明けましておめでとうございます。サードメディスンの軍場です。
今年もよろしくお願いいたします。
今年最初のブログは「妊娠、授乳中の精油の精油の注意」です。
10数年前と比べて、メディカルアロマは普及してきており、多くの人が生活にメディカルアロマを取り入れる事は喜ばしい事だと思います。その反面、精油は安全で誰でも簡単に使えるという誤解も拡がってしまったようにも感じます。
毒性学のパラケルスス(1493-1541)は「物質にはすべて毒性がある。量が毒か薬かを区別する」と言っています。
精油も上手に使えば薬にもなりますが、素人が下手に手を出すと毒になります。
特に妊娠・授乳期はデリケートな時期。精油は医薬品のようにヒトへの安全性が科学的にあまり調べられていません。だから妊娠・授乳期には迂闊に精油を皮膚塗布するマッサージはおすすめいたしません。(ただし、香りとして控えめに用いる程度なら無害といえる精油がほとんどです。)その上で、薬などに頼る前にメディカルアロマを検討してみたいという方の為に全67種類の精油についての妊娠、授乳中の精油の安全情報のまとめてみました。メディカルアロマの実践の参考になればと思います。
アカマツ・ヨーロッパ
アカマツ・ヨーロッパ精油の妊娠・出産・授乳期における作用に関する研究は行われていない。
IM図:右下
アトラスシダー
試験管試験で子宮の自発的収縮がなくなる。
妊娠中や出産時、授乳期には精油は控えめに利用する方がよい。
IM図:右下
アニス
伝統的に堕胎薬と考えられ、母乳分泌を促すと考えられている。
試験管実験では、ラットの子宮の自発収縮の減少を引き起こす。
ヒトの妊娠中、出産時と授乳中の使用は推奨されていない。
IM図:左下
アンジェリカ
試験管実験では、ラットの子宮の自発収縮が低減される。
アンジェリカ(根)精油は妊娠中絶作用があることが知られている。
IM:左上
イランイラン
試験管実験では、ラットの子宮の自発収縮が低減される。
また、イランイランは高い皮膚感作性も有しているため、妊娠・授乳中のマッサージに使用しない方が良い。
IM図:右上
ウィンターグリーン
生殖器に与える影響に関する試験が数例しか報告されておらず、試験データが不足しているが、妊娠・授乳期間中の使用は推奨されていない。
IM図:右上
オレガノ
オレガノ精油はチモールを含むため、刺激性があるため皮膚に塗布してはならない。
IM図:左下
オレンジ・スィート
動物実験で感作性を有する可能性や子宮筋に対する影響が示されているため、妊娠、分娩および授乳中には皮膚に塗布してマッサージをしない方が良い。
IM図:右下
オレンジ・ビター
動物実験で感作性を有する可能性や子宮筋に対する影響が示されているため、妊娠、分娩および授乳中には皮膚に塗布してマッサージをしない方が良い。
IM図:右下
カユプテ
動物実験で子宮の自発的収縮が停止する可能性が示されたことから、妊娠中や分娩時には注意が必要である。
IM図:右下
カモマイル・ジャーマン
試験管実験では、ラットの子宮の自発収縮が減少される。
妊娠、分娩および授乳期に使用することは避けた方が良い。
IM図:右下
カモマイル・ローマン
カモマイル・ローマンの抽出物には堕胎作用を持ち、月経周期に影響する可能性があると言われている。
また研究でラットの子宮収縮の減少やアレルギー反応を誘発する可能性もあることから、妊娠・授乳期の皮膚への過剰な使用は避けるべき。
IM図:右上
キャロットシード
試験管試験では平滑筋の痙攣誘発作用と鎮痙攣作用の両方あるという報告と、子宮の自発的収縮が減少するという報告がある。また、軽いエストロゲン様作用があり、刺激性を示す可能性があり、妊娠中や授乳期に多量に用いて皮膚をマッサージすることは避ける方がよい。
IM図:左下
クラリセージ
試験管試験で鎮痙攣作用が示されていることから、妊娠期や出産期の使用に対しては注意が必要である。リナロールが含まれるため、感作性のリスクもある。
IM図:左下
クローブ
クローブ精油は非常に刺激性があり、アレルギーのリスクもある。
ラットの子宮を用いた実験で、自発性収縮が劇的に低減することから、妊娠期、出産期には、有害な作用を誘発する危険がある。クローブ精油もオイゲノールも、アロママッサージに使用することは推奨できない。
IM図:左下
サイプレス
データーなし
IM図:右下
サンダルウッド
妊娠・授乳中の使用を制限する根拠となるデータは報告されていないため、成分内容が信頼できる精油であれば使用可能。
IM図:左下
シダーウッド
試験管試験で子宮の自発的収縮がなくなる。
妊娠中や出産時、授乳期には精油は控えめに利用する方がよい。
IM図:右下
シトロネラ
試験管試験で子宮の自発的収縮がなくなる。
妊娠期、分娩期の精油の使用には注意が必要である。
皮膚に塗布する際にみられる刺激性や感作性の問題があり、妊娠時になりやすい過敏症の場合は、より控えた方が良い。
IM図:左上
シトロネラ・ジャワ
試験管試験で子宮の自発的収縮がなくなる。
妊娠期、分娩期の精油の使用には注意が必要である。
皮膚に塗布する際にみられる刺激性や感作性の問題があり、妊娠時になりやすい過敏症の場合は、より控えた方が良い。
IM図:左上
シナモン・カッシア /シナモンバーク
シナモン樹皮、シナモン葉
子宮の自発的収縮を消失させる可能性と、精油には刺激作用があることから、妊娠期のマッサージには使用することは推奨されない。
IM図:左上
ジャスミン・アブソリュート
アブソリュートで、揮発性物質以外の成分が含まれ、アレルギーの原因になる。
またラットの子宮を用いた試験管試験の実験で、自発性収縮が低減することから、妊娠期および授乳期に使用してはならない。
IM図:左下
ジュニパー
ジュニパーをハーブとして経口的に摂取することは、堕胎作用や、受胎率を下げ、着床を阻害し、月経周期に対する影響が報告されている。
IM図:右下
ジンジャー
ジンジャーは堕胎作用を有するといわれており、近縁種では子宮収縮作用が確認されている。
精油に関して同様の作用があるかは不明であるが、ラット子宮にジンジャー精油を作用させた実験では自発収縮の減少が認められているため、妊娠・分娩中の精油の使用には注意が必要である。
IM図:右下
スパイクラベンダー
スパイクラベンダー精油は子宮や他の部位の筋肉に対して有害な作用を及ぼすことが考えられるため、妊娠・分娩および授乳期間中のアロママッサージに用いることは推奨されていない。
カンファー含有量の高さと皮膚感作性物質の含有量からもマッサージに用いる際には注意が必要である。
IM図:左上
スターアニス
伝統的に堕胎薬と考えられ、母乳分泌を促すと考えられている。
試験管実験では、ラットの子宮の自発収縮の減少を引き起こす。
ヒトの妊娠中、出産時と授乳中の使用は推奨されていない。
IM図:左下
スペアミント
スペアミント精油の毒性に関するデータはほとんど報告されていないため、妊娠・分娩・授乳期にマッサージは用いない方がよい。
IM図:左上
セージ
セージ精油は昔から月経周期に影響して流産を引き起こすと考えられており、妊娠中には禁忌とされている。
この作用は、この精油中のα-,β-ツヨンの含有量が高い事に起因している。
ツヨン(α,β)は堕胎薬や生理不順の治療薬として知られている。
実験ではセージ精油の使用により子宮の自発収縮が消失することが示されており、妊娠・授乳中の精油の使用は芳香剤として控えめに用いる程度が良い。
IM図:左上
ゼラニウム
ゼラニウム精油が子宮に及ぼす影響に関しての科学的な実験は不足しているため、妊娠中、出産期の使用は注意が必要である。ただし、他の副作用は軽微である。
IM図:左下
セロリ
動物実験で子宮の自発的収縮が減少することに加え、月経周期に影響が出る可能性があり、子宮刺激作用があり、流産を起こす可能性が指摘されていること、さらに光毒性・感作性が存在する可能性があることから、妊娠中や出産時、授乳中にはセロリ精油をマッサージで使用すべきではない。
IM図:左上
タイム・チモール
昔からタイムは月経周期に影響を与えると言われており、ラットの子宮における実験ではタイム精油により自発性収縮の減少および停止が認められている。タイム精油を妊娠・分娩・授乳期中のマッサージに用いてはならない。
IM図:左上
ティートゥリー
ラットの子宮を用いた実験で自発収縮の減少が認められており、妊娠・分娩・授乳中に使用は推奨できない。
IM図:右下
ナツメグ
実験でラットの子宮でも自発的収縮が減少している。ナツメグ精油は妊娠中や出産期の使用は推奨されない。また毒性があるために授乳中の使用も推奨されない。
IM図:左下
ネロリ
多くの偽物が流通しており、妊娠・授乳期中はネロリ精油やアブソリュートに高い感作性が示されている。
実験でラットの子宮の自発収縮の減少が認められており、マッサージに使用することは推奨できない。
IM図:左下
バジル
ラットの子宮における実験で、子宮の自発収縮の消失がみられていることから、妊娠期・出産時には注意が必要である。
チャビコールメチルエーテルによる発癌の可能性が指摘されているため、授乳時の使用も避けるべきである。
IM図:左下
パチュリ
パチュリ精油は比較的安全な精油で、主な有害作用は実験で観察されている子宮筋に対する鎮痙攣作用である。
低用量で利用する限り、稀に行うマッサージであれば比較的安全と思われる。
IM図:右下
パルマローザ
パルマローザ精油のこの時期における安全性に関する情報が不足する中、動物実験で子宮の自発収縮の減少が認められており、感作性リスクがあることも示されていることから、妊娠中、分娩、授乳中の使用は注意が必要である。
IM図:左下
バレリアン
ラットの子宮を用いた実験で自発収縮の減少が認められており、妊娠・分娩・授乳中に使用は避けた方がよい。
IM図:右上
ヒソップ
2歳以下の小児への使用は禁じられており、授乳中における使用は幼児に危険を及ぼす可能性がある。
ヒソップ精油には神経毒性があるため、妊娠期には使用を避けた方がよい。
IM図:左上
フェンネル
フェンネル精油のもつエストロゲン様作用に起因する、ラット子宮における自発収縮の減少が認められているため、妊娠、出産、授乳期中に使用は避けた方がよい。
IM図:左下
プチグレン
プチグレン精油による子宮の自発収縮の消失が示されているが、ヒトの子宮に対する試験は実施されていない。
皮膚感作性はそれほど強力ではなく、毒性試験における危険性も示されたいないことから、控えめに用いるのであれば、妊娠・授乳期中の使用は可能であると思われる。
IM図:右上
ブラックペッパー
データなし。
IM図:右下
フランキンセンス
実験において子宮に対する鎮痙攣作用が認められているため、使用の際には注意が必要である。
IM図:右下
ペパーミント
実験においてペパーミント精油は子宮の自発収縮の消失が認められている。
精油中に微量に含まれるプレゴンには堕胎作用があると言われている。
ペパーミント精油は皮膚刺激性や感作性のリスクがあるため、皮膚に塗布する際には慎重に用いる必要がある。
IM図:左上
ベルガモット
フロクマリンで熱傷が起こることから、皮膚には圧搾で抽出されたベルガモット精油を使うべきではない。
リモネンとリナロールも含まれているため、感作性も心配される。
動物実験で子宮筋の収縮が停止することが示されていることから、妊娠中や分娩時に注意を払わなければならないと思われる。
IM図:右上
ホーリーフ
ホーリーフ精油には感作性の可能性があり、実験でラットの子宮における自発収縮の減少が認められているため、妊娠、分娩、および授乳中には皮膚に塗布してマッサージするべきではない。
IM図:左下
マジョラム
実験でラットの子宮の自発収縮が抑制されることが判明しており、妊娠中や分娩中には、精油の副作用が起こる可能性がある。
IM図:左下
マートル
子宮収縮の減少があったラットの研究データがある。
妊娠中、出産期、および授乳期に使用する事は推奨されない。
IM図:右下
マヌカ
ラットの子宮を用いた研究で自発収縮の減少が認められており、妊娠、分娩、および授乳中の使用は推奨できない。
IM図:右下
ミルラ
ミルラは月経周期に影響を及ぼすと言われており、ラットの子宮を用いた実験で、自発収縮の減少が認められているため、妊娠中と出産期におけるマッサージに関しては特に注意が必要である。
IM図右下
ヤロー
ヤロー精油には妊娠中絶薬の成分であるツヨンが含まれているが、超微量(0.3%程)であるため、その影響は無視できる。
しかし、アレルギー反応を引き起こす可能性があるため、妊娠・授乳中のヤロー精油の使用は控えるべきである。
IM図:右下
ユーカリ・グロブルス
ユーカリ精油を非常に希釈したマッサージや、香料としての使用は危険ではなく、またユーカリ製品は長く使用されてきている。
IM図:右下
ユーカリ・レモン
ユーカリ精油を非常に希釈したマッサージや、香料としての使用は危険ではなく、またユーカリ製品は長く使用されてきている。
IM図:左上
ラベンダー・ングスティフォリア
ラベンダー精油は感作性の可能性や子宮に関する実験で収縮力の低減が示されていることから、使用には注意が必要である。
しかし、芳香剤やマッサージで併用しても利点がみられる可能性がある。
IM図:右上
ラバンジン
ラベンダー精油は感作性の可能性や子宮に関する実験で収縮力の低減が示されていることから、使用には注意が必要である。
しかし、芳香剤やマッサージで併用しても利点がみられる可能性がある。
IM図:右上
ラヴィンツァラ
アロママッサージでは、希釈すれば使用しても問題がないように思われる。
しかし感作のリスクがあり、ラットにおける試験管試験で子宮の自発収縮の減少が示されている。
IM図:右下
リトセア
子宮の自然収縮に対する有害作用とともに、感作性のリスクも高い精油であることから、妊娠・出産・授乳の時期に使用することは推奨されていない。
IM図:左上
レモン(圧搾法)
近年、潜在的な感作性および光毒性に関する研究が報告されている。また動物実験から、子宮の自発収縮の減少を引き起こすとも報告されている。妊娠および分娩の際の使用には注意が必要である。
IM図:右下
レモン(水蒸気蒸留法)
動物実験から、子宮の自発収縮の減少を引き起こすとも報告されている。妊娠および分娩の際の使用には注意が必要である。
IM図:右下
レモングラス
潜在的な感作性の問題により、ヒトの子宮に対する毒性、研究における哺乳類の子宮に与える自発収縮の減少の作用、シトラールによるエストロゲン様作用の可能性により、妊娠、分娩および授乳期におけるマッサージでの使用は推奨されない。
IM図:左上
レモンバーム(メリッサ)
ヒトの子宮に対する毒性、エストロゲン様作用の可能性から、妊娠・分娩および授乳期におけるマッサージでの使用は推奨されない。
IM図:左上
ローズ
ローズ精油は皮膚感作性以外の副作用は知られていない。
ただし、同じ様な成分構成であるゼラニウム精油は研究でラット子宮に対し自発収縮を減少させる作用が示されている。
妊娠・分娩中の過剰な使用には注意をする必要がある。
IM図:左下
ローズウッド
ローズウッド精油の使用によりラット子宮における自発収縮の消失が認められている。
また、高い皮膚感作性を有する可能性があるため妊娠・分娩・授乳中にマッサージに使用しない方が良い。
IM図:左下
ローズマリー
ローズマリー精油には流産誘発作用や月経周期に影響を及ぼす通経作用などの働きがあると言われている。
研究において子宮の筋肉を弛緩させる作用も有しているため、妊娠・分娩・授乳中のマッサージに使用することは推奨されていない。
IM図:ベルベノン、カンファー左上/シネオール右下
ローレル
妊娠中もしくは分娩時の生物学的な効果に関する科学的な情報はないが、子宮において鎮痙攣作用を引き起こす可能性があり、そして感作作用が誘発される可能性があることから妊娠、出産、授乳期に使用することは推奨されない。
IM図:右下
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参照:アロマセラピーサイエンス/著者 マリア・リス・バルチン 監訳者:田邊和子、松村康生/フレグランスジャーナル社
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