久しぶりの大雨が

 

関東を直撃した次の日





 

私は、とあるお店で

 

人を待っていた。

 

 



 

この日の為に予約をした

 

雰囲気の良い洒落た高級なお店。


 

しかも個室。

 





 



 

そう



 

今日は私にとって

 

勝負の日だった。






 

 

 

『お待たせ』


 

個室の戸が開く。



 



 

 

彼女が、私を勝負師にさせた犯人。



 

名前はミユキさん。

 

 

歳は私より5つ上だ。


 



*****************

 

 

ミユキさんとの出会いは

 

今から約一ヶ月前




 

取り引き先を交えた打ち上げの席で

 

一緒になったのが、出会いのキッカケだった。

 

 

 

 

ミユキさんを一目見た瞬間


 

 

 

 

 

吉瀬美智子!?

 


と見間違えてしまう程の

 

美貌の持ち主。

 


イチゴな日々

(※写真はイメージです)


 

 

非の打ちどころが無い美人とは

 

彼女の事を言うのだろう

 


 

そんな言葉を体現している様な人だった。


 


 

 

 

(チヤホヤされる様な人に性格の良い人は少ない)





 

月並な言葉だが


キレイな人を見ると

 

そんな事を意識してしまうのは

 

今までの私の経験から来る事だ。


 

 


 

しかし、ミユキさんは違った。



 

 

 

初対面の私の話を



 

どうしてそんなに聞けるの?

 

と、言うぐらい親身になって聞いてくれた。



 


 

仕事上では先輩にあたるミユキさんは



 

私の事を否定する事無く


 

自信を持たせてくれる様な

 

言葉を掛けてくれた。



『君が思ってるより、君の事を見てる人間は居るんだぞ!!』

 

 

『そんな・・・居る訳ないじゃないですか、そんな人・・・』

 

 

 

『少なくとも、私は見てるつもりだけどな~』



 


 

 

 

 

 

そりゃ惚れるよね?


 

 

こうして、ミユキさんに対して

 

一瞬で恋に堕ちた自分が

 

そこには居た。





 

打ち上げの終わりの時間が近付いてきた時に

 

私は、真っ先にミユキさんの元へ行き

 

連絡先を交換した。


 

 

『また・・色々と相談に乗って貰って良いですか!?』

 

 

『たまには、私の相談にも乗りなさいよ!』




 

それからは、ミユキさんと

 

メールを交わす毎日が始まった。

 






 



 

そして今日


 

ようやく念願が叶って

 

二人きりの初デートを迎えた訳だ。






 

*****************



 

『ごめん、待った?』

 

 

『全然、さっき来たところですから』

 



 

この日を楽しみにし過ぎていて

 

30分も前に到着していた


 

なんて言えない。



 

 



 

テーブルを挟んで目の前に座るミユキさん。


 

 



 

相変わらず素敵だ。



 

 



 

完全個室



 

この狭い空間に

 

ミユキさんと二人きりで居れる事が何より嬉しかった。


 


 

 

(今日は・・・ミユキさんに気持ちを伝えよう)

 


 

私の頭の中には

 

それしか無かった。

 




 

そして



 

もし、ミユキさんが気持ちを受け止めてくれたら・・・









 

彼女の事を帰すつもりは無かった。


 





 





 

しかし


 

そんな勇み足は

 

ミユキさんの一言で一蹴される事になる。




 

『今日、主人の帰りが早いから

 

21時迄には帰らないと』









 

 

 

え?

 




 


 

今、なんと?

 


 


 

確か『主人』って聞こえなかったか??





 

『え?主人って・・・・

 

ミユキさんって結婚されてたんですか?』




 

『あれ?言ってなかった?子供も居るよ。6歳』

 







 





 

戦意喪失の瞬間だった











 

『・・あぁ、そうなんですね・・・。

 

じゃあ21時前には出ないとですね』

 

 

 

 

『そうなんだよね。

 

でもまだ時間はあるし!今日は飲もうね!』

 

 

 

 

『そ、そうですね。

 

 

で、でも今日大丈夫なんですか?

 

男性と二人きりで飲むなんて?』




 

『君との事は隠す様な仲じゃないし。

 

ちゃんと主人に言ってあるから問題無いよ!』

 

 

 

 

 

 

 

敗北確定の瞬間だった
 

 








 

結婚をしている


 

今日の事を主人に伝えている





 

そして



 

 

君との事は隠す様な仲じゃない










 

とどめの一言だよ。




 

所詮、叶わぬ恋だったか。







 

ふと時計を見る。




 

約束の21時まで時間はたっぷりある。




 

気持ちを切り替えて今日と言う日を楽しもう。

 

(切り替えれる自信は無いけど・・・)






 

そうと決まったらいつも以上の

 

ハイペースでアルコールが体に入っていった。


 

半ば、やけくそになっていたのかも知れない。

 


 

ミユキさんも久しぶりのお酒の席だったのか

 

このハイペースに負けじとついてくる。



 

 

『ちょっと!そんなに沢山飲めないよ』


 

 

『これぐらいで弱音吐いちゃうんですか?

 

ミユキさんって大した事ないんですね~』


 

 

『あ、言ったな。

 

絶対に負けないんだから』

 




 

戦意喪失してなかったら

 

こんな展開にはなって無かっただろう。




 

しかし、これはこれで楽しかった。





 

当初はご主人の話、家族の話をしていたミユキさんだったが

 

お酒が回ってきたのだろう。


 

段々と饒舌になり、色んな事を喋り始めた。

 

(お酒が回ったのは、私も一緒だったが)


 

 

 

『どうして彼女を作らないの?』



 

『ミユキさんみたいに

 

魅力的な人が側に居ないからですよ』



 

 

 

『・・・私ってそんなに魅力的?』



 

 

『ええ、魅力的ですとも!

 

今すぐにでも連れ去りたいぐらいにね!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・あ!?)







 

勢いに乗って

 

言った後に気が付いた。






 

何、さらりと告白してる





 

そんな事を言っても

 

ミユキさんを困らせるだけだろう!







 

案の定

 

流れる気まずい空気。




 

その空気に耐えられず

 

堪らずトイレに行こうと席を立つ私。


 

 

 

『・・・どこ行くの?』




 

『ちょっと、お手洗いに・・』

 

 


 

 

 

『ちゃんと・・・帰って来てね』



 

 

 

『・・・?

 

そりゃ帰ってきますけど・・・?』





 

『そうじゃなくて

 

 

 

 

・・・私の隣に』





 

 

 

 

『・・・エ?』






 

ミユキさんの発言の意図は

 

分からなかった、が


 

トイレから帰ってきた私は

 

 

ミユキさんの隣に居た。






 

狭くて薄暗い完全個室


 

大人が二人並んで座るには

 

あまりにも狭過ぎる空間。





 

一ヶ月前

 

初めてミユキさんと喋った時より

 

格段と近い距離にミユキさんが座っている。



 

いや、距離なんて無かった。



 

二人の体は完全に密着していた。



 


 

私が戻ってきてから

 

ミユキさんは何事も無かったかの様に喋っている。


 

酔っているせいか、若干顔が赤い。






 

話しているミユキさんの顔を眺めてると

 

ふと目が合った。


 

喋っているミユキさんの口が止まる。


 





 

気が付けば・・・


 

 

 

ミユキさんの唇を奪っている自分が居た。








 

イケない事をしているのは分かっている。



 

こんな事をしたら

 

二度とミユキさんと会えないかも知れない




 

それも分かってる。








 

しかし、ミユキさんは嫌がらなかった。





 

ミユキさんの腕が

 

僕の首の後ろに回る。


 

僕もミユキさんの腰に手を回す。






 

そして・・・



 

このまま時間が止まる












 

訳が無かった




 

 

 

『すいません!

 

ラストオーダーの時間です』



 

勢い良く個室の戸が開く。






 

直ぐ様、離れる二人。





 

時計を見ると21時をとっくに超えていた。



 

 

『じ、時間、大丈夫?』



 

『もう・・・行かなきゃ。

 

終電が無くなっちゃう』

 

 




 

そうして私達はお店を出た。






 

お店が駅から離れた距離にある為

 

急いでタクシーを止める。



 

 

 

出来る事なら離したくない


 

出来る事ならこのまま彼女を連れ去りたい

 




 

そんな気持ちを押し殺すかのように

 

タクシーに乗るミユキさんに声を掛ける。


 


 

 

『帰らないと・・・ダメだよね』



 

 

『うん・・・帰らないと・・・』



 

 

『・・・うん、分かった。

 

遅くなってごめんね。・・・気を付けてね』





 

そう言い残すと

 

タクシーはミユキさんを乗せて駅へと向かった。


 



 

ミユキさんの事を駅まで送りたかったけど

 

彼女とは住む方向が全くの逆方向だ。


 

 

ミユキさんを送ると自分が終電に間に合わない。


 

 

自分の家まではとてもじゃないけど

 

タクシーで帰れる距離ではない。



 


 

家路に着く為にミユキさんが向かった駅とは

 

反対側の駅に向かうタクシーに乗り込む。


 






 

はずだった。


 

 

 

 

『運転手さん!

 

やっぱりUターンして!』






 

タクシーをUターンさせて向かった先




 

それは

 

ミユキさんが向かった駅だった。








 

駅に着くと急いで

 

改札まで駆け上がった。




 

電光掲示板を確認すると

 

今から3分後に終電が発車をする。


 

 

 

(時間的にもミユキさんは

 

未だホームに居るはずだ)

 

 

 


 

急いで改札に向かう。



 

しかし今日はICカードを持っていない


 

それに切符を買ってる時間なんてない!


 

 

急いでポケットをまさぐると

 

タクシーのお釣りの1,000円札が出てきた。




 

改札の駅員さんに


 

『すぐ戻ります!』



 

そう伝えて

 

窓口に1,000円札を置いて改札を抜ける。




 

『お客さん困ります!』

 


 

呼び止められて1,000円札を返された。

 

 




 


 

急いでホームに向かうと

 

ミユキさんの姿がそこには会った。



 

 

『え!?・・・何で居るの?

 

・・・どうしたの?』


 

ひどく驚いた様子だった。



 

そりゃ無理もない。




 

自分でも驚いてるぐらいの

 

行動なんだから。



 

 

 

 

『ミユキさん・・・俺・・・』





 

~間もなく○番線○行きが発車します~


 

 

 

 

『あ、終電行っちゃうから。

 

ごめんね電話するから』

 


 

 

 

『え?・・・・あ、ちょ』











 

最終電車の扉が閉まった。












 

『あ・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 

俺・・・

 

 

 

 

 

何で電車に乗ってるの?












 

同じ事を

 

ミユキさんに言われた。


 

 





 

人気の少ない車内


 

取りあえず並んで座る二人。




 

 

『終電ないでしょ?

 

どうするの?』




 

『・・・・』


 

 

 

 

『気持ちは分からなくないけど・・・

 

私、今日は帰らないと・・・』






 

それは重々分かっているつもりだった・・・

 

 


 

どうしてこんな暴挙に出たのか

 

自分でも分からなかった。



 

 

 

車内に

 

次の停車駅のアナウンスが鳴り響く。





 

ミユキさんの家は

 

未だ未だ先の駅だ。





 

 

『ねぇ聞いてる?

 

帰り大丈夫なの?』


 

 

 

そう心配をしてくれている

 

ミユキさんを余所に・・・




 

私は更なる暴挙に出る事になる。



 

 


 

電車が駅に止まった瞬間


 

座っているミユキさんを


 

 

 

 

抱える様にして持ち上げ


 

電車を降りる!

 

 

 


 


 


 

つもりだった







 

ミユキさんを抱えたは良いが動かない。





 

 

 

何故だ?

 

 

何故動かない?








 

振り返りミユキさんの方を見ると・・・



 

 

ミユキさんの右腕が




 


 

 



イチゴな日々


 

 

ガッチリと


 

ロックをされていた

 









 

集まる周りの視線。

 





 

呆れているミユキさん。







 

止まる電車。









 

そのままミユキさんを椅子に降ろし





 

静かに電車を降りる私。











 

その後



 

二度とミユキさんと

 

連絡が繋がる事は無かった。














 

日曜日の夜中に

 

珍しく電話を掛けてきた友人。





 

何かと思えば

 

楽しみにしていたデートに失敗をしたとの事。









 

それが↑これ

 

(※男性側)








 

今まで長々とお付き合い頂いた


 

 

連れ去り失敗事件



 

これは友人が体験した

 

本当にあったお話です。







 

相談してきた友人には申し訳無いけど



 

 

腹がよじれる程

 

笑ったよね

 







 

真剣に報告を受ければ受ける程

 

 

腹筋が崩壊

 

するかと思いました。













 

これが有りだったら

 

最終電車で右腕がロックする女性が

 

急増しちゃうよね。








 

状況はさて置き・・・



 

これぐらい強引な方が

 

時には良いのかも知れませんね。


 



知らんけどなイチゴ




 

(※過去日記再掲載)