仕事の中でAIによる柔軟性がいらない部分は、


ワークフローやプログラミングで確定的に実行できるようにした方が、


自動化で安定した成果を出しやすくなります。

 

マナスやGemSparksなどの、


すでにチューニングされたAIエージェントを使うのは全然良いのですが、

 

自分で何かの仕事を自動化しようとなった際には、

 

まずはワークフローの構築から始めることをお勧めします

注意点2: コストを確認する

AIエージェントは、

 

従来のChatGPTよりもAPIコールが多くなります。

 

マナスのブログによると、

 

「典型的なタスクでは平均して約50回のツールコールが必要」

 

とのこと。

 

つまり、

 

50回分のAPI料金がかかる

 

わけです。

 

コストを確認してから、導入を検討してください。

注意点3: 最終チェックは人間が行う

AIエージェントが生成したレポートやスライドは、

 

必ず人間が最終チェックする

 

ことをお勧めします。

 

AIは間違えることもあります。

 

特に、数値データや事実関係については、


人間の目で確認してください。

まとめ:今日やるべきこと3つ

AIエージェントは、

 

「単なるチャットツール」ではなく、

 

自立的に考え、行動し、仕事を代理してくれるシステム

 

です。

 

まずは以下の3つから始めてみてください。

 

1. ChatGPTのエージェンツ機能を試してみる

 

無料プランでも使える機能があります。
まずは体験してみる。

 

2. 自分の業務で1つ、AIエージェントに任せてみる

 

競合分析、週次レポート、リサーチ——。
どれか1つを選んで、1週間試してみる。

 

3. うまくいったら、チームで共有する

 

週1回のミーティングで共有し、
他の業務にも展開できないか議論する。

小さく始めて、数字が出たら横展開。

 

 

AIエージェントは、

「考える脳」と「動く手足」

を持った、次世代のAIです。

 

ぜひ、試してみてください。

 

それでは、また。

 


【著者プロフィール】

 

吹上由樹(ふきあげ よしき)
株式会社Lean Stack 代表取締役

 

2021年4月 経済産業省へ入省
2023年7月 経済産業省を退職
2023年9月 株式会社Lean Stack設立

 

弊社HP:https://www.leanstack-buzz.com/
 

YouTubeチャンネル:DXできるくん
https://www.youtube.com/channel/UCpKWNCmxjPHYg6f8t3FaiUA
 

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