『絶対の自信』 ・・・ 自信を失ったときに④(第101回)令和2年10月度掲載
この世の中、この人生、人はすべからく絶対の確信を持って力強く歩むべしといわれる。
それはまことにそうだけれども、よく考えてみれば、
この人の世に、絶対の確信などあり得るはずがない。
持ち得るはずがない。
刻々に変わりゆくこの世の中、明日をも知れぬ人の世で、神か仏でないかぎり、
絶対にまちがいのない道など、ほんとうはないのである。
だからこそ、おたがいに過ち少なく歩むために、あれこれと思い悩み、精いっぱいに考える。
その果てに、どうにもほかに道がなさそうで、だからこの道がいちばんよさそうで、
そう考えて、それでもまだ心もとないけれども、心もとないままではしかたがないから、
そこに勇気をふるって歩みつづけるのである。
みずからを励まし歩みつづけるのである。
革新ありげに見えても、ほんとうは手さぐりの人生で、まことにつつましやかなものである。
たよりないといえばたよりないかもしれないが、持てもしない絶対の確信に酔うよりも、
この心がまえで謙虚に歩むほうが、われも他人も傷つくことが少なくて、結局は最良の道になるのではなかろうか。
松下幸之助