あなたが「英語を聞き取れない」根本的な理由
私たち日本人が悩まされている英語。本当にわかるためにはどうしたらいいか。(写真 : MM4 / PIXTA)
あなたは英語が「聞き取れ」ますか? 自信を持って英語が「聞いてわかる」と言い切れますか?
この連載では、「学校で教わることのなかった本当に使うための英語」という観点で、私たち日本人が英語という長年悩まされ続けている大きな問題にフォーカスしていきます。
また同時に、現実的な観点から解決策も提示し、単なる問題提起に終わらず読者の方の英語におけるスキルアップ、またマインドセットの軌道修正にお役に立てれば幸いです。
第一回目のテーマは「リスニング」です。
海外の旅行ガイドには、「日本人は英語で話しかけても理解できないが書いてあげると伝わる」と書いてあるという、まことしやかな噂があります。
書けば伝わる? 聞き取りなら問題ないは本当?
また、こんな日本人が多いのも事実です。「話すのは苦手だが聞き取りならだいたい問題ない。」
平均的な日本人にとってどちらが真実でしょうか? 数多くの英語を学ぶ方を見てきた経験から言うと、平均的な教育を受けただけの日本人は英語の聞き取りは実用レベルで言うとほとんどできていない、というのが事実であると感じます。
話すのは苦手だが聞き取りは問題ない、と自己申告をする方は、一度、TOEICのリスニングのリスニングパートを解いてみるとわかります。大体わかるのであればほとんどできるはずです。
実際にはどうかと言うと、残念ながらそう自己申告する方は、リスニングもほとんどできていない場合が多いことも事実なのです。
では、読み書きができているのか、というとこれもまた、物議を醸す問題なのですが、「外国人旅行者からの質問程度の英語であれば、言われてもわからないけれど書いてもらえばわかる」ということは起こり得る話だと思います。
聞き取りに関して言うと、筆者自身も英語を聞き取る、という行為がどういうことなのか、その核心をつかむまでは随分苦労した経緯があります。
まずはどうして英語が聞き取れないのでしょうか?
原因は大きく2つに絞られます。もっとも大きいのは「英語を聞くという行為そのものに慣れていない」という点。学校で私たちは英語を「習って」きました。が本当に使えるレベルにまで落とし込んできたか、と自らに問うてみると様々な疑問が浮かぶはずです。
音声的なアプローチの必要性
英語を聞き取るとはどういうことか、その理解をした上で音声的なアプローチをしてきたか?おそらく平均的な英語教育を日本で受けてきた日本人はそのような経験は殆どないと思われます。
it, go, again, apple, family.
こんなに簡単な英単語だが、この5つをしっかりと発音できる人は果たしてどれだけいるでしょうか?
おそらく発音などに関して基本的な知識がない人はひとつめのitでつまづくはずです。言えてると思っているけど言えてない。
つまりこうだと思っている音が違っている。これがリスニングができない大きな要因のひとつです。
on and onが「オン・アンド・オン」ではなく「オーネノー」に近い音で飛んでくるわけです。
アメリカ英語、イギリス英語、もしくは世界中の英語、様々な音があるので一概にこうだと言い切れないのが英語の音ですが、その中庸をかすめる「音の変化」を知らないと、やはり聞き取れないのです。野球にたとえるなら、内角低めが来ると予想したバッターが外角高めに投げられると、とっさに対応できないのと同じです。
ふたつ目の原因は、日常で使用される英語と習ってきた英語の「壁」。学校で習う英語をバカにしてはいけません。「使わないような英語ばかりやってるから日本人は英語ができないんだ」という人ほど「使わないような英語」すら、できているのか怪しい。
ただ、そうは言ってもやはり基礎文法や英語の基本的な部分は習いつつも、「日常的に使われる英語とはこういうものだ」という感覚や使われる様を教わったか、というとやはり首を傾げざるを得ないと思います。日常の中で使われ、聞いてもわからない、という英語は読んでもわからないケースが多いんです。
Are you with me? Is that what you were getting at?
Are you asking what’s in it for you?
日常会話の中で出てくるこのような、ごく当たり前の表現に即座に返答できるスキルが学校の中で、身につけられてきたかというとやはり疑問が残ります。
シンプルな語彙の使用法、句動詞(come offやget onなど)の使用頻度などがやはり思っている以上なので、この辺りを特に学校で習ってこなかった平均的な日本人は、この日常会話の肌触りに面食らってしまうことが多い。いざ英語で話してみて全くできないことを知るのです。
では、リスニング、英語を聞き取るとはそもそもどういうことなのでしょうか?まずもって理解しておかないといけないのは「リスニング」という独立した技能があるわけではない、という点です。
リスニングというのは英語の理解における総合的な力なのです。全ての力が結集したスキルなのです。音で英語を捉え理解する、という行為は2つの大切な要素で成り立っています。それが音的理解、と意味的理解です。
リスニングを音的な理解だけだと思っている人が多く、簡単に「聞き流すだけでペラペラに」というファンタジーのカモになってしまうのです。音さえわかれば英語が聞き取れる、というのは大きな間違いです。
音に慣れ、意味の理解度を高めることが大事
音がわかっても、意味が取れないということは簡単に起こりうることです。音的理解と意味的理解はいわば腹筋と背筋の関係。両方同時に強くなり、体幹は初めて強くなっていくのです。前からしか見られないから腹筋だけしか鍛えない、というのがいかに非効率で不可思議なことか。
英語のリスニング力を上げる、というのはつまり、音に慣れ、意味の理解度を高めていくプロセスに他なりません。
Are you asking what’s in it for you?
この文章が聞き取れ、文字に書き落とせたとしても意味がわかっていなければ、答えようがないわけです。このなんとなく聞き取れたことを、だいたいリスニングはいける、と過信してしまっている人が多いのです。リスニングができるようになる、というのは文字と音を納得しながら解明していくプロセスです。
What’s in it for you?
簡単な言葉で成り立っている文章なのですが、「あなたにとって何の得があるのか?」という意味を知らない限り、この文章を聞いてわかるようにはならないのです。
それはつまり、若い頃から何度も聴き続けているはずの洋楽の歌詞がいまだにわからないのと同じこと。
英語を使う現場に行って最も必要なことは「聞き取る」ことです。自分の言葉はいくらでも選べますが、相手の言葉は選べません。そして聞き取り、理解できない限り、そもそも自分の言葉を選ぶことすらできないのです。
英語のリスニングは特殊能力でもなんでもありません。端的に言えば「知っているか知らないか」の違いだけです。
英語のリスニングができるか、できないか?という問いに関して言うと「知っているものはできるが、知らないものはできない」すべてのレベルの人に共通する答えです。
同時通訳者レベルのスキルを持ってしても、当然知らない表現などが出てきたら聞き取れず、頼るのは経験と勘だと言います。コミュニケーションの中と、そして外で英語を聞く力を育てていくことはできます。
まずは、最もすべきで多くの人がしないこと、それは「聞き返す」ということ。プライドと、そして空気を読む日本人のマインドが邪魔をしてこの簡単な「聞き返す」をしない。
先に述べたように、これまでやってこなかったスキルなのだから最初はできなくて当然、というマインドを持つことから始めてみましょう。わからないとおかしい、恥ずかしいと思う必要は本来ないのです。
「わからないことをわからない」と言える強いマインドがあなたをしなやかに成長させてくれるのです。わからないこと、というのは今の自分の限界です。そこがわかったらしっかりそこをその場で解明する必要があるのです。
妙なプライドで知ったかぶりをしても、もっと恥ずかしい結果が待っているだけなのです。
What did you just say?(なんとおっしゃいましたか?)
Could you say that again?(もう一度おっしゃっていただけますか?)
まずは、この2つだけでも懐に忍ばせておきましょう。
もうひとつの大切なこと、それが読むということ。簡単な英語でもいいんです。リスニングはリスニングをしないと伸びない、というのは大きな間違いです。
背伸びをせず、シンプルな英語を読む
意味的理解をしっかり伸ばしてあげることがリスニングには非常に大きなブレークスルーをもたらしてくれるのです。
英字新聞や英字雑誌も時事問題、社会情勢の理解に役立ちますが、まずは背伸びしないことも大事です。
基本的な英語のフィーリングを育てていない段階では、英語の体幹が出来ておらず難しいものに飛びついても続かずに挫折してしまうケースが少なくありません。
それはなぜか、というと、わかるという最大の喜び、楽しさを知らないからに他なりません。シンプルでも構いません、簡単だとあなどらないようにしましょう。シンプルな英語を読みましょう。自分の歩幅で、無理のない速度で歩みを進める読む、という行為は英語の理解度を劇的にブーストしてくれます。
英語が聞き取れずに悔しい思いをした、情けない思いをしたという方は多いかと思います。ビジネスなどで失敗につながってしまったという方もいるのではないでしょうか?
もちろん筆者も例外ではなく、数々の恥ずかしい勘違いや見栄からくる失敗を経験してきました。
わからないことをわからないと認め、聞けるマインドセットは大きな力になります。そして背伸びせずにシンプルな英語をインプットしていくプロセスも英語の感覚をインストールしていくのに絶大な効果をもたらしてくれます。
聞く力は英語の総合力、しっかりやれば確実に力のつくものです。努力の迷子になってしまわないように、正しい方向に確かに力を加え続けることが最も大事なことなのです。わからないことをわからないと言えたとき、それが今まさに成長している時なのです。
(東洋経済ONLINE より)
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