先日書店で、
一冊の文庫本を手にしました。

「心の傷を癒すということ」
安克昌・著 角川ソフィア文庫

著者の安さんは、神戸大学附属病院の精神科医であった16年前、
阪神・淡路大震災で自らも被災しながら
混乱の被災地で全国から集まった精神科ボランティアをコーディネートし
避難所などでカウンセリングや診療活動を行った方です。

現場でしか感じ取れない被災者・救援者両方の心の傷やストレス、
当事者としての震災報道への違和感、復興期における長期的な心のケアの必要性など
専門家として、また一人の人間として綴った貴重な記録となっています。

本の随所に今回の東日本大震災と重なる部分が多々あり、
まるで今私たちが体験していることをそのまま代弁しているかのような
不思議な感覚を覚えました。

私はこの本から何を教えてほしくて手に取ったのか・・・
その答えは最後の数ページにありました。

”制度や専門家だけが人の心の傷を癒すのではない”
という安さんのメッセージです。

「・・・苦しみを癒すことよりも、それを理解することよりも前に、
苦しみがそこにある、ということに、われわれは気づかなくてはならない。
だが、この問いには声がない。それは発する場をもたない。
それは隣人としてその人の傍にたたずんだとき、はじめて感じられるものなのだ。」

被災した子どもたち、家族を亡くした人たちに
どうやって接していけばいいのかずっと悩んでいましたが、
安さんの言葉はやさしく私に勇気を与えてくれました。


安さんは、阪神・淡路大震災から5年後の2000年に、
第3子の娘さんが生まれた数時間後に
39歳の若さで亡くなりました。

安さんが最後に書いた「あとがき」の日付がちょうど3月11日になっていたのにも
不思議な縁を感じます。

一人の精神科医が命を削るように綴ったこの本を
何度も何度も読み返しながら、
自分にできることは何かよく考えていきたいと思います。