先週木曜日に身うちの不幸があり、告別式だけでも参列出来ればと、急遽金曜日に
休みをもらって日本に戻って来ました。
仕事の関係上月曜日は休めない為、日曜日中にはデュッセルドルフに戻ってきて
いなければなりません。
欧州時間の金曜日朝(7:25デュッセルドルフ発)のエールフランス便、シャルルドゴール
で乗り継いで日本時間の土曜朝6:30に羽田着。
AM11:30からの告別式に参列してその日の深夜(土曜深夜0:40発)の羽田発便を
使って、再びドゴール経由でデュッセルドルフに戻るという“ウルトラとんぼ返り”でした。
また訃報を聞いた時私は出張でイギリスにいた為、木曜日の19:00頃に戻ってきて
翌朝また日本に向けて出発というスケジュールになったことも多少はハードな感じになりました。
羽田便をとれたことも大きかったと思います。
成田では距離の分だけ時間を取られますから。
さて。
往路便、ドゴール空港から羽田へはJAL便となりますが、機中面白い出来事がありました。
ボーイング777。私は3列シートの通路側。センター席と窓側には年配のフランス人の
ご夫婦がいらっしゃいました。
乗ってすぐに朝食が出た時のことです。
『ハンバーグとマッシュポテト(洋食)』と『海老カレーライス(和食)』の二つの選択肢
を提示され、私は洋食、そのご夫婦は和食を選択しました。
またこのご夫婦はワイン党らしく、食事前から注文された赤ワインは次々とお代りされ、
既に4本のミニボトルが並んでいる状況。
私のプレートにはこの他にパンとチーズがついていたのですが、彼らのプレートには
チーズだけ。
食事も後半にさしかかり、私のパンとチーズを頬張る姿を横目に彼もチーズを食べ始めた
のですが、そこで彼らはハタと気が付きました。
パンがない!!!
すかさずご主人がCAを呼び
『パンがないけど???』と英語で質問。
CAは、すかさず流暢な英語で
『パンは洋食を選択された方だけにつくもので、和食には付いておりません。
申し訳ございません。』
と返しました。
なるほど・・・と一人納得する私をよそに、ご主人は全く納得しておりません。
『チーズだけがあってパンがないのはおかしい。このチーズはどうやって食べろと?』
と切り返してきました。
CAは
『申し訳ございません。そいう決まりでございまして・・・』
と私の席を間に挟んで苦しい応酬が続きます。
『Strange・・・』
ご主人が奥さんと顔を見合わせて呟かれた言葉です。
なるほど・・・確かにフランス人のご夫婦からすれば、デザートでチーズが付いている以上
パンがないのは不自然という考え方なのでしょうが、一方で“和食”というカテゴリーに分類
している以上、航空会社としてはパンはつけない(ライスがある)という決まりにしたのでしょう。
第三者の立場からみると、これはやはり、JAL側にやや文化的な配慮が欠けていたと
言わざるを得ません。
エールフランスとJALのコードシェア便。
外国人の旅客も当然多く利用されることを考えると、“チーズ”というものを外国人がどう捉える
のか、その食文化を考慮しておく必要があるでしょう。
そもそも和食というカテゴリーに分類した海老カレーライスにチーズだけを中途半端に
付けておくからこういう面倒な事態になるとも言えます。
しかし・・・本題はこれからです。
数分後、件のCAはきちんとパンを持って現れたのです!!
『これをどうぞ』
と添えて。
もちろんフランス人ご夫婦は喜んで受け取られていました。
私は思いました。
さすがはJAL!これぞ日本のサービスだと。
他の航空会社では、なかなかこうはいかないだろうとも。
その一方でこうも思いました。
確かに感心するサービスではあるけど、このサービスは彼のフランス人ご夫婦にどれだけの
インパクトを与えるだとうか・・・!?と。
サービスをするなら、当然何かの報酬が必要になります。
この場合であれば、きめ細かい日本のサービスを受けて喜ぶお客様が次回もJALを
選んでくれれば、このサービスは効果的であったということになりますね。
ただこの場合どうでしょうか。
このような“きめ細かいサービス”の積み重ねはJALの期待通り次回の航空会社選択に
繋がるのでしょうか・・・。
もしこのようなJALのサービスに感銘を受けたとしても、航空運賃が往復で、例えば2万円
以上違ったら多分お客さんは安い方に流れるでしょう。
このケースでは『“きめ細かい無料サービス”は素晴らしいが、2万円の価値はない』
と判断されてしまったということです。
グローバルな競争がし烈化している現在、航空会社も厳しい価格競争に巻き込まれています。
現実には数千円単位での競争になっていることから考えると、このような身を切る型(パン無料)
サービスは結果的にはその企業のコストだけを増大させて、リターンは少ないということに
なりはしないだろうか・・・。
そう考えると、本当はこのケースではパンの無料サービスは控える、またはパンを別注文と
考えて支払いを求めるべきなのかもしれません。
でも、その場合は“日本式のきめ細かい配慮”が失われることになるでしょう・・・難しいところです。
日本のサービスと外国のサービスは同じサービスでも中身が違うと前から感じておりました。
日本式サービスは『対価を求めない好意&配慮=フリー(無料)が前提』
外国のサービスは『付加価値であって、当然サービスには対価が伴う』
日本で言う『これサービスしておきますから!!』という商売上の表現を見ればわかります。
ここで言うサービスとは無料であって、もしここで対価(もしくはチップ)を求めたら、
『お金を取るならサービスじゃないじゃん!!』と憤る日本人は少なくないはずです。
そう、日本の文化ではサービスは原則フリー(無料)なんです。
対価を求める下心はあってもいいが、露骨に見えては美しくない、ということでしょうか。
どっちがいいとか悪いとかではなく、これは慣習の違いと考える他はありません。
が・・・少なくともこの慣習の為に、日本ではサービスを付加価値として金額に乗せる商売が
成り立ち辛いことは確かでしょうね。
サービスで儲ける欧米型企業と競争しなくてはならない日本の製造業に携わる人間としては
厳しい環境です。
ところでこの話には若干のオチがあります。
件の“パン事件”から数時間後のこと。
このご夫婦は揃って“機内散歩”に出かけられました。
“エコノミークラス症候群”を慮ってのことでしょうか。
彼らがしばらく帰って来ない内に、今度は菓子パンサービスが始まりました。
機内散歩中でご夫婦が空席の私達の列までやってきた先のCAさん。
いきなり私にパン3つ渡したかと思うと。。。。
『あの・・・英語出来ますか?先のご夫婦が戻られたら「これから先5時間程食事の
サービスはないので、その間はこのパンを食べて繋いで下さい。」と伝えていただけ
ますか?』!!!
いや・・・そりゃー伝えるのは構いませんけど、それを客に言わせるのはどーなのよ??
こっちから自発的に提案したならともかく・・・。
うるさいフランス人ご夫婦とこれ以上関わりたくなかったのか、本当に忙しくて改めてパンを
持って説明に来る時間がなかったのか・・・。
いずれにしてもこのCAさん、パンを余分にサービスした分はしっかり個人的に“元はとった”ようで・・・。
これでチャラということでしょうか。
まあ、私も退屈しのぎにじっくりやりとりを見させていただいたので、CAさんの依頼を快諾
させていただいたことは、ここに加えさせていただきたいと思います。
次回から、またイタリア旅行記に戻ります。